#15 始まる学校


9月1日

いつもよりも長く感じた夏休みが終わった。東京を襲撃から救ったり、宇宙旅行へ行ったりと普通の高校生では考えられないような日々だった。

もっとも、『ツクヨミ』に乗って敵UCを狩る毎日も普通の学生には考えられない行為だったが・・・

でも、1つ言える事は楽しく充実した毎日であった事だ。


「久しぶりにみんなと会うの楽しみだね、咲夜」


「そうですね、結局あれから1度も会っていませんからね。樹さんもあの時裏で活躍していたみたいですよ。」


「そうだったの?全然気が付かなかった・・・」


「ふふふ、珍しいですね、結人さん。どんな人間でも結人さんに気付かれずに半径2kmに接近するのは不可能じゃないですか。」


「それは買いかぶりだよ。何も無い海の上とかだったらできるかも知れないけど、街中で、それもみんなが思い思いに魔法を使っている状態じゃ流石に無理だよ・・・まぁ美月の魔力はとても強いから気づけたんだけどね。」


仮にスナイパーライフルなどで遠距離から攻撃したとしても結人を倒す事はできない。例え物体であっても近づく存在を感知して対処する事ができる。

仮に気付けなかったとしても結人を守る4重の魔力障壁が行く手を阻む。


「私も美月さんはすぐに気づきましたよ。結人さんそっくりな魔力だなって思ってついつい見てしまったんですよ。それでお顔を見て確信しました。」


「そんなに似てる?」


「はい、遺伝子を共有しているって素晴らしいですね。とても羨ましいです。」


銀の船ーーエリーナの話では、結人と美月の遺伝子は真人の遺伝子をベースに作られているそうだ。詳しい事はわからないが、その時奇跡的に龍の力が継承され、あの地獄のようなプログラムを難なくクリアできたのだ。


二人は手を繋ぎながら教室に入った。久しぶりに見た顔が多い。

教室の中は毎度の事ながらざわざわしていた。話題はもちろんーー


「おい!見たか、この前の!」

「あぁ直接は見てないがテレビで見たぞ。すごかったよなーまるで白い太陽ができたのかと思ったぜ。」

「確か、専門家の話だと固有魔法の第2段階だって話だよね。実際に映像として残ったのはこれが初めてらしいけど・・・」

「いやーすごかったよね!」


あの出来事の時、ジルトレア及び日本防衛軍関係者以外すべての都民に避難勧告が発令された。多くの人がその指示通り地下や魔力障壁を持つ建物の中に逃げ込んだ。

そんな中、避難勧告の発令から20分近く経過していたにもかかわらず、たまたま偶然逃げ遅れた人が、たまたま偶然ビデオカメラを持っていて、それで結人ーー黒白の固有魔法を撮影したのだ。

世界で初めて黒白の固有魔法と思われる魔法の撮影に成功したことでネット上では大盛り上がりだった。

日本防衛軍本部やジルトレアにも会見を求める声が殺到した。

結局、朝日奈さんが折れ、おととい『摩天楼』で会見が行われた。そこで発表されたのは2つ。あの魔法陣を吹き飛ばした魔法が黒白の固有魔法の第二段階である事と、『白銀』が加わった事によって第三次奪還作戦の配置の変更が決まった事だ。

ちなみに、日本防衛軍本部が、あの固有魔法の名称の発表を行わなかったため、『白き太陽』という名前がネット上で付けられた。


【早速話題になっていますね、結人さん。あの魔法は少しやりすぎだったんじゃないですか?】


【いいや、あの魔法を使わないと被害が拡大していたかもしれないしね。確かにやり過ぎ感は否めないけど後悔はしていないよ。】


いつも座っていた席に座りつつ、いつもの咲夜特製の通信魔法を使って会話する。この感じも一か月ぶりとは言え久しぶりだった。

すると、これまた久しぶりの人物が会話していたのが目に入る。

いや、いつもの4人に加えて一人多い。


「ちょっと結人君聞いてくれない、樹君が自分だけちょー可愛い彼女作っているんだけど。」


「結人はもう知っているぞ。この前自慢したからな。」


「いや、咲夜ちゃんがいるんだから自慢にはならないでしょ・・・じゃなくて!相手はあの聖奈さんだよ?『1年生三大美少女』の一人、『孤高の氷姫』だよ?まぁ今はその氷もだいぶ溶けているみたいだけど・・・」


「『1年生三大美少女』?『孤高の氷姫』?何なの?それ」


結人は当然首を傾げる。そんなもの、見た事も聞いた事もないからだ。確か部活名一覧にもそんなもの無かったはずだ。


「おい桃、盛り上がっているところ悪いが、俺の親友はそういうのの知識はゼロに等しいぞ。」


樹はやれやれといった顔をしながら言った。


「噓!本当に知らないの?!」


「あぁ、当たり前だ。こいつはおそらく『孤高の氷姫』どころか自分の恋人が『1年生三大美少女』に入っている事すら知らないぞ。」


「まぁ結人君はそういうの興味ないみたいだからね。」


大和の言葉に、雷華も納得といった表情で頷いた。

なんだかバカにされているような気がする。


「初めまして、結人君、咲夜さん。樹君の彼女の有瀬聖奈です。よろしくお願いします。」


「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします。」

「よろしくお願いします、聖奈さん。」


結人と咲夜はその場で軽く会釈した。


「あの・・・私たちってどこかで会話した事ありますか?」


「同じクラスなんだからあるんじゃないですか?」


心当たりならあるが、表情や声色を変えずに応える。


「わりと最近、学校の外で・・・」


「えっと~無いと思いますけど・・・」


「そうですか・・・」


本当はこの前のライブで顔を合わせるどころか共演していたなんて口が裂けても言えない。おそらく気づかれないだろう。

すると、まるで結人と咲夜を救うかのように教室の扉が開いた。


7人はいったん解散してそれぞれの席に戻った。


「久しぶりだな諸君。夏休みはどうだったかな?たくさん話したい事もあると思うが事前に告知していた通り、これよりテストを始める!終わった後には3つほど嬉しい知らせがあるので楽しみにしておけ。ではまず、一教科目の『国語』だ。」


「「「はい!」」」


______________________________________


大変長らくお待たせいたしました!

明後日はいつも通り投稿できるように頑張ります!



ちなみにですが、『夕焼けの光』は早速休んでます(笑)

ネタがないんですよ・・・


『始まる学校』では書けるように頑張ります。

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