#6 希望の誕生③

『サードプログラム』突入から、およそ3年半の月日が流れた。

結人と美月はそれぞれ『フォースプログラム』『フィフスプログラム』を突破し、『シックスプログラム』に突入した。

魔法の方もどんどん上達していき、大人顔負けの魔力量と魔力操作技術。

私から教えることは何もなくなり、二人は自分たちだけで腕を磨いていった。さらに二人は、それぞれのオリジナル魔法も開発していった。

さらっと言っているが、これはとんでもないことで、同年代の子たちはやっと魔力を実感する程度だろう。

一流の魔法師ですらやっとの思いで開発する魔法をいくつも開発した。


魔法師の努力の結晶とも言われている『固有魔法』は未だ発現してはいないものの、その力はA級魔法師に匹敵するほどだった。


私だけの子であった二人は実験材料として多くの実験に貢献した。


そんな、ある日の事だった・・・

ある一人の女性研究員が、自身の研究所である『銀の船』でとんでもないものを発明した。


それは、『魔力適正値』


未知の部分が多かった現代魔法学に革命を与える発明だった。

詳しいシステムは知らないが、人は生まれながらにして『特殊魔法』と呼ばれる空間魔法、精神魔法、重力魔法、精霊魔法、波動魔法(時間魔法はまだ発見されていない)に対する適正値というものが決まっていて、自身の魔力回路と特殊魔法との相性を知る事ができるというものだった。

多くの魔法師がそれに注目し、新たなS級魔法師誕生か?というニュースが流れた。


また、実際に彼女かS級魔法師として認定されるのは、数年後の事である。


そして、もちろんこの男も深い興味をいだいた。


「本条君、少しいいかね。」


「はい、何でございましょうか。」


「たしか、結人君と美月君だったな。二人の様子はどうだ?」


「はい、ふたりとも元気ですよ。」


そう答えると古村はニヤっと笑って言った。


「実にけっこう。ところで君も例の魔力適正値の話は聞いているだろう?」


「はい、嘉神エリーナ氏の発明ですよね。」


「あぁ、それだ。うちも何とか手に入れたいと手を挙げたところ、何とか2つだけ確保する事ができた。あの二人に使ってみようと思うのだが、どうだろう。」


「後遺症とかは大丈夫なのでしょうか・・・」


「ははは、あの『銀の船』の製品だぞ?そんなものあるわけ無いだろ。」


『銀の船』の製品は値ははるが、質が良い事で有名だった。おそらく大丈夫だとは思うが、心配ではあった。

だが、これがまたしても運命を分ける事となる・・・

この時の私は、知る由もなかった。


結人と美月からそれぞれ50mlずつ血液が採られ、その日のうちに『銀の船』へと送られた。


そして1週間後、送られてきた結果に誰もが唸り声をあげた。

どの結果も凄まじいものだったが、その中でも特に注目されたのは、空間魔法と精霊魔法の適正値だった。


空間魔法適正ーerror(5.0以上)

精霊魔法適正ー0.00(検出されず)


当時の技術レベルを上回る空間魔法に対する高い適正。

そして、最低でも0.10はあるとされる精霊魔法適正が、0.00だった・・・


なぜ人間が突如として魔法を使えるようになったのか、この問題には既に答えがでている。

それは、精霊によるものとされている。

はるか昔、精霊と契約を交わし魔力回路を得た人間がいた。

彼はその力を使い、人々の生活が豊かになるように努めたが、ある日彼は悟った。

魔法という物理的法則を超越した存在は争いの火種にしかならないという事を。

そしてその力を封印し、人類に滅亡の危機が訪れた際に、再び力を貸してくれと。


これは、キリア=メスタニアが実際に精霊と会話をし、得た情報で多くの人がそう認識している。

そのため、どんな人間でも0.10だけ精霊魔法適正があるというのが『銀の船』の主張だった。


「どう思うかね?本条君。」


「なんとも言えません・・・」


「そうだな・・・かの英雄キリア=メスタニアが間違えたか、『銀の船』の主張が間違っているか、それともあの2人が魔法を使えるのは、別の超生物によるものか・・・だめだな。科学者である我々が、目の前の事象を未知の超生物のせいにしたらお終いだ。」


「真実がどうであれ、あの二人が私の子供である事にはかわりありません。」


「そうだな。私も別のルートから探ってみるよ。・・・それにしても空間魔法適正値error、精神魔法適正値5.00、重力魔法適正値5.00、精霊魔法適正値0.00、波動魔法5.00・・・我々はとんでもない超人を創り上げてしまったかもしれないな・・・」





「嘉神所長、この結果ですが・・・」


「5.00でも驚異的な数値なのに、空間魔法適正ー計測不能、精霊魔法適正ー0.00だなんて・・・本当に人間なの?」


「はい、99.99%ヒトゲノムでした・・・」


「それ、どこの研究所のデータなの?」


「古村研究所です。」


世界的にも注目され始めた研究所、『銀の船』の所長である嘉神エリーナは、渡された研究資料をみて啞然とした。

どんなに優秀な人材でも、3.00が大きな壁になっている中、ほぼすべての項目で測定可能なレベルにおける最大値である5.00をマークしたなんて信じられなかった。


「古村研究所ね。覚えておくわ。」


精霊魔法適正0.00ということは古参家の人間ね・・・でも、私の知っている人には全員渡したし・・・


もしかして・・・


「その人の血液ってまだ残っている?」


「えぇ少しだけなら・・・」


「ならすぐ私の部屋に回してちょうだい。」


「どうしてですか?」



「『アレ』をやっている可能性があるからよ。」



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