#12 上陸

「敵UC!沈黙を確認!やりました!」

「沈黙を同じく確認しました!」


レーダーを眺める担当と、人工衛星からの映像を管理する人が2人揃って大声を上げる。

それほど広くはなく、小さな声でも十分伝わるが、叫ばずには居られなかった。


「「「おぉぉおーーーー!!!」」」


「慌てるな、まだ始まったばかりだ。」


セランの低い声が室内に響く。だがその顔は、どこか喜びに満ち溢れていた


「「「す、すみません!」」」


今すぐクラッカーやらワインやらを持ち出して宴を行いたいところだが、まだ始まったばかりである。


「全部隊に通達、これより上陸作戦を開始する。繰り返す、これより上陸作戦を開始する。総員、突撃開始!」


「「「了解!!!」」」


セランの命令と共に、メインハンドルを正面に倒す。

南アメリカ大陸の海岸から100kmほどの所に停止していた、主力艦隊がいっせいに動きだす。ここからは時間との戦いだ、統率者である破滅級UCが倒れたことによってUC達に混乱が走っただろう。

それを踏まえて、できるだけ早く、1匹残らず殲滅する。


「攻撃ヘリを何機か向かわせろ!疲弊したS級魔法師達を回収するのだ!!!」


「はっ!」


これでよし、っとセランは一息いれる。

長かった・・・・・・

とんでもなく長い年月を必要とした。

まだ終わりではないが、最大の山場は無事に通過した。

あとは、何も起こらない事を祈るばかりだ。


セランが覚悟を決めて、空を見上げた時、数百を超える爆撃機が奪還を目指して飛んでいった。





「あぁ〜疲れたー」


あまりの疲れに身体が動かない。80分間にわたる死闘はまだしも、固有魔法3連発は流石にキツすぎた。

通常、固有魔法は疲れを知らない魔法と呼ばれるが、結人の第2段階のような例外もある。

そして、極めつけは第3段階の使用だ。

<龍眼>を使うこと自体はそれほど難しくない。だが、龍眼から得た情報を分析して、行動するのは脳の負担が大きすぎる。

龍たちのアシストがあるとはいえ、長時間戦うのは無理だ。


完全にガス欠となった結人は、咲夜に膝枕してもらう事に。

ちょうど戦場は花達に囲まれており、ひなたぼっこするにはもつてこいの場所だ。

咲夜の方も満更ではないらしく、先程からとびっきりの笑顔で結人の頭を撫でてた。

戦場のど真ん中とは思えないぐらい心地よい風が吹いており、気が休まる。

幸い、先程の大規模な戦闘で身の危険を感じた低級のUC達は散り散りになっており、それほど警戒せずにくつろぐ事ができた。


「お疲れ、結人。」


この中で1番回復しているグレンが近くに歩み寄る。第4段階が発現し、魔力切れが無くなった彼は今ならもしかしたらゼラストよりも強いかもしれない。


「うん、グレンもお疲れ、第4段階発現したんだってね、おめでとう。」


「ありがとさん、おかげ様で魔力が無限になった。今ならお前に勝てるかもな。」


「ははは、今すぐ戦ったら実力的には負けちゃうかもね、でも咲夜がいるからきっと勝つよ。」


結人の言葉は事実である。既に魔力も1割程度しか残っておらず、第1段階はともかく、第2、第3段階は流石に無理がある。

今戦えば負けるかもしれない。


「そっか・・・・・・俺は休憩が終わったからもう行くわ。」


「わかった、気をつけてね。」


グレンは、魔力を込めると、大空へと飛び去っていった。

もう少しゆっくりしていけばいいのになと思いながら、亜空間からいちご大福を取り出す。これだけの働きをしたのだ、しばらく出番はないだろう。


「ゼラストさん、レネ、スカイラ、休憩も兼ねておやつにしよう。」


「はい、今行きます。」

「わかった、いただく事にする。」

「えーーーもしかしたてまたいちご大福?もっとレパートリーを増やそうよ。」


「文句を言うな、スカイラ。こちらは貰う側だ。それにお前、1番最初にやられていただろ?」


「はーい、分かりましたよ、ゼラストさん。」


スカイラは、何故かゼラストに頭が上がらない。昔から、魔法を教えて貰ったり軍の中でも面倒を見てくれるらしい。


寝っ転がっていた3人は立ち上がると、それぞれこちら側に歩き出した。

結人は、5人分の椅子を取り出した。昔買ったキャンプ用品だ。

ちなみに、食料やテントなんかもある。もし遭難しても2人で1ヶ月ぐらいなら耐えられる計算だ。まぁ生まれてこのかた使った事はもちろんないし、この先使うこともないだろう。


「やはり美味しいな、いちご大福は。結人君に薦められていらい、たまに食べるようになってる。」


「結人さんは、いちご大福が大好きですからね。」


咲夜としては、自分が作ったやつを食べて欲しかったが、今はグッと我慢している。ちなみに、咲夜のポケット収納魔法の中にも当然いちご大福は入っている。

今出しても良かったが、あとで2人きりの時に食べることにした。


「あ、とうやらお迎えが来たみたいですよ、皆さん。」


レネに言われて来たの空を見れば1機の攻撃ヘリがゆっくりとこちらを迎えに来ていた。

5人はそのヘリに乗り込むと、セランの乗る空母へと引き返していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る