#10 希望の覚醒③
気が付くと、僕は上も下も無い真っ白い空間にいた。
意味もなく浮遊していた。
ただただ何も無い空間。
否・・・何かが僕の周りに浮かんでいた。
「これは・・・」
浮かんでいたものは何かの破片のようなもので見覚えのないものだった。しばらく考えるが何も思い出せない。何故僕がここにいるのかすらわからなかった。
「ここはどこなんだろう・・・」
辺りを見回してみるが、あるのは例の破片と同じようなものがあちこちに浮かんでいるだけ。
「魔力が無い?」
移動系の魔法を使おう試みるが、体外はおろか体内にすら微塵も魔力を感じない。
どうしようかと考えていると『何かが』背中にぶつかった。
振り返るとそれは僕の一番大切な人だった。
「美月!」
呼びかけてみるが、返事はない。僕は嫌な予感がして美月の左胸に手を押し当てた。
「動いていない・・・」
心音が聞こえない・・・もちろん、息もしていない。
その瞬間、全てを思い出した。
「僕のせいだ・・・僕が何も考えずに魔法を使ったから・・・」
心に大きな穴ができた。
どうしよもない『死』という現実を突き付けられた。
6年間と少し、ずっと一緒にいた存在・・・
一人というのがこれほどまでにつらいとは・・・
ここがどこなのか、これからどうするかなどを考える余裕など無くなった。
自然と涙が出てきた。
すると・・・・・・どこからか聞き覚えのない声が聞こえた。
【いつまで泣いてるの?結人】
「え?・・・」
凛とした声が聞こえた。周りを見回してみるが何も見当たらない。
【探しても見つからないわ。あなたには『まだ』私を見ることができないもの。】
「どういうことですか?」
【私の事はいいのよ。それよりいいの?ここ、『人間のあなた』には危ないところよ。】
「ここがどこだかわかるの?」
【えぇ、ここは次元の狭間よ。まったく、こんなところに人間がいるってだけで呆れる話だっていうのにまさか、会話ができるなんてね。さすが、私のパートナーだわ。】
「次元の狭間?パートナー?」
まるで何もかも見透かしたような・・・そんな様子だった。
【今は話しても仕方のないことよ、それよりもここから脱出したいんじゃないの?】
「そんなことより美月を!美月を生き返らせてくれませんか?」
そんな事できるはずが無いとわかっているが、頼まずにはいられなかった。
【無理ね。】
「やっぱり・・・」
【いや、そういうことじゃないわ。彼女、まだ生きているわよ。どこでもいいから彼女に触れてみな。】
結人は、言われた通りに美月の手を握る。すると、いつもと変わらない感触があった。
これは・・・温かい?
死んだはずの美月は温かかった。つまり・・・美月は・・・
【彼女、まだ生きているわ。まあ彼女はあなたと違って形を保持するだけでやっとみたいだけど・・・まぁ安心しな、あの子のパートナーに選ばれるんだものこんな所で死ぬはずがないわ。】
「よかった・・・」
心のそこから安堵する。
【気が済んだなら元の世界に戻りましょ。あなたにはまだ戻る方法がわからないと思うから私が助けてあげるわ。】
「えっと~それで、どうして助けてくれるの?」
【さっきも話したでしょ?あんたが私のパートナーだからよ。それにしても私にパートナーができるとわね・・・人生、何が起きるかわからないわね。】
そんな事をしみじみと言った。どこか遠くをみつめているような。
結人には、パートナーというものが何を指しているのかわからなかった。
だが、形も見ない彼女を何となく自分と近い存在のように感じた。
「とりあえずお願いします!」
【じゃあ行くわよ、<空間転移>】
彼女がそうつぶやくと結人の周りに光の輪っかが生まれた。
だが、その光は結人のみを囲んだ。
「ちょっと待って下さい!美月も一緒に行けないんですか?!」
【私の力を使えばできないことはないわ。でも私はそれをしない。でも安心しなさい、彼女には私とは別の龍がついているから無事にあなたの世界に戻れるわ。】
