#23 MTF⑤ー樹&聖奈vs啓一&雫
睨み合う聖奈と雫、その2人を樹と啓一は心配していた。
「おい雫、こんなやつと戦っている暇はないんじゃないのか?」
「いーや、あいつは要注意人物だよ。お爺様が挙げた4人の要注意人物の内の1人。私が詳しく聞かされていないって事は最低でもB級、もしかしたらA級の可能性だってある。」
「まじかよ・・・なら・・・是非ともお手合わせ願いたいな。」
丹羽は、自身の制服を脱ぎ捨てる。すると彼の目立つ筋肉が表れる。遠目からでも相当鍛えられている事がわかる。
啓一は亜空間から一丁の銃を取り出す。
黒色のその銃は、長く銃口も太い。俗に言う散弾銃であった。
散弾銃自体は珍しくないだが・・・
「その見た目で銃を使うのか?てっきり近接の肉弾戦が得意なのかと思っていたぜ。」
「筋肉は単なる趣味だ。本職はこっちさ。」
「そうか、ならば俺も使わせてもらうぜ、
『
樹の宣言に答えるかのように亜空間から二丁の青い拳銃が出現し、光り輝く。
本気を出すつもりは無いが、負けたくもないのでちゃんとした武器を選択する。樹は、知名度は高いがマニアじゃない限り武器から魔法師を当てるのは無理なので使うことが許可されていた。
「<身体強化><加速><硬化>」
2人の魔力を見て雫も自信に魔力を込める。雫の武器は己の拳、可愛い見た目とは逆にゴリゴリの近接戦タイプである。
「<身体強化><鋭利化><魔力同調>」
聖奈も合わせて自信に魔力を込める。魔力量で劣る聖奈は効率優先、少しでも長く戦えるように省エネモードというわけだ。
聖奈は、樹から剣を受け取る。
「さあ、準備はいいかい?聖奈」
「えぇ、大丈夫よ、お願いね。」
「分かった、重力操作<ゼロ・グラビティ>」
樹は、自分と聖奈に重力魔法をかける。
魔力量に自信のある樹は、聖奈が空中戦を可能にするために2人分の重力魔法を発動した。そして、もう1つ理由がある。それは、聖奈を安全な場所に逃がすためだ。
途端に身体が軽くなり、屋根を蹴れば落下運動が消える。
最初から全力で樹は魔法を放つ。
「消しとべ、<
火属性魔法における最高火力の魔法。
地面に向けて放たれた、破壊の限りをつくした魔法は全てを飲み込む。
凄まじい閃光とともに雫と啓一がいた地点を中心に爆発が広がる。殺してしまわないように威力値は3万程に設定する。
設定といっても大雑把にだが・・・
樹は、放った直後に後悔する。そういえば結人にこの2人の実力を測ってほしいと頼まれていたのだ。
それとこの火力 ・・・
まぁ死にはしないだろう。
・・・・・・多分。
最悪火傷しても時間魔法使えば何とかなるか・・・
が、その考えもすぐに否定される。放った地点から強い魔力を感じたのだ。
「今のを耐えるか、なかなかしぶといやつだな。」
「危なかったな・・・」
「えぇ、本当に危なかったわ。判断が遅れていたら火傷じゃ済まなかったわね。」
2人は、全身を魔力障壁で囲みながらそう吐き捨てる。見た目は何も問題はないが、2人は内心とても焦っていた。
ーー次食らったら間違いなく飛ぶな・・・
ーー可愛い顔(?)してとんでもないわね。これならA級でも納得がいくわ。
「次はこっちの番だ!」
止まっていたらやられる事を悟った啓一は、魔力障壁を足場に駆け回る。身体を丸めて身を小さくし、近づいて散弾銃を放つ。
弾けるような弾丸を正面から浴びせる。
「<拡散砲撃>」
飛び散る弾丸の魔力が上乗せされており、直撃すれば脱落は避けられない。だが、樹もこんなところでやられるほど弱くない。
「効きませーん」
自身が展開した魔力障壁を足場にして攻撃を避ける。
それと同時に左右2発の弾丸を浴びせる。
「ちょこまかと!」
攻撃、防御、移動、手数、全ての面で樹は啓一を圧倒していた。
A級ーーS級魔法師のようなバケモノ集団に次ぐ実力を持つ者に与えられる称号。また、正攻法で魔法を極めた者の到達点とも言える。全人口ー約50億人のうちのわずか96人、まさに選ばれた者たちである。
S級とA級にはとてつもないほどの差があるが、A級とB級にもはっきりとした差があるのだ。
樹も天性の戦闘センスと膨大な魔力量を持つA級魔法師である。文字通り格が違うのだ。
格の違いを感じとった啓一は、作戦を早める。
「雫!全力で行かなきゃこっちがやれるぞ。」
「わかっているわよ!」
一方の雫は、聖奈としのぎを削っていた。魔力量も実力も劣る聖奈は、足止めに徹していた。得意の隠蔽魔法で姿を眩ませたりダミーを作ったりして時間を稼ぐ。
危なくなっても樹が直ぐにカバーに入り、均衡を保っていた。
このままじゃ埒が明かないと判断した雫は、全力を繰り出す。先に聖奈を倒し、2人で同時に樹を攻撃するという作戦だ。
「
頭から黒い豹の耳を生やし、爪は鋭利に尖る。目は獲物を狙う目になった。
内側に抱える魔力量がグッと上がる。
聖奈は、強い魔力を感じ取ると剣を正面に向けて身構えた。
だが、先程までとは比べ物にならない速さに目が追いつかなった。
聖奈が反応するよりも早く雫は、間合いの内側に潜り込む。必殺の間合いである。
右手に魔力を込め、全力で放つ。雫は、勝ちを確信した。この距離、この速度避けられる可能性はゼロと判断する。
しかし・・・
「仙洞田流<影・半月>」
音速を超えた一撃が、雫を襲った。完全な視覚外からの反応不可能な一撃、つい本気が出てしまった。
「あっ・・・」
「え?」
雫は、為す術なく正面から食らう。吹き飛ばされた雫はら地面に打ちつけられた。
そして、脱落を告げる安全装置が壊れる音が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます