#8 希望の覚醒

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これからも頑張ります!

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「ん・・・?ここは・・・」


あたりは真っ暗でよく見えない。起き上がろうと試みたが、思うように身体が動かない。

手足を何らかの方法で拘束されているようで、全く動けない。


「あれ?私、何してたんだっけ・・・。たしか、結人と美月に会いに行こうとしてそれで・・・はっ!そうだ!神代さんに会ったんだった!それで遺伝子組み換えの話を聞いて逃げようとして・・・捕まったんだ・・・」


どうやら何かに座らされているようだった。


「光よ。我が望みを聞き給え、光魔法<ライト>」


真っ暗でよく見えなかったので魔法で室内を明るくする。

どこかはわからないが


正面にあるガラスの向こう側に見えるのは、普段結人と美月が使う魔法の練習場だった。部屋の側面には何重にも結界が張り巡らされており、傷一つない。ところどころにみられる監視カメラや魔力感知は2人の魔力のデータを集めるためのものだ。このふたりのおかげでいったい何年分の現代魔法学の研究が進んだことか・・・下手したら10年以上かもしれない。

しばらく眺めている、後ろのドアが開いた。


「やぁ、気分はいかがかな?本条君」


それは、何度も聞いたことのある声だった。私は、無視をすることにする。


「無視ですか・・・神代さんがどうなったか知りたいですか?」


「・・・」


「彼女にはいい実験材料にさせて頂きました。」


古村は笑いながらそんな事を言った。私はそれでも黙っていた。


「今のこの現状は、ほとんどあなたの想像通りですよ。ですが、一点だけ、違う点があります。私たちは色々な可能性を検証しましたが、どうしてもあの二人が誕生した原因がわかりませんでした・・・全く同じ遺伝子を与えても、成功体結人と美月には遠く及びませんでした。なんと『ファーストプログラム』すら突破出来ませんでした。ちなみにですが、二人は大変珍しい準一卵性双生児なんですけどご存知ですか?」


「え?」


「おや?返事がありましたね、まぁいいでしょう。あなたも知っての通り、双生児には一卵性と二卵性があります。そして、男女で生まれる場合は遺伝子の関係上どうしても二卵性である必要があります。ですがあの二人は未だ解明できていない準一卵性双生児なんですよ。私もそれを知った時はおおいに驚きました。ですが・・・どう頑張ってもクローンを作ることはできなかったんですよ。」


「人間の遺伝子組み換えは禁止されているはずです!」


「これも人類発展のためですよ。さて、今からとても興味深い実験をします。特等席をご用意したのでよく見ていてくださいね。」


「私はどうなっても構いません、どうかあの二人だけは・・・」


「安心したまえ、私もこれほど素晴らしい研究材料を手放したりせんよ。」


そういうと、古村は部屋を出ていった。


しばらく眺めていると、この訓練所唯一の出入口である扉が開いた。

そして、手に手錠をはめた結人と美月が入ってきた。


「結人!美月!」


私は大声で2人の名前を叫んだが、二人にはまったく気付いた様子はない。どうやらこのガラスには魔力を遮断する結界魔法が組み込まれているようで、2人の魔力すら感じることができなかった。

私は喉が枯れるほど泣き叫んだ。





「お兄ちゃん、いい子いい子してくれない?」


「うん、いいよ。」


今日は8月22日ー月曜日、一週間に一度のママが来てくれない日だ。

この日は魔法の練習をしちゃダメと言わているので、こうしてお兄ちゃんに甘えたり本を読んだりして一日を過ごす。私が本を地面に置き、お兄ちゃんにぎゅっと抱きつくとお兄ちゃんは私の頭をやさしく撫でてくれた。

こうしていると本当に安心する。

今の私の夢はただ一つ、お兄ちゃんと結婚する事、ママが言うには兄妹で結婚することはできないそうだが、関係ない。

愛の力に不可能は無いと信じている。

今日もそんなことを夢見ながら一日が終わるのかな~と考えていたら、いきなりホールの扉が開いた。


そして、サングラスをかけた男が数人入ってきた。手には拳銃を持っており、私は恐怖のあまりお兄ちゃんにしがみついた。

すると遅れていつものおじさんが入ってきた。


「やぁご機嫌はいかがかね?お二人さん。」


「「・・・」」


なんとなくだが嫌な予感がし、私とお兄ちゃんは黙ったままでいた。


「まぁまぁそう怖い顔をしないでくださいな。本日はあるご報告をさせていただきに参りました。」


古村はそう優しい口調で言った。だが、古村の目はまるで実験動物を見るかのようだった。その実験動物が誰であるかなどすぐに察した。

私は、全身で恐怖を感じ取るとお兄ちゃんにしがみついた。


「何の報告ですか?」


お兄ちゃんは声を震わせながら聞いた。


結人と美月は自分たちがS級魔法師に匹敵するほどの魔力を保有している事など知る由もなかった。

ましてや自分たちの方が強い事なんて考えもしなかった。


だがそれは、古村も同様だった。

そもそも魔力回路を持っていないのだから二人がどれほど恐ろしい存在であるかなどデータの上では知っていても、自分で実感する事はなかった。自分の後ろに控えるマシンガンを持った男の方が強いと本気で思っていた。


詠唱が必要だったり、魔力がすぐに無くなったりと、当時のS級魔法師は現代のA級に匹敵した。しかも初代序列一位であるキリア=メスタニアを超える存在がたったの一人しかいなかった。

それは、当時人類最強として名を馳せたゼラスト=メネルトーレのみだった。


古村は強気の口調で言った。


「非常に残念な報告です。ひとまずそこから出て、手にこれをはめて下さい。」


「は、はい・・・」


結人と美月が部屋の外に出ると古村の隣に立っていた男が二人に手錠をはめた。

それは、特注品で古村の持つスイッチを押すと遠隔操作で二人に睡眠薬が注入される手錠だった。


結人と美月は、寄り添いながらついていった。

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