#19 MTF
よく晴れた月曜日、今日はいつも以上に生徒たちの気合いが高まっていた。
それもそのはず、今日は年に一度の学校単位て行われる生徒会主催イベントMTFの開催日だからだ。
生徒はそれぞれ、自分の武器の最終確認を行っていた。
安全装置であるDD31を威力1万以上のダメージを食らうと壊れるように設定しておく。そうする事で、誰が生き残っているのか分かりやすくてする。
ダメージの有効範囲は、皮膚から数cm程度となっている。
「いよいよですね、結人さん。企みは上手く行きそうですか?」
「ん〜多分?自信は無いかなー。そんな事より・・・この魔力・・・」
「はい、予想通りあの人だと思いますよ。」
「だよね。」
結人と咲夜は揃ってため息をつく。
今日は授業は一切無く、午前9時から3時間のイベントのみだ。ちなみにだが、午後には結果発表会をやるらしい。
結人と咲夜は、どこに行けばいいのかなんて分からないのでとりあえずいつもの屋上にやって来ていた。
「今が昼だとしたらお昼ご飯を食べたいですね、結人さん。」
「まぁそんな雰囲気じゃないけどね・・・」
3学年とも点数的には同じテストを行っている。つまり、今回のイベントがスタートする前の時点で最も点数を持っているのはこの夫婦である。
というわけでめっちゃ囲まれている。
「ざっと30人ぐらいいるんじゃない?」
「そうですね。それに、こんなところでビニールシートをひいてくつろいでいるのは私たちぐらいでしょうね。」
「ははは、おかげさまでめっちゃ注目されているけどね・・・」
「まぁ人数は多くても少なくても変わらないんじゃないですか?結人さんなら。」
「ま、まぁそれはね・・・」
目立つところで相手が仕掛けて来るのを待つ。これは咲夜が提案した作戦だ。
わざわざ目立つような事はせず相手を待つ。そして、A級魔法師を狩るって作戦だ。
固有魔法のハンデがあるとはいえ、相手はA級魔法師、こんなところで学生なんかに負けないというのが咲夜の予想。
別に今回は優勝する必要は無いが、一応高い順位を目指す必要がある。
2人は屋上で静かにイベントの開始を待った。
✳︎
「やっぱり今年も1位を目指すの?」
「あぁ当たり前だ。今日は俺の仲間もたくさん見に来るみたいだからな、情けない姿は見せられないさ。」
空は、辺りを見回しながら索敵を行った。
だが、多くの生徒が自分から離れて行くのを感じる。誰も去年の準優勝者と戦いたくないんだろう。
隣を歩く幼馴染に返答しつつ、寮の方へ向かった。理由は単純で、学校の屋上にどんでもない気配を感じたからだ。
「そう言えば部隊変わったって言ってたよね、どんなところに移動したの?」
「機密事項だ。」
「え〜いいじゃん誰にも言わないからさ〜というかいつもは教えてくれたのにどうして教えてくれないの?
「今までの所は別に言っても支障はなかったが、今回は違うからだ。俺だけじゃなくて多くの人に迷惑がかかる。」
「ちえ〜」
空から情報を引き出せない事が分かった熊谷は、昨日配られた端末に視線を落とす。
既にランキングが公表されており、その1番上には知り合いの名前があった。
夏休み前、空はよくこの2人と学校の敷地内にあるプライベート訓練場で魔法の模擬戦をやっていた。
魔法の大会などには出ていないものの同年代の中では飛び抜けた才能を持った幼馴染と互角にうちあっていたのは記憶に新しい。
そればかりか、座学の方でも歴代最高得点というとんでもない記録を打ち立てていた。
彼と自分の
*
「ダメだ〜いない・・・」
美月は敷地内を全速力で走り回っていた。
というのも・・・
「咲夜お姉ちゃんの嘘つきー!」
25人目のクラスメイトである美月には寮のルームメイトがいない。(2人部屋なので)
最初は、校長先生が結人、咲夜、美月の3人部屋を提案したが、咲夜はしたいことが出来なくなるということで断固拒否。その結果、美月には2人分の広さ部屋を1人で使う事となった。
今日のイベントも3人で一緒に回ろうと話していたが、咲夜は嘘の情報を美月に渡し、2人きりの状況を守った。ちなみに結人には別々に行動するみたいですと伝えてある。
気配は完全に消えており、追跡は不可能どうしようもない状況だ。
「これからどーしよっかなー・・・」
まだここに来て1週間ほどしか経っていないのでまだ慣れていないが、何となく人が多そうな場所を目指す。
「優勝したらお兄ちゃん褒めてくれるかな〜・・・」
優勝後に結人に褒められている自分を想像する。
良い・・・実に良い
「よし!決めた!絶対優勝するぞ!」
美月がそう宣言した直後、イベント開始を告げる通知とチャイムが同時に鳴った。
そして美月は、このイベントのダークホースとなる。
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学校イベント編スタートですれ
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