#18 始まる学校④

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夏休みが終わって以来初めての授業を終え、咲夜との愛の巣に帰ろうと思ったところ、急に現れた2人組に捕まり、3年生と思われる女子生徒からこんな事を言われた。


「単刀直入に言うわ。あなたたち、生徒会に入ってちょうだい。」


ここ、東京校にも生徒会はある。役割としては揉め事の仲介や学校の顔としての活動などがあげられる。

だが、生徒会に入るメリットは普通の生徒にとっては膨大だ。生徒会のメンバーというだけで外部から注目されやすくなる。つまり、企業契約を結び安くなるのだ。


結人は、考える素振りを見せることなく即答した。


「お断りします。」


「ちょ、ちょっと待って!せめて理由ぐらい聞いてくれない?」


「は、はぁ・・・」


先程までの妙な威圧感は消え去り、今はお菓子を買ってくれとせがむ子供のような印象だ。


「TMFが来週開催されるのは聞いたわよね。毎年3年生が優勝して終わるんだけど去年とんでももないバケモノが入学したのよ。名前だけ風紀委員会副委員長の黒崎空、あいつが去年2位をとったせいで私が3位以内に入れなかった。そして今年は私たち3年生にとって最後のチャンスなの、だから協力してくれない?」


彼女は、そう頼んで来た。

たしかに今の彼女ではよくて足止め程度、空に勝つのは不可能だ。

夏休み中も遊ばず真面目に訓練に励んでいたと聞いている。

空がA級魔法師になるのも時間の問題だろう。


「えっとーそれだと逆効果じゃありませんか?」


「逆効果?」


「はい、仮に空さんを仕留めきれればなんの問題も無いのですが、負けるもしくは、逃げられた場合、余計に彼に評価が付きます。それにそれだけ警戒していると思わせるのも悪手です。勝てたのは多数対1人だったからと思われかねません。」


今回来る企業の多くは、近い将来日本を引っ張って行くであろう魔法師だ。空に注目が集まるのは必然。

ならば、連合を組んだら逆効果だろう。


「なぁ朝日奈、やっぱり俺は反対だ。確かに黒崎の野郎は強え、だがそこの2人も同等ぐらいに強いぞ。それに俺とお前だって敵同士なんだ。逆指名権を貰えるのは1位となった1人だけだ。」


「そ、それはそうだけど・・・」


だが、個人的には連合を組んで欲しいと思っている。空にはこんなところで負けるような人にはなって欲しいからだ。


「ですので偶然装いましょう。残り1時間になったら偶然集合して偶然共闘するって感じに。」


「はっ!それは分かりやすくていいな。それなら俺も賛成だ。」


「分かったわ。それで行きましょう。」


口約束だが、この2人はおそらく乗って来るだろう。2人とも自分よりも空の方が強い事を自覚しているからだ。ならば、僕がすべき選択は・・・


「では、そのようにお願いします。」


「あぁそう言えば名前を名乗っていなかったな。俺の名前は丹羽啓一にわけいいちよろしくな。」


「はい、よろしくお願いします」







その日の夜ーーー結人は、いつもの空の特訓場にやって来ていた。

練習場には、2人しかいない。


「久しぶりだな、結人元気にしてたか?と聞きたいところだが・・・例の固有魔法とあのテストの結果を見れば改めてお前の凄さを実感するな。」


空には、『夜明けの光』のメンバーなので結人の3つの固有魔法の内容を知っている。

藁科家の存在はいい感じに濁したが、薄々気付いているだろう。


「空も元気そうだね。東京襲撃事件の時の話は聞いてるよ。」


「あれはたまたまだ。あんだけバケモノどもS級魔法師がたくさんいるんだから俺の出番は無いと思ったが・・・この前の時とは比べ物にならないぐらい多かったな。」


「うん・・・今の所襲撃の知らせは入っていないけどいつ起こるか分からないし・・・」


「作為的な物を感じるな。これが地球人の仕業ならまだ話は早いが宇宙人だったり異世界人だったりすると大変だよな。」


その話は既にジルトレアの上層部でも出ていた。だが、何しろ研究材料が少なすぎる。せめてUCから何らかの情報が得られれば何か進展があるかもしれないが、今のところ生態系などは分かっていない。

UCにも遺伝子らしきものはあるが、そのどれも地球産の動物や植物とは全く違う。

また、動物で言うところの心臓の部分である『核』も体内にある魔力を活動力に変える機能と体内で魔力を生産する機能のみ。

ハッキリ言って分からない事だらけだ。



「今は考えても分からないよ。それに僕達よりもずっと頭のいい人達があれだけ頑張っているんだ、僕達が考える必要は無いと思うよ。それじゃあ話題を変えてー今回のイベントで1つ、空にお題を出す。」


「お題?」


「うん、今回のイベントで1人以上A級魔法師を倒すこと。報酬としてA級魔法師への推薦と空専用の武器を作ってあげるよ。」


「いいのか?」


結人の提案に驚きの声をあげる空。

結人は魔法具を作るのも1級である。そのため、多くの魔法師が結人に武器の製作を依頼していた。だが、その全てを受けてしまうと企業の出番を奪ってしまうので作ってあげたのは結人の身近な人のみ。

その結果、黒白に武器を作ってもらう=トップチームの仲間入り、のような風潮が生まれていた。


「うん。分かっていると思うけど、3ヶ月後には『第3次奪還作戦』が待っている。当然、日本の最強部隊である『夜明けの光』にも出撃命令が来る。でも、僕と咲夜はおそらく別の部隊にいるだからあの艦を守れるのは空たち4人だけだ。」



空は『第3次奪還作戦』という言葉に強く動揺する。

当然話は聞いていた。もちろん、自分が参加する事も・・・


「ツクヨミとメンバーのみんなを任せたよ。」


「分かった・・・」


「さて、それじゃあ今日のレッスンだ。今日もいつも通り僕が相手をするけど、少しキツめにするから。固有魔法もフィールドを気にせずバンバン使ってね。」


「分かった、それじゃあ行くぞ!」



空は、いつもより数段鋭くなった鎖を呼び出すと、攻撃を仕掛けた。


『第3次奪還作戦』がどうなるか、正直分からない。

でも・・・せめて仲間の命だけは、何としても守る。

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