#16 始まる学校②
テストは2日間に渡って行われた。一日目は『国語』『社会』『英語』が100分ずつ3教科行われ、二日目は『数学』『理科』『現代魔法』がそれぞれ120分ずつ行われた。
テストは各教科100点満点で、『現代魔法』の200点満点。
テストの内容の大半は、授業でやった事のある内容だったので思ったよりサクサク進んだ。
途中、樹が死んだ魚のような目をしていたのは気のせいだろう。
二日間のテストを乗り切り、結人と咲夜は仲良く並んで登校した。
教室に入ると、多くの生徒が疲れてテーブルの上でぐったりとしていた。
【皆さんずいぶんとお疲れのご様子ですね。】
【そうみたいだね。まぁその気持ちは分かるよ。僕も今日と昨日はすぐに寝ちゃったし・・・】
【ふふふ、この二日間休んでいた分今日は楽しみましょうね。】
咲夜は笑顔でそう言った。何の事だかさっぱり分からないが、顔が赤くなる。もしも声に出して会話をしていたら大騒ぎになっていただろう。
改めてこの通信魔法の素晴らしさを感じる。
そんな事を考えていると、解答用紙を抱えた先生がやって来た。そして壁の向こう側には自分とほぼ同じ魔力を持った少女がいた。
それと少し離れたところに姉さんの魔力も感じる。おそらく校長室に必要な書類を提出しているのだろう。
「お疲れ様、諸君。やはり皆少し疲れた顔をしているな。気持ちは分からんでもないがテスト返却を行う。ちなみにこれは昨日先生達が徹夜で頑張ったものだ、採点ミスがあるかもしれないから見つけたら言ってくれ。それじゃあ返すぞ。」
先生がそう言うと教卓の上に置かれていた解答用紙の山がそれぞれひとりでに宙に浮き、それぞれの手元に飛んでいった。
簡単な重力魔法の応用だが、練度が高い。
流石、A級魔法師といったところだろうか。
おそらく樹には無理だ。
受け取った点数の一覧が載った紙を広げる。
藁科結人
国語 95点
社会 98点
英語 100点
数学 100点
理科 100点
現代魔法 200点
合計693点
この忙しい日々の中、これだけの高得点を取れたのだ、満足すべきだろう。
「どうでしたか?結人さん」
「僕としては良く出来た方だと思うよ。咲夜は・・・」
咲夜のプリントを横から覗き見る。
嘉神咲夜
693点
「え?」
あの完璧超人の事だから絶対に満点だと思ったのに・・・
どうしたんだろう・・・
「おや?693点ですか?偶然ですね、私と同じ点数です!」
「・・・本当に偶然だね。ところでどこを間違えたの?」
「国語で-5点、社会で-2点です・・・」
「へ、へ〜」
今の発言で確信した。何か言えないが、おそらくそういう事だろう。
「どうだったか?諸君。全員、思ったよりも高く無かっただろう。うちの学校のテストは全体的にトップクラスに難しいからな。まぁその代わりに大きなテストは年に2回しかない。ちなみに学年平均は343点数、クラス平均は547点だ。」
立川は、そう言った。
誰かがホッと一息ついた。平均点が思ったよりも低くて安心したのだろう。このAクラスの生徒は関東に住む魔法師のエリート候補ばかりである。
どこかの社長の息子、娘なんて普通にいるし、なんなら序列一位もいたりする。
「次はお待ちかねの順位発表だ。上位50人しか載らないから覚悟しておけよ。」
立川は、手元のタブレットを操作して正面の巨大な画面に成績上位者50人の名前をズラリと並ばせる。
結人の名前は、その1番上に書かれていた。もちろんその下には、同率で咲夜の名前もある。
第1位 藁科結人693
第1位 嘉神咲夜693
第3位 有瀬聖奈651
第4位 水篠大和642
・・・
第15位 和良楢桃596
・・・
第50位 仙洞田樹538
「嘘!693点?!無理でしょそんな点数・・・」
「私も・・・最後の方意味わかんなかったし・・・」
「点数すら一緒とかどんだけだよ。」
多くの生徒が僕と咲夜の点数に注目していた。
当初の予定では、平均点あたりを狙ってとる予定だったが、茜の許可を得たので今日は全力でやった。
1番驚いたのは、樹の点数だ。入学当初は、間違いなく学年の平均すら超えていなかったのに、今回はトップ50入りしている。おそらく、猛勉強したのだろう。もしくは、良い先生を得たのだろう。
「見ての通り、今回のテストは藁科夫婦が1位だ、おめでとう。それにしても驚いたよ、まさかテストの点数すら一緒だとはな、本当に仲がいいんだな、お前らは。素直に感心するよ、この記録は歴代最高得点だ。」
「「あ、ありがとうございます。」」
結人と咲夜はハモりながらそう答えた。
「それぞれしっかりと復習するように、それではお待ちかねの嬉しいお知らせの発表だ。突然の話だが、我がクラスに1人転校生を迎える事になった。」
「「「え!!!」」」
結人と咲夜を除く全てのクラスメイトが驚きの声をあげる。美月の事は、樹にすら伝えていない。今日が初めての顔合わせだ。
「喜べ、昨日会ったがめちゃくちゃ可愛いかったぞ。待たせてしまってすまない、入って来てくれ。」
「はい・・・」
聞き覚えのある声が聞こえる。そして、教室の前方にある扉が開いて予想通りの人物が入って来る。
思わず誰もが振り向く容姿に、結人と全く同じ魔力を持った少女。
美しい所作で教卓の前まで歩いて来ると優雅に頭を下げた。そして正面を向くと、ニコッと笑って自己紹介をした。
「金沢校から来た、そこにいる藁科結人の双子の妹の藁科美月です。どうぞよろしくお願いします。」
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