#8 二つの死闘
剣技という言葉がある。
はるか昔、人々は剣や槍、刀などを用いて争った。
そこから段々と盾を使ったり、馬や象といった動物を用いて争った。
そんな武器による差があまりない時代、人々はより強くなるために己の技を磨いた。ある者は肉体を鍛え、またある者は自分の武器に工夫を施した。
中には、速度で勝っていればいかなる剣士にも負けないと言った剣士すらいた。人々は様々な方法で己の技を磨き合った。
だがそれも、火器が登場するまで。
飛び道具の脅威が知れ渡ると誰も剣を用いらなくなった。航空機や戦車の影響も大きいが、鉄砲の影響も大きいだろう。
どんなに剣の達人でも音速の数倍で飛んでくる弾丸を防ぐことはできないし、接近戦以外に持ち込まれたらほとんど勝ち目はない。
次第に機械が用いられるようになり、動物はその姿を消した。
そして今現在、再び剣への期待が高まった。理由は単純、最大の欠点である遠距離への対応が魔法によって可能になったからだ。また、剣の方がイメージしやすく攻撃が通りやすいことが挙げられる。
そしてもう一つ大きな理由がある。それはずばり、世界最強である『黒白』が剣を使うからである。
さて、その剣技の事だがこれは結人の唯一の弱点といえるものだ。と、言うのも剣を使うには使うのだが、結人は技や型というものをまるっきり無視している。
そもそも余りある魔力でそのすべてを補えるので必要がないのだ。
全ての魔力の流れを肌で感じる。
目の前の相手に集中をし、攻撃を繰り返す。
右手に持つ純白の龍剣『リエス』と周囲を回る4色の龍剣を自由自在に操り、ダメージを蓄積する。
「<
結人は左手に炎を纏う赤い龍剣を持つと先ほどと全く同じ位置に投げおろした。
結人の剣の使い方は単純、5本のうちの色付きの4本は掴んで投げるそれだけである。名付けるならば『投剣技法』といったところか。残りの一本、すなわち純白の龍剣も剣技なんてものはせず、ただ振り下ろすのみである。
「<
続いて手に取るの氷を纏う青い龍剣、それを凄まじい速さで敵UCの身体をぶち抜く。衝突の瞬間、周囲が一気に凍りつく。
するとダメージが効いたのか、次の瞬間巨体が震えた。1万を超える棘の先端が紫色に光り輝く。
なんだ?
何でも見通す最強の眼で覗く。
この感じ・・・電気だ。それも凄まじい量の・・・
耐えられるか、たぶんできるがここは安全第一だ。
「<絶縮>!!!」
棘の先端だけであれば折ることは容易だ。全ての棘を折るのはいくらなんでも無謀、だが周辺だけであれば・・・
生成した魔法陣を足場に、飛び回る。まるで、鏡に反射した光の道筋のように・・・
「
次に使うのは、風を纏う緑色の龍剣。
速度の面では最速の動きで棘を切り落とす。
結人が動き始めてから約1秒後、魔力をため終えた
空気を圧縮させて空気の層を作りその攻撃を防ぐ。
「ふぅ・・・」
止めていた息を吐き出す。喜んだのも束の間、再生を始めた無数の棘をもう一度切り落とし始める。
UCの倒し方は大きく分けて2つ、核を破壊するか魔力切れにするかである。それは例え破滅級でも同じ。だが、この破滅級は核を3つ持っている。頭部に2つ腹部に1つ。
1つもしくは2つであれば第二段階の『次元崩壊』を用いれば破壊は可能だ。だが、その直後、硬直時間の間におそらくやられる。ならば、狙うべきは後者。
魔力切れを狙う。
ほんと、無駄にでかいよな。
高速で移動しながら、そんな事を思う。油断などは一切できないが、少しばかり余裕があった。この前破滅級を倒したときは何も考えずに戦ったが、今回は周りを見るだけの余裕があった。
「
雷を纏った黄色い龍剣を片手に電気の力で加速させ、投げつける。4本の龍剣がそれぞれ自由自在に飛び回る。それぞれの刃が少しずつ確実に傷をつけていく。再生されるよりも早く、確実に・・・
あちこちから吹き出る魔力の塊と放電をかわしながら、ダメージを蓄積する。敵UCの身体のあちこちから紫色の体液が吹き出た。弱っているということだ。
少しずつだが、動きも鈍くなっている。
結人は正面に周りこむと、初めて破滅級UCの顔を拝んだ。この世のモノとは思えないほど醜い容姿をしており、極悪さが感じ取れる。
この頭の部分の中心辺りに一つ目の核がある。
核の周りは、通常よりもだいぶ固くなっている。ざっと10倍ぐらい硬い。
そのため、連続攻撃ではなく重い一撃を与える。
「はっ!!!」
ありったけの魔力を注ぎ込んだ純白の龍剣を振り下ろす。
核の破壊はできないにしてもダメージはしっかりと通る。
凄まじい衝撃波が周囲に広がり、大地を揺るがす。
核を全て破壊するのは無理でも、第二段階を使わずに核に傷をつけるのは可能だ。ダメージを与えれば、修復のために魔力を消費する。
それを繰り返し、魔力切れを狙う。
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