#22 分かり始める世界の真実

「おはようございます、結人さん。」


「お寝坊さんね、結人。待ちくたびれたわ。」


目を開けると、そこは昨日と同じ天井であった。つまりここはサンティアゴということだ。

左手にある大きな窓からは明るい日差しが差し込んでいる。

結人は、思い人の声に応える。


「おはよ、咲夜。」


隣を見ると、2人の少女が座っていた。

1人はもちろん想い人である咲夜、そしてもう1人は・・・


「もしかしてリエス?」


「えぇ、そうよ。貴方の伴侶のリエスよ。」


咲夜の隣に座った少女は、ニコリと笑顔を見せながら自己紹介をした。こっそり彼女の魔力を覗いてみたところ、もの凄い量の魔力を感じる。どうやら間違いないようだ。

そしてうっすらだが、自分と同じような雰囲気がある。

だが、リエスの最後の余計な一言が引っかかる。


「待って下さい、結人さんの伴侶は私です。」


「いいえ、咲夜。龍は契約を結ぶと結んだ相手とパートナー、つまり伴侶になるのよ。」


「認めません!」


「貴方が認めなくてももうなっているとしか言いようがないわ。諦めなさい。」


「お断りします。結人さんは私だけの結人さんです。」


どうやら仲があまりよろしくないみたいで争っている。咲夜が怒っているところを久しぶりに見た気がする。

咲夜は、僕の目の前では絶対に怒らない。寝坊した僕を少し不満げな顔をしながら起こすことはあっても、怒鳴ったり暴力を振るったりは絶対にしない。

はずなんだけど・・・・・・


「ふたりともストップ!こんなところで攻撃魔法はダメだって!」


慌てて止めに入る。咲夜はちゃんと加減を考えてくれるはず、でもリエスはわからない。平気でこの基地ごと吹き飛ばす勢いだった。



「冗談よ、冗談。」

「私も本気ではありませんよ、結人さん。これはその・・・・・・挨拶代わりです。」


「それじゃあ余計にタチが悪いじゃん!」


「アハハ〜」


咲夜は、乾いた笑みを浮かべる。実際、満更でもなかったっぽい。このとても怖い笑顔が何よりの証拠だ。

対するリエスは、目を閉じてそっぽを向いている。


「そんな事より結人さん!急に気を失っちゃって・・・・・・心配だったんですからね?」


ベッドから起き上がると、椅子から立ち上がった咲夜に抱きつかれた。

結人も当たり前のようにそっと抱き返した。

そこで、ふと疑問に思った。


「あれ?そういえばなんで気を失ったんだっけ・・・」


「覚えていないんですか?そこの泥棒猫に身体を触られて、それで・・・・・・」


「ちょっと!平気で嘘をつかないでくれる?確かに私のせいかも知れないけど、第四段階への進化には必要な事だったのよ!」


「第四段階?ってうわっ!!!」


第四段階という単語を呟いた直後、頭の中に一つの魔法起動式が思い浮かんだ。いや、リエスが教えてくれたと表現する方が適当だろう。

それにしてもこの魔法式は・・・・・・


「この魔法式、もしかして未完成?」


根拠はない、直感がこの魔法式には欠陥があると叫んでいる。

リエスは、結人の言葉に一瞬驚いた後、本当の事を伝えた。


「嘘どうして分かったのよ!まぁいいわ、教えてあげる、私の魔法は・・・・・・


『×××』


よ。」


「「っ!!!」」


思わず、言葉を失う。試した事はあった。

出来るかも知れないとは思ったが、いつも失敗していた魔法、その魔法式であった。

空間を完全に支配しているからこそできる神の如き芸当、この魔法ならば魔法式が欠けているのにも納得できる。


なぜならこの魔法は、状況に応じて常に変化していくからだ。


「凄すぎます・・・」

「期待はしていたけどこれは予想していなかったよ。」


「ありがと、私もまさかこの魔法を人間が使う日が来るとは思わなかったわ。」


リエスは、真剣な表情をしながらこちらを見つめる。


「あ、言い忘れていたけど、貴方の身体も少しいじらせてもらったわ。」


「いじる?」


「えぇ、実際に貴方の身体の隅々まで確認してみてわかったけど人間の身体ってだいぶ無駄が多かったり負荷がかかる場所があるのよね。だからそこを補っておいたわ。」


「は、はぁ・・・」


「反応が悪いわね・・・。まぁ簡単に言うと貴方の寿命を延ばしておいたわ。」


「はあ?!そんな事できるの?」

「そんな事ができるのですか?!」


「あら?今度は随分と反応がいいじゃない、貴方もやってほしい?」


「是非お願いします!」


「わかったわ。」


リエスがパチンと指を鳴らすと、彼女の白い魔力が咲夜を包み込んだ。続いて咲夜の赤い魔力と混ざり合った。

咲夜は、自分の掌を見つめる。


「凄いです、身体が作り変わっていくのを感じます。」


「そうね、2人ともだいたいあと500年ぐらいは生きられるようにしたわ。」


「500年!!!」

「そんなにのびるんですか?!」


「普通の人だとこうはならないわ。でも結人には私が、咲夜にはフェルがついているから、体内の魔力の管理がとてもスムーズなのよ。」


フェルとは咲夜が契約している炎の大精霊。

すごく強いが、その分反動が大きく戦闘では滅多に使わない。


「なるほど・・・・・・」

「そうなんですか・・・」


「あぁそれと、ついでに貴方の魔力回路もいじっておいたわ。流石に結人までとはいかないけど前よりは魔力回路と魔力量が格段にレベルアップしているはずよ。今まではフェルを使っていなかったみたいだけど今日からはバンバン使えるわ。はいこれでおしまいっと。」


咲夜の周りにあった白い魔力がリエスの元へと戻っていく。

そして、リエスの言った通り、咲夜の魔力量は格段に上がっていた。


2人は、溢れんばかりの自分の力に驚きつつも、恐怖を感じていた。




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どうでもいい話


メインとサブ両方とも今週は昏睡&起床シーン

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