#21 古き英雄④

「お久しぶりでございます、龍皇女ー聖星龍リアス様」


精霊の頂点である四柱の一点、風の大精霊ーセリアは結人に、いや結人の身に宿る龍に対して敬意を表した。

全く予想していなかった行動に結人もキリアもあっけをとられる。

結人にとっても大精霊というのは雲の上の存在だった。人類のほぼすべてに魔力回路を授け、人類の危機を救った存在。

世界でも精霊を神とする宗教がいくつも誕生していた。噓か本当か、キリアが大精霊と出会う話もいくつも作られている。俗世間に疎い結人でもそれらの伝説やエピソードは知っていた。


故にわからなかった彼女がこのような態度をとるのか。

そして次の瞬間、さらなる奇行に走る。何故か、大精霊が契約者であるキリアの意識を奪ったのだ。

ガクンと力がキリアが倒れる。


「えっと・・・・・・大精霊様?」


「様は不要です。ぜひセリアとお呼びください。」


「じゃあセリアさん・・・聖星龍ってどういうことですか?」


「その目、そのオーラ、そして何よりその剣、ふふふっ私の眼はごまかせませんよ。」


誤魔化したつもりは全くなかったが、何だか心の奥底を覗かれたような気がした。

結人の認識では精霊と龍は違う存在。普通の人間の魔力回路と自分や美月のような藁科家の人間の魔力回路が全然違うことを理解していた。

てっきり遠い存在だと思っていた。


「確かにリエスは宿しているけど何で・・・」


「精霊とは本来、龍に仕える存在、私が主人である龍のそれも最強クラスに位置するリエス様を敬うのは当然のことなのです。」


何故か胸を張る大精霊様、その姿は何故か子供っぽい。


「は、はぁ・・・」


「それでは藁科結人様、手を貸してください。」


「何で僕の名前知っているの?まぁいいけど・・・・・・」


「そこは精霊ですので・・・」



結人は手を差し出す。

彼女もそれに応じて手を合わせた。

一瞬、時が止まった感じがした。

魔力回路を彼女の魔力が駆け巡り、全体に広がって行くのを感じる。


「うっ!」


身体がビクンと震える。何本かの鎖がとれて行くのを感じた。

何かが体内で蠢いているような、凄まじいエネルギーの塊。

セリアの魔力が心の核心に触れた直後、セリアは勢いよく手を離した。


「なるほど・・・大体わかりました。あなた様はまだ覚醒していないんですね。」


「覚醒していない?まぁ確かに第4段階を突破していませんが・・・・・・」


「いえ、結人様に問題があるわけではありません。どちらかというと問題はリエス様の方にございます。その溢れ出んばかりの膨大な魔力を結人様という器に収まる事ができていないのです。」


今の説明では、僕の力不足という事ではないかと考えてしまう。だが、どうやらそうではないらしい。


「貴方様のおっしゃるところの第4段階とは、精霊や龍との絆でございます。貴方様とリエス様の思いが1つになる事によって到達する事ができます。しかし、リエス様はこれまで一度も契約者を得た事がありません。そのため、貴方様に適応できていなかったようです。」


「えっと、それでどうすれば良いのでしょうか・・・・・・」


「ご安心をそのために私たちが現れたのです、『私たち』にお任せ下さい。」



風の大精霊は、1歩下がると魔法を唱えた。

結人を中心に3つの魔法陣が現れる。

そして他の3体を召喚した。


炎の大精霊ーフェル

水の大精霊ートゥラス

光の大精霊ーラニ


結人はこの3体からば以前会ったことがあった。

それぞれ、咲夜、レネ、ゼラストの契約精霊でもある。


「では、始めます。」


そう言うと、それぞれは手のひらをこちら側に向けた。途端に先程と同じような感覚に襲われる。

時が止まったような感覚、世界が自分中心に周り、何もかもが自分の思い通りに動く。

結人の周りを超高密度の白い魔力の渦が包み込む。今までの比にならないほどの大量の。


これが、第4段階、凄すぎる。


そんな事を考えた直後、急激な眠気に襲われた。


あれ?

ここ戦場だぞ?今意識を離したら・・・・・・


『大丈夫ですよ、結人さん。』


うっすらと目を開けると、僕の愛する人がいた。

どうしてここにという疑問の前に、安心の気持ちでいっぱいになる。

なんだか意識が遠のいて・・・・・・・・・



✳︎



「あれ?ここは・・・」


「やっと気づいたか、久しぶりね結人」



慌てて目を覚ますと、目と鼻の先に1人の少女がいた。どうやら膝枕をされているようだった。

どこか不思議な空間、周りは真っ白で何もない。

だが、目の前にいるこの少女はどこかで聞いたことのある声だった。

容姿は咲夜に似ていて、白い髪の毛に第3段階の結人と同じ黄色い龍の瞳、この時点で結人は彼女がいったい誰なのかわかった。


「もしかしてリエス?」


「えぇ、そうよ。私が貴方のパートナーのリエスよ。初めまして、結人」


「初めまして・・・・・・あ、この前はあの時空の狭間から助けてくれてありがとう」


「気にしないで、あのぐらい私にかかればちょちょいのちょいよ。それにしても驚いたわ、まさか私を顕現させる事ができる人間がいたなんて・・・」


「まぁ僕はだいぶ特殊らしいから・・・・・・」


「そんな事は言われなくてもわかっているわよ。」


「それで、ここはどこなの?」


「貴方の心の中よ。セリカ達のおかげでパスは繋がったんだけど、まだ慣れなくてね。もう少しで終わりそうだからもう少し待ってて。」


「うん、わかった。」


そう応えると、結人は再び眠りについた。

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