#26 限界突破
「嘘でしょ・・・?神までいるのか。強いUCから逃げる練習って事か?」
「そうなんじゃない?距離なんて取りようが無いから隠蔽魔法で隠れる?」
「いや、そう考えるのは早計じゃないか?桃」
MTF開始から1時間ーー大和、桃、雷華の3人はかねてからの作戦通り固まっていた。元々1人じゃ満足に戦えない桃はチームを組む必要があるし、『同世代最強』と呼ばれていた大和は知名度が高く多くの生徒から狙われた。利害の一致というわけだ。ちなみに雷華は2人が組むならと、2人に従った。
同学年や先輩からの奇襲を退け、残り1時間となったMTFの現在の順位はそれぞれ18位、19位、20位というギリギリ賞金ゲット圏内にいた。
「どうして?雷華」
「相手はあの神だぞ?私たちの隠蔽魔法など簡単に突破するさ。というか1時間逃げ切るなんて不可能だ。なら、私たちがとるべき行動は誰かと戦闘を行う事だ。」
「え?」
「なるほど、確かに神なら漁夫の利のようなマネはしないだろうな。神が困るのはただ1つMTFの停滞だ。ならば自分たちは他の生徒もしくはA級魔法師に挑戦すべきでしょう。」
良い意見だなと、大和も同意する。
実際、突然現れた『別次元の最強』に対して取れる行動はそれぐらいだ。
「じゃあさっそくーっ!!!」
桃は言いかけてやめた。
圧倒的なプレッシャーでこれ以上言葉が出てこない。
先程まで上空にいた神が今、自分達の目の前にいるのだ。
気づいたら手や足が震えていた。
「こんにちは、噂は聞いているよ。確か、水篠さんの息子さんと和良楢さんの娘さんと桐山さんだね。」
「ど、どうも・・・は、初めまして、水篠大和です。」
「和良楢 桃です・・・」
「桐山雷華です・・・」
3人は、緊張しながら答えた。身体や頭は緊張でいっぱいだったが、目だけは真っ直ぐ向いていた。
「どうする?戦ってみる?」
神からそんなお誘いを貰った。勝ち目なんて万に1つとない。でも、世界最強を肌で感じるチャンスだ。
賞金や報酬の事など忘れて、3人は即答した。
「「「お願いします!!!」」」
「元気がいいね、さっいつでもいいよ。私は準備出来ている。」
「では・・・、桃、全力で頼む!」
「任せて!」
桃が叫んだ瞬間、上空にたくさんの魔法陣が広がった。素晴らしい腕だ。
だが、神が見たいのはこれじゃない。
彼女の本気だ。
「和良楢さんに許可は貰っているので全力を出しても構わないですよ。」
「っ!!わかりました!」
神の許可をもらい、決心した桃は本当の力を使う。
「
和良楢 桃は、本来こんな所にいるような人間ではない。
和良楢家は藁科家の分家の1つで、代々精神系の魔術を操る一族。つまり、結人の遠い遠い親戚である。
桃は、そんな和良楢家の最高傑作。狐の中で最も位の高い9本の尻尾をもつ狐に愛されている。その実力は本物でつい先日、A級になった。直接的な戦闘は出来ないが、間接的な戦闘なら国内トップクラス。
自分の正面に魔法陣を描くと、召喚獣を呼び出す。そして・・・
「
自分と
「後は頼んだよ、2人とも」
そのつぶやきとともにとてつもない数の魔法陣を展開する。その数ざっと100以上・・・
自分の攻撃、防御、移動を捨てて全神経を2人への強化に当てる。
<加速><身体強化><電気伝導率上昇><分子操作上昇><威力増強><自動回復><魔力集約><魔力効率化><思考加速>などがそれぞれたくさん。
本来なら毒や麻痺などデバフ効果の対策も必要だが、自分の尊敬する神がそのような事をするはずがないと判断する。
文字通り、今の自分に出来る精一杯。
「多分10分ぐらいしか保てないからその間に・・・」
その言葉を最後に余計な思考を全てなくす。
「面白い・・・邪魔が入らない用にします。」
神がパチンと指を鳴らせば、巨大な魔力障壁が展開された。その大きさは半径150mほど。外敵の侵入を拒む、巨体な結界が形成された。
「よろしくお願いします、黒白様!」
「よろしくお願いします!」
大和は、挨拶と同時に手に持った剣に魔力を込める。相手は圧倒的格上、様子見なんて必要ない、最初から全力で・・・
「
刀身がランスのような形になり、大量の水を纏う。水の量は、以前より格段に増えていた。
桃のアシストによって、魔力がいつもより上手に扱える。
「はぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあっっ!!」
右手を一気に前に出す。
これとないほど完璧なタイミング、位置取りだった。
しかし、相手が悪かった。
当たったと思った瞬間、まるで元々そこにあったかのように現れた魔力障壁が行く手を阻む。
予備動作は一切ない。神は最初に立っていた位置から1歩も動かず、こちらを観察していた。
「なっ!!!」
自分なんかの攻撃が通用するはずがない。分かってはいたが、悔しい。
固有魔法をとかずに次なる攻撃を放つ。
「火力不足だね、もっと魔力の本質を見極めなさい。」
「っ!!!」
戦闘中なのにも関わらず、殺気の1つ感じられない。圧倒的ゆえの余裕が感じられた。
大和が攻撃をし続けている最中、後ろに周りこんだ雷華も自身の全力を放つ。
「
自身の剣に数万ボルトの電流を帯電させ、一気にぶつける。大和同様、魔力障壁に阻まれるが、雷華はこれで終わらない。
「<
これがあるのだ、剣が魔力障壁に直撃した直後の電気の拡散。絶縁体である魔力障壁に莫大な電流を通す。
「想像以上だよ。まさか私の魔力障壁を破るのでは無く貫通させるとは・・・でも、まだ足りない。君たちの実力ならもっと上を目指せるはずだ。」
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読んでいただきありがとうございます!
書き忘れてた(ゲフンゲフン)久しぶりに登場したキャラ達の活躍でした。
この3人はこのまま『奪還編』でも登場する予定ですが、問題が発生しました。『和良楢』って入力するのめんどくさすぎる。
そんなあなたにおすすめ、マイ辞書機能!他の小説家の皆さんも是非使ってみて下さい。よく登場する単語を登録するだけで作業効率がめっちゃ上がります!
それでは、また次回〜
星やレビューをください、作者が喜びます!
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