#22 MTF④ー美月vs空

空の第1段階ー黒き翼

その名の通り、背中から黒い翼を生やす。攻撃、防御、飛翔、滑空などその使用方法は多岐に渡る。機動力が格段に上昇する。

対UC戦において、空というものは大きなアドバンテージである。飛行が可能という事はその分だけ攻撃手段が増えるという事だ。さらに空を飛べる個体は少なく、空の方がより安全である。


「すまねぇな、S級魔法師様相手に手ぶらじゃ勝てるわけねぇーからな。使わせてもらうぜ、これを。」


「どうぞご自由に、藁科の名にかけて、私は・・・負けませんから。」


「それじゃあ、こっちも使わせてもらうぜ。」


そう言って、空は亜空間から黒い剣を取り出す。これは、以前結人と戦った時にも使った魔法剣だ。空はこれを黒いやつと呼んでいて名前はまだ無い。

ただ、刻まれている魔法陣の数と質は格段に上がっていた。

これも、『夜明けの光』のメンバーに調節してもらったものだ。基本的に変人しかいない『夜明けの光』だが腕に関しては超一流、色々な分野のトップが集まった部隊である。


「<連鎖の陣><身体強化><魔力同調><加速>!!!」


例の如く鎖を展開し、身体強化をする。最初から全力だ。対する美月も、魔法を並べる。


「<身体強化><加速><魔力干渉><魔力鈍化>」


自信の強化に加え、周囲の魔力の流れを悪くする。<魔力鈍化>は、両方に影響を与えるが、魔法のほとんどを自信の魔力を使っている美月の方が被害が少ない。


最初の1歩を踏み出したのは空だった。

鎖を足場にしながら空を駆け回る。高速移動からの剣による後ろからの攻撃。並の相手ならばそれだけで沈む。

だが相手は並の相手では無い。


「危ないね〜最初から全力かな?」


言葉とは裏腹に余裕の笑みを浮かべながら魔力障壁を後ろに展開する。


「チッ!バケモノどもが!」


自分の攻撃が防がれたと分かった瞬間、左手を前に出すと魔力障壁潰しを放つ。


「<魔力拡散>!」


パリンっと音を立てて魔力障壁が弾け飛ぶ。相手の魔力操作技術を上回れば、魔力障壁を破壊することは可能だ。結人に教えて貰っているとはいえ、まだ数日しか経っていない美月では、空に魔力操作技術で負ける。


「嘘っ!」


美月は対人戦を想定しなければ使わないこの魔法に驚きながらも、体勢を立て直す。

そして、両手で空気の塊を創り出すと、とっておきの魔法を放つ。


「お返しだよ、<風塵乱舞>」


超高密度の空気の塊が一気に弾けると暴風を引き起こす。その姿はまさに、バーサーカーであった。


「あっぶね、直撃していたら即死だったな。」


空は、全力飛翔で空中に待避した。暴風によって地面や壁に叩きつけられるよりは上空に吹き飛ばされた方がマシだと考えたのだ。


「やっぱり当たらなかったか〜この魔法は威力だけはすごいけど遅いんだよね〜」


「いやいや、対UC戦なら十分だと思うぞ?威力も速度もバケモノだな。」


「あはは〜でも当たってないみたいだし改良が必要かな〜」


「どんだけ強くなるつもりだよ!振動魔法<フラッシュウェーブ>!」


そんな言葉を吐きながら空は魔法を放つ。空気を振動させて美月を襲う。対する美月も負けじと魔力障壁で応戦する。

空は魔力障壁を使った事を確認するとさらなる魔法を組み合わせる。


「<魔力拡散><魔力撃>」


魔力拡散で魔力障壁を破ると間髪を入れずに攻撃をする。魔法師が1番最初に覚える初歩的な魔法。されど非常に強力な魔法だ。


完全に後手に回った美月は、一瞬判断が遅れてしまう。


「氷魔法<氷壁中>!」


咄嗟に氷魔法を使って回避を試みるが、間に合わない。速度でも完全に空の方が上だ。さらに魔法剣というリーチの差もある。

1歩1歩、次第に追い詰められていく。

そして・・・


第2段階セカンド・ハザード<黒き閃剣ブラックブレード>」


ほぼゼロ距離での最速、最高の一撃。

組み立てから攻撃まで完璧であった。動きに無駄が無く、今までの中で最高のできであった。


だが・・・


「空間魔法<絶縮>」


移動という観点においては最強かつ最速の魔法

空の剣が直撃する瞬間、美月の姿が消えた・・・

剣は虚しく空を切る。


「おい!お前!卑怯だぞ!」


「ごめんねー負けたらお兄ちゃんに何を言われるか分からないからさー」


「それが噂に聞く藁科の魔法か・・・反則だな。」


以前、結人にお願いして藁科の魔法見せて貰ったのだ。それを見て、次元が違う事を自覚した。速度、連動共に桁違いである。


「私は、お兄ちゃんのところにいくから、それじゃあね〜」


「おい!待てこのやろう!」


兄を見つけた美月はすぐさま飛んで行った。





「向こうもやってるな〜」


遠くを眺めながら樹がそう呟く。

視線の先では、2つのとてつもない魔力がぶつかり合う。


「随分と悠長でいるな、仙洞田」


「仙洞田君、こっちは2人、そっちは1人どう考えても絶対絶命じゃない?」


そう、屋根の上にいる樹を見上げながら朝日奈と丹羽。


「ちょっと!私を忘れないでくれる?」


そう言って1人の少女が樹の隣に並び立つ。彼女の名前は有瀬聖奈。最近、樹と付き合い始めた少女だ。

黒い髪をたなびかせながら微笑む。


「あら、いたのね。魔力が少なすぎて気がつかなかったわ。」


「そっちこそ、小さすぎて見えなかったわ。」


「やるのか?」


「やりましょう。」


4人はそれぞれ魔力を込める。

こちらでも戦闘が始まろうとしていた。

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