#14 上陸③
その後も順調に作業は続いた。
当初の予定通り、2体の破滅級UCを討伐し、サンティアゴとブラジリアに拠点を作ることに成功した。少し危険ではあったが、夜の間に海からの補給が行われ、この二つの地点に拠点が建設された。
他にも、簡易的な港を作ったりと、色々な事を進めるうちに日が沈んでしまった。
ツクヨミは未だに地球周回軌道にいるので、結人と咲夜は、サンティアゴで一泊することになった。
もちろん、咲夜と同室である。
「会えて嬉しいです・・・結人さん」
「うん、僕も嬉しいよ、咲夜。」
ベットの上で二人並んでいた。一番近い距離に咲夜を感じる。
というか、耳元で咲夜の声が聞こえた。よほど戦場で恐怖を感じたのか、先程から抱きついて離れない。
「今日は危ないところを助けていただいてありがとうございました。」
そう、お礼を言う咲夜は、どこか機嫌が悪い。まぁ心当たりがない事もないが・・・
「間に合って本当に良かったよ。遅くなってごめんね。」
「いえ、結人さんが謝る必要はどこにもありません。助けてくれてありがとうございました。」
「うん・・・」
左手を使い咲夜を抱きしめ、右手で彼女の頭を優しく撫でる。
今は僕の前だがらか、感情をセーブしている。だが、このように優しく撫でてあげれば、その壁も決壊する。
あとは一言、優しい言葉をかけてあげるだけ。
「吐き出していいよ、咲夜」
「ほんどぉーに、心配だったんですよ?あんなに危険な作戦をたった1人で・・・聞きましたよ、今回の破滅級UCは私が戦ったやつよりも数倍強いのと戦ったそうじゃないですか。結人さんはいつもそうなんです。肝心な時に私を遠くにおいて。もっと私を頼って欲しかったです。」
珍しく、咲夜の弱々しい声が胸に響く。
確かに今日戦った破滅級UCの魔力量は、過去最高の140億。
咲夜達が戦った破滅級UCのおよそ2倍である事を考えれば、どれだけ結人が無茶をしたのかがわかる。そもそも結人の攻撃を1時間以上耐えきる事自体が異常なのだ。
咲夜とて分かっていた、たとえ自分がいても大して戦力にならないと、それどころか足を引っ張ってしまうかもしれない。
それだけは嫌だった。
どんな相手でも一緒にいたいと思うと同時に足でまといにはなりたくないのだ。
それでも・・・
「結人さんの隣に、常に一緒にいたいんです。」
弱々しく、だけどどこか力強く。自分の思いを正面からぶつける。
私は今怒っているのだと、そして構って欲しいと。
ただの恋人じゃない、私と結人さんは婚約者であり相棒なのだ。
「1人で勝手に決めちゃってごめんね。」
「そうです、もっと謝って下さい。」
「でもさ、咲夜が僕を心配するのと同じぐらい僕も咲夜が心配なんだ。僕は強いけど万能じゃない。生命の蘇生は出来ないし、破滅級UCの本気の一撃を耐えきれるか分からない。」
結人は、優しい声で語りかける。
咲夜の弱った心を優しく包むように、そして傷を癒すように。
顔がニヤけるのを我慢して、咲夜を見つめる。
「だからさ、僕は咲夜を、咲夜は僕を助けよう。そうやってさ、補い合おうよ。それが・・・・・・夫婦ってもんじゃない?」
「ふっ夫婦?!」
慌てて結人の肩から顔を離した咲夜は、改めて結人を見つめ返す。
2人は写し鏡のように赤くなる。
「もしかしてプロポーズ・・・」
「あ、いやそういう意味じゃ・・・」
「はい、末永くよろしくお願いします。」
間髪をいれずに咲夜は返事をする。
もう彼女の頭の中は結婚一色に染まっていた。
引き返すことなどできるはず文なく・・・
「結人さんからそんな事を言ってくれるなんて・・・」
「え、えっと?」
「私、今とても幸せです。ついに、一緒になれるのですね。」
「おーい、聞いていらっしゃいますか?咲夜さん。」
一人で舞い上がる咲夜の肩を結人がつかむ。
「はい、結婚式の話ですよね。私、家は神社ですが、実は洋風の結婚式に憧れていて・・・でも結人さんが和風がいいなら和風にしますよ。」
会話が通じない事を悟った結人は説得を諦めた。
「うん、僕も洋風でいいよ。咲夜とならなんでも嬉しいし。」
「はい!あとはですねー」
顔を赤くしながら、この後の事を話あった。最大の山場はもうすぎた。あとは殲滅するだけ。
会話は弾み、お風呂も一緒に入った。
そして・・・
「結人さん・・・不束者ですが、どうぞよろしくお願いします。初夜といきましょうか。」
「どうしてこーなったー!」
その後、明日の任務を忘れて、初夜をたっぷりと楽しんだ。
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戦場で何やってんだよという話ですが、久しぶりのイチャイチャ回でした。
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