#30 限界突破⑤ ーーvs世界最強

ブックマーク2800達成しました!どうもありがとうございます!

これからも引き継ぎよろしくお願いいたします!


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MTF終了まで残り30分


1位 黒崎空 24699(2年Aクラス)

2位 藁科結人14633(1年Aクラス)

2位 嘉神咲夜14633(1年Aクラス)

4位 仙洞田樹10555(1年Aクラス)

5位 藁科美月8841(1年Aクラス)

6位 有瀬聖奈7586 (1年Aクラス)


残り参加者

35/501





その魔力はすぐに感じた。初めて見た時のことを今でも覚えている。

普通の魔法師とはどこか違う異質な雰囲気。魔力量も魔力操作技術も桁違いに高く、まさに『世界最強』。

同じ部隊になって、親友になってもう何年も経つが、未だにこの圧倒的な存在感には慣れない。


「ごめん聖奈、ここでお別れだ。」


「っ!!!」


試験終了まであと30分、あいつが動くなら今このタイミングだろう。先程まで上空から何やら観察をしていたが、それが終わったのだろう。

鬼ごっこをする事になったかもしれない。


「12時の方向に俺の友達がいるから彼らと合流してくれ。」


「樹くんはどうするの?」


「俺は戦いを避けられそうにない。」


「分かった、気をつけてね!」


状況を察した聖奈は頷く。

聖奈は、樹に手を振ると偽結人がいる方向へ走っていった。


「あぁ、任せろ。」


もう姿が見えなくなっているが、樹はそう呟く。少し歩いて移動する。校庭のど真ん中、逃げも隠れもせずにただじっと待つ。

もう9月だが、日差しが強い。多くの生徒がいたからか、空気中の魔力の量はだいぶ少なくなっていた。


しばらくすると、予想通りの人物が目の前に現れた。手には彼の愛刀を持っている。どうやらさっきまでのお遊びとは違うらしい。

そして、とても強度な結界が形成された。

大きさはこの校庭全体、ご丁寧に地面にもある、球形だ。


「こうしてバトルするのも久しぶりだな、結人」


「そうだね、こうした広々としたところで戦うのは久しぶりだね。」


「ルールはどんな感じだ?まさか真っ向勝負ってわけじゃないだろ?」


「もう1人呼ぶつもりだよ。まぁ2対1って感じかな。そっちの勝利条件は僕を何をしてもいいからこの結界の外側に追い出す事、こっちの勝利条件は2人が脱落すること。」


「もう1人?誰の事だ?」


「美月だよ。」


結人がそう言うと、1人の少女が結界を突破してくる。この結界は使用者である結人のみが通れる結界だ。

また、魔力パターンがほぼ同じである美月も通れたりするのだ。


「お兄ちゃん!会いたかったよー!もう、どうして逃げるの?」


「ごめんよ美月。じゃあ打ち合わせ通りに頼むよ。それと今回は空間魔法使っていいよ。」


「!!!いいの?お兄ちゃん。」


「うん、いいよ。じゃあ2人同時にかかってきて。<ゼロ・ノート>」


始まりの魔法を使い、自身の魔力回路を最適化する。

漆黒の色の髪の毛は白銀へと染まっていく。

本気の戦闘モードだ。


「じゃあ行くよ!<絶縮>」


美月は、亜空間から結人に貰った剣を取り出し、足に力を込めて地面を蹴ると愛する兄に教わったとっておきの魔法を放つ。発動までの速度、練度は既に父である真人に匹敵している。

魔法師同士の戦闘は身体強化魔法の掛け合いから始まる。だが、藁科の人間にはそんなもの必要ない。身体を魔力で漲らせると自然と身体が最適化されていく。

暗黒龍であるヨルフィアに聞いた所、通常の人間とは違い、龍の魔力回路を持つ藁科の人間はそれぞれ龍によるアシストが付くらしい。

結人と美月はその中でも別格で、龍のアシストが特に強い。


空間を圧縮して2点間の距離を極限まで近づける。いきなり結人の目の前に現れると手に持った剣で切りつける。水平方向への単純な一撃、だが<絶縮>によって必中の一撃へと昇格する。


結人はそれよりも早く愛剣である<絶夜>を縦に構えて正面から受ける。


キーーン


金属と金属のぶつかる音が響くと同時に、爆風が発生する。

それが2撃、3撃と続き、空気が震える。

込められた魔力はそれぞれ世界最高レベル。それを当たり前のようにポンポン繰り出す。

先程の空と美月とのバトルとはレベルが違った。


「流石お兄ちゃん、びっくりするぐらい強いよ♪」


「それはどうも、美月も凄いよ。僕が言った事をちゃんと守っている。」


そんな事を言いながらも剣と剣はしのぎを削る。

遅れて、身体強化をかけ終えたこの男も戦闘に加わる。


「おいおい、俺を忘れて貰っちゃ困るぜ。仙洞田流<影・三日月>!!!」


普通の魔法が一切通用しない事を知っている樹は最初から全力で攻撃する。

古くから伝わる技に、魔法という更なる磨きをかけた攻撃だ。

移動手段として何重にも<加速>をかけて2人の速度に何とか追いつくと、得意の拳銃ではなくナイフによる攻撃を行う。

弾丸よりも高速で移動する事ができる結人にただの鉛玉がが当たるはずがない。

とはいってもナイフなら直撃するって話ではないが・・・


「クソっ!相変わらず速すぎるだろ、お前」


「速さは樹の専売特許ってわけじゃないからね。」


「っんな事知ってるわ!」


そう言いながら、結人のカウンターを回避する。魔法師は基本的に回避手段と攻撃手段を多く用意してある。


そもそもこの魔法というものはUCと戦う事を想定されている。誰でも死んだらそこで終わりだ。死にたくないのはみんな同じだし、生き残る手段は多い方が良い。

そのため回避系や防御系の魔法の方が発達が著しい。その代表的な例が結界魔法である。


都市や基地、戦艦を守るために数々の結界魔法が開発された。自分で作った結界魔法を自分の攻撃魔法で突破出来ないという魔法師の方ができる魔法師より多い程である。


「<疾風>!」


単純な風魔法と低空気抵抗を減らす魔法を組み合わせて結人の攻撃を回避する。

だが、ただの魔法で逃げられる程結人は甘くない。


「<絶空>」


樹が移動する方向にあるのは不可視の罠。

樹が進もうとしたエネルギーと同じエネルギーで外側に弾き飛ばされた。

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