#17 始まる学校③
「藁科結人の双子の妹、藁科美月です。よろしくお願いします」
多くの生徒が注目する中、美月は確かにこう言った。
全員の目線がこちらに向けられる。そして、美月と自分を交互に見た。
「似ている・・・」っと、誰かが言った。それに続くように色々なところから美月を迎える声があがった。
「盛り上がっているところ悪いが、もうひとつ発表しなければならない事があるから後にしてくれ。藁科は、どこでも空いているところに好きなように座ってくれ。」
「はい。」
美月は、優しい声で返事をすると手提げのバックを片手に結人の隣の席に座った。
「ただいま、お兄ちゃん。」
「うん、おかえり、美月。だいぶ魔力が綺麗になったね。」
結人と咲夜がテストを受けていた2日間、美月は1人で学校に溶け込む練習をしていた。
『龍の力』を得た美月は現在、咲夜の魔力量に匹敵している。
近いうちに現在序列2位であるゼラスト=メネルトーレを超えるだろう。
「はい、お兄ちゃんに教えてもらった方法を試したら上手くできました。」
「良かった。」
「む〜〜」
右側を向いてむ美月と話していると、反対側に座るお方から不満の声が聞こえる。慌てて振り返ると、そこには不満そうな顔をした天使が・・・
めっちゃ可愛い・・・
無言の圧力がすごい。
そんな戦いが起こっていた事をスルーして、立川は続ける。
「さて、もう知っていると思うが、来週に本校生徒会によるイベントが行われる。これももちろん知っていると思うが、このイベントは影から色々な人に見られている。軍関係者はもちろんのこと、企業関係者や研究機関だって来る。これで活躍する事が、今後どのように影響するかしっかりと考えた上でイベントにのぞんで欲しい。あぁそれと、今年は例年とは違い、朝日奈さんがおこしになるそうだ、くれぐれも失礼のないように。」
『朝日奈』という名前を聞いて、空気が変わった。
日本防衛軍のトップにして日本の魔法社会の指揮を執っている人物だ。何かあったら一大事だ。
朝日奈は、今では国、ひいては世界を動かす人物である。まさしく、雲の上の人間だ。
「それじゃあこのイベントの大切さが分かったところでルールの説明をさせて貰おう。」
生徒会主催ー恒例イベントーMTF
範囲ー屋内を除く東京校敷地内全て(上空1000mまで)
参加資格ー1年生~3年生の夏テストにおける赤点回避者
ルール1
参加者は、それぞれテストの点数と同じポイントが与えられる。
敗北を認めるか、気絶するか、安全装置が壊れた場合、壊れた参加者は失格となり、戦闘に参加した人に貢献度に応じて山分けされる。
ルール2
制限時間は3時間で、殺傷レベルの高い魔法以外であれば、どの魔法の行使も認められる。
ルール3
固有魔法の使用は、日本防衛軍及びジルトレアに認められている場合のみ許可する。
ルール4
残り1時間になったらA級以上の魔法師が全参加者の敵として出現する。このA級以上の魔法師を脱落させた場合、10000ポイントが与えられる。
「と、こんなところだ。今日転校してきた藁科妹についてはクラス平均点とする。質問がある者はいるか?」
説明を終えた先生が、周りを見渡す。
ただ1人、大和だけが手を挙げる。
「敵として登場するA級魔法師の情報を教えて下さい。」
「いい質問だ。だが、人数も内容も教えられない。ただし、登場する魔法師にも差はある。自分が勝てそうなやつを選んで戦ってくれ。」
「ポイントなどはどうやって確認しますか?」
「あぁ言い忘れてたな、当日携帯端末が参加者全員に配られる。端末を使えば、現在の順位、現在のランキング上位者20名、敵として登場する魔法師の位置が表示される。ああそれと、報酬についても知らせておこう。」
ルール5
専用の端末を使うことで、現在の自分の順位、現在のランキング上位者20名の名前及び保有ポイント、敵として登場する魔法師の位置が分かる。
ただし、自分から5m以上離れた場合失格となる。
ルール6
上位20名に入賞した場合C級魔法師としての資格と部費10万円と賞金200万円を得る。
上位3名に及び敵として登場する魔法師を単独で脱落させた場合B級魔法師としての資格と部費100万円と賞金1000万円を得る。
優勝に上記の報酬及び参加企業の逆指名権を得る
「全員分かっていると思うが、今言ったのはあくまで副賞だ。メインとなる報酬は、企業と研究機関の方にある。私もスペード社と契約しているが、それもこのイベントからだ。S級魔法師の半分以上が契約している『銀の船』が来るかどうかはしならないがそれぞれ気合いを入れるように、私からは以上だ。」
つい先日、美月ー『白銀』が『銀の船』と契約した。
まぁ娘の夫の妹を拒むような人はいないわけだが・・・
「さて、授業を始める。今日の授業は、テストの解説だ。」
*
授業が終わった放課後、美月は提出しなければならない資料が山ほどあるらしく別々に帰る事になった。
特に予定が無かった結人は咲夜と一緒にまっすぐ自室に帰ろうと思ったのだが・・・
学校と寮の間で、見た事のない人物に捕まってしまった。
「ねぇ、あなたが噂の藁科結人君?それと嘉神咲夜ちゃん?」
「ふん・・・」
声を発した人物は、背は女性にしては高めで黒い髪を長く伸ばし、黄色い瞳でじっと結人の顔を見つめていた。
隣に立つ男は、黒い髪に、素直に感心するレベルで筋肉ムキムキで制服がはだけそうな様子だった。
魔力を感じ取ってみるが、やはりどこかで会った覚えはない。だが、以前から感じてはいた。おそらく上級生の誰かだろう。
「えっと〜多分そうですけど・・・」
「そう、あなたなのね。おじい様が言っていたのは。」
「おじい様?」
「えぇ、っとまだ自己紹介まだだったわね。私の名前は
「っ!・・・それで、何かようですか?」
言われて見れば確かに面影がある。というかあの人、誰にも言わないって言っていたのに娘には教えていたのかよ。
後で文句を言っておこう。
「単刀直入に言うわ。生徒会に入ってちょうだい。」
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