#13 これからの事②
「今日は久しぶりにイチゴのショートケーキを作ってみました。やはり、自分で作ったものを食べてもらいたかったので・・・」
咲夜はそう言って冷蔵庫からケーキを取り出した。ただしーホールで・・・
結人も思わず苦笑いしてしまう。
「えっと~咲夜?これ全部食べるの?」
「もちろんです!結人さんのために一生懸命作りました!」
「夕ご飯食べたばかりなんだけど・・・」
「た、たしかに言われてみれば2人で食べるには少し多すぎる気がしますね・・・」
咲夜も我に返ったようで・・・えへへと笑った。
普段はこんなミスをしないが、どうやら記念日ということでパニックになっていたようだ。
いくら結人が人類最強の魔法師だとしてもふたりだけでこの量のケーキを食べきる事は難しい。
「じゃあとりあえず樹でも呼ぶ?」
「いえ、大丈夫です。今日は結人さんとずっと二人きりでいたいので・・・誰にも邪魔されたくさいので・・・」
「うん、わかったよ、咲夜。全部は無理だけど、頑張って食べるよ。」
その後も楽しい会話をはさみながら、二人きりの婚約6周年記念パーティーが行われた。咲夜は今日の午前中、美月と行動していたためあまり会えなかった事に不満を持っていたらしく、いつもよりもだいぶ当たりが強かった。
気持ちが昂ればそれを相手に伝え、行動に移す。
時間はあっという間に過ぎていった。
結人の前では『かまってちゃん』になる咲夜はとても幸せそうな顔をしていた。
この笑顔を、いつまでも守っていたい・・・
ちなみにケーキは半分ぐらい食べた・・・
頑張った・・・
*
2049年8月27日
『世界魔法祭』が終わったはずの今日も、東京は人でいっぱいだった。その理由は簡単、今日はジルトレアの発足日である。45年前の今日、人類は共通の敵を前にして初めて一つになったのだ。
そんな8月27日が『世界魔法祭』に次いで注目される理由はただ一つ、魔法師の序列が発表されるのだ。
また、急な場合を除いてこの日に新たなS級魔法師やA級魔法師が誕生する。ちなみに、S級魔法師には先に結果を教えてもらっている。
世界各地で誰がどの順位になるかとか誰が昇格するとかの話題が持ち上がっている。
中にはそれを予想して賭けを楽しんでいる人もいる。
ちなみに結人ー『黒白』の序列一位に対する倍率は0.0001%らしい・・・
そんなわけで今日は一種のお祭り騒ぎになっていた。
結人と咲夜はというと舞台裏でこれから一気に有名になるであろう人物の緊張を全力で解いていた。
「やだ~~~!!!私も挨拶するとか聞いてないんだけど!!!」
わめく美月。
幸い、この部屋には3人しかおらず、他の人に迷惑が及ぶわけではない。だが、本番を1時間後に備えた人の発言じゃない。
「仕方ないでしょ?美月。この国の人はまだ美月の存在を知らないんだからさ~」
「そうですね。当然、いろいろな方向から疑問の声が上がると思いますよ。」
美月は災害級UC討伐の功績により、正式にS級魔法師となることが決まった。だが今のところ、美月の実績はそれだけである。当然、ある程度の反発や疑問の声が上がるのは間違いないだろう。
そのため、美月本人が舞台に出る事が求められる。
「だとしてもだよ、世界中の人の前でお兄ちゃんの妹ですって言うのはさすがに厳しいんだけど!絶対に注目されるじゃん・・・」
朝日奈が考えた全世界の人をいっぺんに黙らせる方法は、新たなS級魔法師が最強の妹である事を公開する事だった。当然、第一段階を解放してもらい、髪の毛の色も結人と同じ白にしている。また、例の狐の面も装着してもらう。
変声器など使うことも考えたが、顔を隠し髪色を変えとけば案外バレないものだ。(体験談)
緊張を解く、緊張する・・・を繰り返しているうちについにその時がやってきた。
『今年は、新たなS級魔法師が1名が登場します。日本防衛軍所属ー白銀です。』
マイクを持ったセランがそう言った。おそらく世界中の人々が『誰?』と、思っただろう。
すると、セランが指した方の扉が開き、一人の女性が入ってきた。
肩まで届く美しい白銀の髪に、あの黒白と同じ狐の面。
画面越しでも強いオーラを感じる。
セランからマイクを受け取ると、「こんにちは、と言った。」
セランはポケットから二本目のマイクを取り出すと、口に近づけた。
「これを見ている皆さんも困惑しているだろう。実際、私も初めて会ったのは数日前だ。だがこれだけは言わせてもらおう、彼女はホンモノだ。S級魔法師として認められるに値する。」
セランは真面目な顔でそう言った。本当に、美月がセランと会ったのは3日前だ。
「何故彼女がS級魔法師として認められているか、理由は大きく分けて二つある。1つ目は、彼女が時間魔法の使い手だからだ。時間魔法において彼女の右に出るものはいない。それは例え、相手があの黒白だったとしてもだ。そして二つ目は、彼女が黒白の双子の妹だからだ。これは、黒白にも確認はとってある。」
観客は皆、黙り込んだ。そして、理解する。
彼女がホンモノであると・・・
「精一杯頑張るのでよろしくお願いします。」
美月はそう言って頭を下げた。
これが、後の『白銀の姫』の誕生の瞬間だった。
後の歴史家はこう語る。
「神は人類に味方しているようだ。この激動の時代に、二人も超人を生み出すなんて・・・」
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