#31 限界突破⑥ ーーvs世界最強
「<絶空>」
結人による不可視の罠に見事に引っかかった樹は凄まじい勢いで弾き飛ばされ、結界に激突した。
咄嗟に背後に魔力障壁を展開したものの、ダメージは少なくない。
「大丈夫、樹君!」
「あぁ、なんとかな・・・」
「凄かったね〜お兄ちゃんの魔法!見ているだけで私キュンキュンしちゃったよ♪」
「アホな事言ってないでさっさと構えろよ、美月」
「は〜い。ここからは私も本気で行くよ!第1段階<龍召喚ー時空龍>!」
美月は、魔力を全身に集中させると本気モードになる。
圧倒的なエネルギーをその身に集めると、龍剣を顕現させた。先程までとは比べ物にならない存在感。
その力は時間魔法において、結人をも上回る。
「覚悟して!お兄ちゃん♪」
言葉は可愛いが、内容は凶悪だ。目にも止まらぬ速さでの攻撃は流石の結人でも<ゼロ・ノート>だけでは追いつけない。
身体が反応出来ても目が追いつかない。
「<絶縮>!」
絶縮の連続展開で逃げ回る。
逃げながら急に振り返って一撃を繰り返す。ヒットアンドアウェイだ。
対する美月は純粋な速さで戦う。
カウンター狙いの結人に対して正面から攻撃を繰り出す。
「俺もやるか・・・・・・
<青き月>
自分の上空に半径10m程の小さな月を作る。能力は3つで魔力のほぼ無限供給、重力操作、魔力操作技術の上昇だ。
その効果として自身に対する魔力操作技術を増強させると、固有魔法を重ねる。
「第1段階<絶対射程領域>」
亜空間から取り出した愛銃<青き宇宙>を乱射する。放たれた弾丸は物理法則を完全に無視して急激に曲がると結人を追跡する。
青き月によってほぼ無限に魔力があるので弾丸は留まることを知らない。
結人は、美月の攻撃をかわしながら樹の弾丸を1つずつ確実に叩き落としていく。邪魔ではあるがただ単に邪魔なだけだ。
1つずつなら落としていくのは簡単だ。
「樹君、お願い!」
「おっけー、くらえ!結人!」
<青き月>の最後の能力、『重力操作』。地球上に存在するあらゆる物体は重力を受ける。
身体全体にずっしりと重みが乗った。
「いきます!」
一瞬の怯みを見逃さず、つかさず連続攻撃を繰り出す。重力波で動きが鈍る。
重力が体感では10倍程になっている。
初撃は、剣で弾くが、2撃目が間に合わない。
「<魔力障壁>」
あまり使いたくなかったが、急いで魔力障壁を展開して防御を固める。<青き月>で強化されているとはいえ魔力操作技術は樹よりも美月よりも結人の方が上、簡単には破られない自信がある。
だが、考えが甘かった。どんなに硬い魔力障壁も美月の前では無意味だ。
「時間魔法<
この魔法はただ傷を癒すだけでは無い。魔法に干渉すれば魔法の発動前に戻す事ができる。
対策手段はほぼ無い、結人の白い魔力障壁は音も無く何事もなかったかのように消えた。
そして、美月の龍剣は完全に直撃した。
ただし、結人の最後の砦である次元バリアに、だ。
結人が咲夜と2人きりでいる時を除いても寝る時もご飯を食べる時も常時展開している4重のパリアだ。
威力は殺せないが身体の無事は守る。
「終わりだよ、お兄ちゃん」
すぐさま『絶縮』を使って追撃すると結人を場外へと吹き飛ばすためのパンチを繰り出す。
防御手段が無いことはないが、既に目的は達成した。
「おめでとう、僕の負けだ。」
結人はそう言い残すと場外へはじき出された。
*
「いや〜まさか負けるとはねー」
「ほんとですよ、黒白様。妹様とはいえあなたともあろうお方が負けてどうするんですか。」
結人は、東京校の上空でイベント終了まで静かに時を待っていた。
隣にいるのは今回『白虎』として参加した椿さんと会話をしていた。
イベントという名目なので、暇で生徒に人気のある魔法師ということで今回彼女も選ばれた。
「美月は僕の妹だからね。まぁ樹の実力をあげるためにやったのにあまり成果が出なかった感は否めないけどね。」
「それにしても凄かったですよね、時間魔法・・・・・・常識が覆ります。」
「僕も驚いたよ、時間魔法にあんな使い方があったなんて・・・」
「それは私も思いました。私も黒白様のようなバリアを常時展開できるように頑張ろうと思います。」
「うん、頑張って後で練習に付き合うよ。」
「ありがとうございます!黒白様のお嫁さんに怒られない程度に教えてもらいます!」
「ははは、念の為咲夜には言わないで置くかな。」
確かに咲夜が知れば怒りそうな案件だ。
隠そうと試みるが、時既に遅し。
背後からとても可愛い声が聞こえた。
「誰に何を秘密にするんですか?結人さん」
「ごめんなさーい!!!」
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