#25 MTF⑦

MTF終了まで残り1時間



1位 藁科結人14633(1年Aクラス)

1位 嘉神咲夜14633(1年Aクラス)

3位 黒崎空 9502(2年Aクラス)

4位 仙洞田樹8577(1年Aクラス)

5位 藁科美月7441(1年Aクラス)

6位 有瀬聖奈5386 (1年Aクラス)


残り参加者

43/501


共通敵キャラクター4名突入。

それぞれは、討伐した場合貢献度に応じて10000ポイントを分配する。

以下、それぞれを朱雀、玄武、青龍、白虎と呼称する。





残り1時間を告げる通知を受けていた時、結人と咲夜は地面に足を着けていなかった。

上空300mーー東京校を守る防御結界のすぐ下辺りにいた。

先程と同じレジャーシートを結界の上に引いて、2人は妹や友人の活躍を眺めていた。魔力もほぼ完全に遮断しており、2人に気づいた者は片手で数えられるほどしかいないだろう。


「それにしてもさっきの空の動きは良かったよね。元々才能はあったけど、凄く良くなった。」


「はい、流石結人さんです!これなら空さんをA級に推薦しても大丈夫なんじゃないですか?私は賛成します。」


魔法師の級位を上げる方法は大きく分けて3つある。

1つ目は、実力。超級や災害級ならば単独討伐すればすぐにA級もしくはS級に上がる。

2つ目は、推薦。希望する級位より上の級位の人間2人以上からの推薦で簡易検査とともに昇格する。ただし、この方法によるS級への昇格は不可能。

3つ目は、実績。ジルトレアの人事部が見込みありと判断した場合、自動的に昇格される。また、降格する場合もある。


空は既に推薦に値する実力になってきていた。だけど・・・


「だけどまだちょっと足りないんだよね。もう少しで殻を抜けられそうなんだけど・・・・・・まぁ今日のイベントに期待かな。」


「そうですか、今日の彼の相手は誰何ですか?」


「それは後でのお楽しみかな。それよりまずはお客さんさんの相手をしてあげよう。」


「あら?確かにお客さんですね。まぁ私からしたらお邪魔さんですが・・・」


下を見る2人の視線の先には、<絶縮>を使いながら上へと駆け上がる1人の少女がいた。

よく見知った顔で、魔力も自分とそっくりの少女がいた。


「結く〜ん、会いたかったよ〜」


今回のイベントで敵キャラクター役に選ばれた、いや選ばせたのだ。ちなみに朱雀らしい。

姉さんが参加するとか反則じゃんとか考えたが、これは逆にチャンスでもある。


「じゃあ頼んだよ、姉さん。」


「まっかせて〜私はお姉ちゃんだからね、弟の頼みなら何でも聞くさ〜」


「よろしく頼むよ。あ、それとくれぐれも気をつけてね、空は今爆発的に力をつけている。油断したらーーやられるよ?姉さんでも。」


「分かってるよ。そんな事より、忘れないでよ?」


結人の真剣な警告に対して、茜はいつもとは違い真剣に頷いた。

ちゃんと部下の事を考えているんだなと、思ったら欲しかったのはご褒美の方だったらしい。

がっくりだ。というか約束ってなんすか?聞いてないんですが。


「約束って?」


結人が尋ねると、少し照れくさそうに茜は答える。


「結君1週間分・・・」


「ダメに決まっているじゃないですか!」


茜の回答に対して珍しく大声を出して咲夜は抗議する。というか僕いつの間に単位になったの?


「結人さんの時間は全て私の物です!1分も1秒もお姉様には渡しません!」


今度は私物化された。


「それは違うんじゃないの?結君は咲夜ちゃんの物じゃないよ、みんなの物だよ。」


「いいえ、結人さんは私だけの物です!」


「そんな事を言うなら手伝わないよ?私。」


眺めているのが1番賢い選択かなと思ったが、姉さんに辞められたら困るので間に入る。


「いやいや困るよ、今日は4人しかA級魔法師を呼んでいないから姉さんが参加してくれないと人数が足りなくなっちゃう・・・それに弟の頼みなら何でも聞くってさっき言ってなかった?」


「分かってるよ、結君。ちゃんと仕事はするよ。」


茜は、弟の頼みを聞いてあげた優しいお姉ちゃん感を出しながら答えた。

その直後、配られた端末を見ながら何か考えていた咲夜が顔をあげた。


「いい方法があります、結人さん」


「ん?どうしたの?咲夜。」


結人の問いかけに対して、端末を結人に見せる。


「これを見て下さい。敵として登場する魔法師の情報ですが、A級以上と書いてあります。つまり、結人さんが務めても何の問題もありません!」


キラキラとした目をしながら咲夜は提案する。


「確かに出来るみたいだけど、そしたら僕がいなくなっちゃうよ?」


「ここにいるじゃないですか、結人さん。幼い頃から執拗に追いかけ回り結人さんに関する知識が多い人物が。」


「なるほど、姉さんに変装して貰えばいいんだ!髪の毛も目の色も魔力のパターンもほぼ同じだしマニアじゃない限りバレないでしょ。」


「はいはいはい!私やりたいです!結君の変装とかいいね、面白そう!」


するとさっそく、茜は自分に隠蔽魔法をかけて結人と同じ髪型にして男物の制服に着替えた。

ここで着替えるなよ、とは突っ込む暇もなく。


「じゃあ私は妹ちゃんと情報交換会やっているから好きに暴れてきな、結君」


「行ってらっしゃいませ、結人さん。少し予定とは違った展開になりましたが、応援しております。」


意見を述べる前に、勝手に全て決まってしまった。仕方がないので、咲夜の提案にのる事にする。


「分かった、行って来るよ。」


亜空間からいつもの狐の面を取り出すと自分にはめる。

そして、始まりの魔法を唱えた。


「<ゼロ・ノート>」


圧倒的なエネルギーが東京校全体に響いた。それに気づいた生徒や教師はいっせいに空を見上げる。


『世界最強』

『人類最後の希望』

『序列一位』


その肩書きは伊達じゃない。

戦場で味方側にいた時の心強さ、付いて行きたいと思うリーダーシップ。

嫌でも感じてしまう、圧倒的強者の感覚。


「おい、嘘だろ?」

「ホンモノだよな・・・じゃなきゃこの魔力を説明出来ないもんな。」

「A級魔法師だけじゃなかったのかよ・・・」

「あれは、いやあのお方を倒すのは無理だ。」


各地で動揺が走る。見ただけで敗北を悟った。

実力があればあるほど、黒白の異次元さを感じ取る。


そして、生徒同士の刈り合いから敵キャラクターからの逃走ゲームへと変化した。

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