「そうですか。」
どこにも根拠はなかった。
どこにも保証はなかった。たが、僕は何故がそれを信じ彼女に身を委ねた。
【それじゃあまた後で会いましょ。会話はできないかもしれないけど、私を大切にしてね。】
そう言い残すとあたりが真っ黒になった。
そして、気づいた時には僕は元いたところにいた。つまり、上空。僕は急いで真っ白の魔力障壁を展開し、穴の空いた地面に着地した。
古村研究所ー僕たちの部屋があった所は跡形もなく消え、地面には巨大な穴が空いていた。おそらく僕が開けたものだろう。
周りには真っ赤な服を着た人たちが数名いた。
「おい、君!今どこからやってきたんだ?」
「今何もない所から出て来なかったか?」
「それに、この魔力量はなんだ!俺より多い・・・」
「えっとー」
僕は大勢の大人に囲まれてあたふたしていた。
どう説明しようかと考える。すると、一人の結構たくさんの魔力を持った人がやってきた。
「お前ら、ここは俺に任せて他を当たれ。」
「「「了解!」」」
すると、周りを囲んでいた大人たちは一目散に散っていった。
「さてと、大丈夫か?名前は?」
「あ、はい。大丈夫です。名前は結人です。」
「お前が結人君か・・・報告と髪の色が違うのはどうしてだ?」
「髪の色ですか?僕は生まれた時からずっと黒ですが・・・」
「何を言っているんだよ。」
そう、困惑を浮かべると水魔法を使い、空中に水の塊をつくった。
それを見て僕は言葉を失った。自分の髪の毛の色が、変わっている・・・
「そんな!どうして・・・」
「おそらくだが、お前の魔力に当てられたんだろうな。なんか強力な魔法でも使ったのか?」
「はい、おそらくですが、固有魔法を使いました。それで・・・」
「なるほどな、大方理解した。とりあえずお前には伝えなきゃいけない事がたくさんある。一旦ついて来い。」
そう言って男は右手を差し出した。
この時、真人はこの先の事に考えが回っていなかった。歴代最強と呼ばれた真人だったがこうなるとは思わなかった。
嘉神咲夜との出会いも運命のいたずらとしか思えない出会いであったが、結人の未来を一番最初に大きく変更したのは間違いなく藁科真人との出会いだろう。
この出会いが人類最後の希望に覚醒を与えた。
「はい。」
結人は何も知らず、彼の手を握った。
その瞬間、結人はとてつもない魔力に覆われた。そして光の柱を作り出した。
『龍の力』の起動因子
それが、受け渡された。
古参家が一つ・・・藁科家のみが持つ精霊では無く龍によって与えられた魔力回路。
精霊魔法を一切使えなくなる代わりに圧倒的な量の魔力と人間離れした魔力操作技術を持つ。
光の柱が途絶えるとそこには一人の少年が立っていた。彼の周りには5本の剣が宙を舞っていた。それぞれはまるで少年を守るかのように回転すると、その内の一本が、少年の前で止まった。
少年の背中からは龍を思わせる白銀の翼が生えていた。
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いや終わり方雑すぎでしょ
って思った方も多いと思いますがこれには理由があるのです。
話を書いていたら妙に長くなってしまって私の掲げる1話当たり3500以内という目標に違反してしまうなと思ったので(いつ作ったんだよ)急遽これで終わるはずの過去編が延期されました。
さて、もう一つお知らせがあります。この話を書き終わってふと矛盾が生じていないかどうかもう一度読み返してみました。
すると気が付いたのです、あれ?第二章で書かれていた話と違くね?と・・・
そしてもう一つ気付きました、あれ?誤字多くね?と・・・
私は何も考えずに㍶の電源を切りました。
こんなんですがこれからもどうぞよろしくお願いいたします。
追伸
気が向いたら直します!
多分
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