#17 見落としていた可能性③
キリア=メスタニア
『最初の英雄』、彼女の功績は計り知れない。まだ小さかった頃のジルトレアで多大な活躍をし、世界を一つにまとめた人物の1人。
専門家は言った、『黒白とキリア、どちらかが欠けていたら世界は滅んでいただろう』と、以前の彼女の強さはそれほど強いとは言えなかった。
当時こそ世界最強ではあったが、今の世界ではA級魔法師になれるかなれないかと言われている。
まぁ実際、いっさい師を持たずに独学で魔法を構築し、魔法師としての地位を確率していった彼女を英雄視しない人間などいなかった。
そして、彼女は最後まで『最初の英雄』だった。
死の瞬間こそ確認してはいないが、当時の第二次奪還作戦の部隊およそ30万が撤退するための時間を1人で稼ぎ、散っていった。
死因は、魔力切れだと思われている。
当時、誰もがその死を悔やんだ。
ジルトレアに責任を取るように叫ぶ声は次第に大きくなり、上層部が何人も前線を退いた。
そして・・・
「我が友ーキリア=メスタニアは、笑顔で散っていった。もう、このような惨劇を繰り返してはならない。今こそ、世界の意志を統一し、人類が一丸となって動くべきだ。」
そう、就任演説で宣言したセラン=レオルドがその後世界を引っ張っていく事になった。
✳︎
「久しぶりの地球だわ。魔力反応的に、ここは南アメリカ大陸かしら。」
何度見ても間違いない。
彼女は・・・彼女は・・・・・・『最初の英雄』だ。
「そんなはずはない、キリア様は間違いなく死んだはずだ。あの第二次奪還作戦とともに散ったはずだ!」
死んだはずの英雄が目の前で浮かんでいる。
長く伸ばした金色の髪、青い目、見間違いのない膨大な魔力量、衣服こそ違うが容姿は完全に一致している。
あの悲劇から20年ほどが経過したのに・・・・・・
「あら〜〜もしかして、今代の
そう、不適な笑みをこぼしながらこちらに近づいてくる。
体内の魔力回路に力を入れて目の前の『敵』に集中しようとするが、集中できない。
「何者だ!もしや、かの英雄を名乗るわけじゃないよな。」
「ふふふ、日本語を聞いたのは久しぶりだわ。私が日本語を使ったからかしら、まぁ英語よりは簡単ですものね。えぇそうよ、私こそがキリア=メスタニア、初代序列1位よ。」
「そんなバカな・・・・・・あなた様は確かに死んだはずだ。」
「でも・・・・・・見つかっていないでしょ?死体」
「っ!!」
鋭い視線を向けるキリアに、グレンは息を飲み込む。もう疑いようがない、彼女は本物だ。
ならば今まで何をしていたのか、時間魔法で未来なら逃げた?いや違う、だとしたら衣服が当時のままなはずだ。第一、生物の時空的な移動は不可能だったはず。
同様な理由で、コールドスリープの類も違う。
だとしたら残された可能性は・・・・・・
そう、グレンが思考していると、再び前方、キリアの背後にとてつもない魔力が集まるのを感じる。
攻撃魔法か、と身構えるが、その様子はない。
どれもキリア本人の魔力とは別のモノだった。
「あ~安心していいわよ、これは攻撃魔法じゃない。移動系魔法だわ。」
「何を運んでいるんだ?」
「今はまだ秘密かな、それより・・・・・・今の序列1位がどれほどの腕前なのか・・・試させてくれないかしら。」
先ほどまでの穏やかな雰囲気から一転、殺意までもがこちらにむけられる。
「一つ、勘違いをしているぞ。」
「何かしら。」
「俺は序列1位じゃない・・・だが、今の俺の実力がどれほどのものか知りたいから受けてやるぜ。」
「ふふふ、いいわよ・・・・・・そうね、あなたが勝ったら私が何者なのかを教えてあげる。かかって来なさい、坊や」
「いわれなくても!!!」
グレンは、両手に魔力を込めると、様子見の炎魔法を放った。見た目は派手だが威力はそれほどない一撃。それほどないといっても上級UCぐらいであれば余裕で葬ることができる。
案の定キリアは、簡単な魔力障壁を展開してこれを避けた。
もちろんそれは囮、本命は別にある。
グレンは、対人戦に弱かった。重力魔法は、その性質上行使がら発動までのタイムラグが長く、人間のように的が小さいと当てにくい。
重力波として使う方法もあるが相手の動きが鈍る程度で有効打にはならない。
その上、魔力の消費量も普通の魔法より多い。
当たりさえすれば、柔らかく無防備な内臓をぐちゃぐちゃにする事ができるが、当たらないので意味がない。
『これまでは』
今のグレンの強さはこれまでとは比べ物にならない。
単純な魔力量だけでも以前の2倍以上、その上極悪な魔力回復魔法まである。
常識を超えたイレギュラーな魔法によってグレンの強さは桁違いに上がっていた。
「<重力波>!!!」
グレンは、反重力の波動を連発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます