#24 MTF⑥
「え?嘘、何が起こったの?」
守られた側である聖奈も何が起こったのか理解できなかった。
やられると思った直後、凄まじい魔力の塊が目の前を通り過ぎた。そしてそれにぶつかって、先輩が後ろに吹き飛んだ。
「ははは、何だ今の、全く見えなかったぜ・・・」
啓一は、思わず冷や汗をたらす。
全く見えなかった。自分と撃ち合っていると思ったら次の瞬間消えていた。そして、雫がやられた。
一瞬だけ感じた圧倒的な存在感、そして魔力量、普通では無い何か。
樹は、余裕そうに立っていた。
「さて、次は・・・誰かな?」
笑顔のまま、啓一の方を見つめる。樹は失敗の連続で、妙なテンションになっていた。戦闘を楽しむような感覚。
目の前の男へと標的を絞る。
「瞬殺してやるよ。」
「はっ!上等!」
啓一も目の前の強者に対してテンションが上がっていた。
再び全身が魔力でみなぎる。
「
啓一の周りに集まった魔力が啓一の持つ散弾銃に収束すると、凄まじいエネルギーを持った波動砲が放たれた。
その名の通り目に見えず、ほぼ全方向に放つので避ける事はほぼ出来ない。
だから・・・
「<魔力障壁>!」
絶対的な防御力で防ぎきる。目に見えなくても波動として存在するので魔力障壁で防ぐことは可能だ。
啓一は、防がれた事がわかると地面を蹴り一気に距離を詰める。
「魔力拡散」
当然、自分の固有魔法の弱点を把握し、その対策も立ててある。
そして、魔力拡散による魔力の主導権争いに勝つため魔力操作技術の練習はたくさんしている。そのため、ただ1点魔力の主導権争いだけは樹を上回る。
パリーンという音とともに魔力障壁が割れる。
割れたのと同時に右手を前に突き出し、再び引き金を弾いた。
「第1段階<インビジブル・ウェーブ>」
「対策済みだよ、仙洞田流<影・朔月>」
魔力障壁の押し合いになれば自分の勝率が低い事は樹自身も自覚していた。それゆえの対策手段。
<影・朔月>
樹が編み出した魔法の中で唯一の防御魔法。
跳ね上がる動体視力と身体能力であらゆる攻撃を物理的に逸らす。
重みのない攻撃は少し触れただけで方向が変わる。
樹は、手に持つ青い拳銃を一瞬離すと仕込んであった魔力のこもった短剣で波動を弾いた。
「な!!!波動を、弾いた?」
「じゃあな、そこそこ楽しかったぜ。」
啓一は驚いて、引き返そうとするがもう遅い。
樹は、再び手に取った愛銃の引き金に指をかけると迷わずに放った。
*
「どうだ?天沢、面白いやつは居たか?」
MTFー観戦室
東京校校長の天沢沙織と日本防衛軍大将の朝日奈和成は観戦室でモニターを眺めていた。
「そうですね・・・1年生の中だとあまり目立った方はいませんが、今ちょうど戦っている有瀬聖奈さんとかあそこにいる空野力也さんとか・・・」
「そうか・・・」
この2人については既に結人経由で報告を受けていた。だが、第1線で戦えるほど実力は無いとの事だ。
つまり、望み薄である。
「はい、魔法師でない者たちだとこの2人が1番可能性がありますね・・・」
「無い物ねだりしても仕方がないか・・・だが考えて見ればこの年代は黄金世代だな。結人君、咲夜君、樹君、そして美月君。海外にも、『水の天使』『破壊の王者』『戦場の歌姫』。とんでもない逸材が揃っている。」
今挙げた者たちの他にもこの世代は優秀な魔法師が多く存在している。
明らかに魔法は進歩していた。
「そうですね・・・私も1度だけ黒白様の魔法を見せて貰いましたが・・・・・・。あれは・・・あれは別次元です。こんな事を言ったら失礼ですが、同じ人間だとはとても思えませんでした。あまりにも異質です・・・」
「私は魔力回路がないから詳しくは知らないが、確かに彼は異質だ。だが、ただの学生でもある。」
朝日奈は、天沢の言葉に同意した。まだハッキリと分かってはいないが、彼には特別な何かがあると確信していた。
天沢は続ける。
「そもそも魔法とは、体内外に存在する魔力を魔法式や精霊を通して事象として変換するものです。そのため、私のように精霊と契約を結んでいない人間は魔法を使う時に1から魔法式を構築しています。」
「ああ、その辺は私も理解している。」
朝日奈は魔法が使えないが、魔法に関する知識を人一倍持っていた。朝日奈は日本防衛軍のトップとして魔法をより深く理解しようと思ったからだ。
「ただ、彼は違います。彼は魔力を直接干渉させています。つまり、精霊無しで精霊と同じ動きをするのです・・・・・・彼の正体が実は精霊だったと言われても驚きません。」
「それは困るな〜結君はちゃんとした人間だよ〜」
2人しかいない観戦室に別の声が聞こえた。そして、その声の主は観戦室の扉を開け中に入って来る。
背は小さめで赤い髪、手には1本の赤い剣を持っている。そして、黒白と同じ仮面を株っていた。
朝日奈と天沢も直ぐに誰かわかる。
「失礼しました、紅様。」
「済まなかったな、茜君。」
「別に私は怒ってないよ〜ただちょっと、イライラしただけかな。」
軽く殺気を込める。
「も、申し訳ありません。」
「やめたまえ、茜君。私も悪かったが、これ以上やったら結人君に報告させてもらうよ。」
朝日奈は茜をそう脅す。すると予想通り、茜は殺気を解いた。
「え〜それは困るな〜」
「そろそろ君の出番だろ?急がなくていいのかい?」
「うん、私は退散するよ〜早く結君に会いたいからね〜。ふふふ、待っててね結君、お姉ちゃんがごちゃごちゃにかき混ぜてあげる!」
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読んで頂きありがとうございます!
佐々木サイです!
1度休んでしまった失敗から物語が思いつかなかった時用にssを作りました!
これで全て解決って思ったのですが、よく考えてみると1話分時間を稼ぐために1話分のssを書いていたら本末転倒じゃんという結論になりました。
このssはいずれ公開します!ssが公開された日は、「作者のやつまた思いつかなかったのか」と思って下さい(笑)
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