#29 時を司る者②
Day3
2日目を盛大に楽しんだ私達が眠りについたのは夜中の1時だった。ホテルについた時はクタクタで、交代で風呂に入った後の事を覚えていない。
今日買うはずだったグッズは全て樹君に貰ってしまったため、今日の朝はゆっくりとする事が出来た。
ホテルのレストランで食事をとり、再び戦場に出る。今日、日本防衛軍の本拠地、摩天楼で行われるのは『S級魔法師会議』国民やメディアが最も注目するイベントだ。
この『世界魔法祭』の1番の目玉と言っても過言では無い、まぁ私のような一般市民には関係のない話では、あるわけだが・・・
昨日の頑張りのおかげで今日は、大手ブースである『ライデン社』の整理券をゲットする事ができた。
倍率は詳しく知らないがおそらく100倍はあるだろう。
昼食を終えた私達はその会場となる体育館を訪れていた。
中には既に多くの人々がいて、私達は色々な装置を見物した。
どの装置も訳の分からないものばかり、私達にはとうてい理解出来ないほどの魔法式が組み込まれているのだろう。
「いや〜凄いね〜主に値段が・・・」
「そうですね・・・、私達も自分用の魔法具が欲しい所ですけど流石に手は出せないですね・・・」
戦闘用魔法具コーナーには、剣やナイフ、ハンドガンやスナイパーライフルなど、色々な物が展示されている。
ここに飾られている商品は購入可能で、毎年多くの人が購入している。
私もいつかは持てたらなーと、思うが値段が高過ぎて手が出せない。
「こうして入場できただけでも私は十分満足すでけどね。」
「そうだね、昨日樹君と会えたのは大きかったね。いや〜まじで感謝!」
「また今度何処で会ったらお礼しなきゃだな〜」
「次に会う事なんてないと思うけどなー。あ、そっか、交流試合とかで会うかもしれないのか。美月は無理かもしれないけど私ならなんとかなるかも!」
「さすが千恵ちゃんだね。」
「あんた、魔力量だけはたくさんあるんだから絶対強くなれるのに・・・」
「お恥ずかしながら、属性魔法は全然ダメなんです・・・」
私は、そんなに強くはないが、千恵は学年の中でもトップクラスに強い。
千恵は、魔力操作技術が高く、勝負強い。
しかも固有魔法を持っている。そのため日本防衛軍の育成機関にも所属しており、軍の大人達に訓練をつけて貰っているらしい。
そんな彼女は、学年中の女子の憧れの的だったりする。
一方の私は学年の中でも真ん中よりちょい下ぐらい。例え他校との練習試合が組まれても私は出られないだろう。
すると、ブースのスタッフと思われるお兄さんが大きな声を上げた。
「あのー!どなたか、魔力に自信がある方いらっしゃいませんか!少し協力して欲しいのですが!」
どうやら何かのトラブルが発生したみたいだった。
私は、千恵と顔を見合わせると小さく頷いた。
「「「はい!」」」
私達が手をあげるとそれに被せるように2人の聞いた事の無い声がら聞こえた。
「じゃ、じゃあ一旦こちらに来て頂けませんか?説明しますので!」
「わかりました〜」
「は〜い」
私たちは人混みをかき分けて前にでる。そして、テントの奥へ案内された。すると、先程同時に手を挙げたであろうカップルがいた。
「えっとー君たち学生さん?」
「はい、私たちは東京校の2年生です。」
「えっとー私たちは金沢校の1年生です・・・」
それぞれ挨拶をする。彼氏さんと思われる男性は、真っ黒の髪に赤い目を持つ青年で、彼女さんと思われる女性は紫色の髪の毛に黒い目をもつ少女。
またしてもカップルに遭遇してしまう。
「皆さんの中に級位を持っている方はいらっしゃいますか?」
「あ、私一応C級です・・・実戦はまだですが・・・」
千恵がゆっくりと手をあげる。
隣のカップルは手をあげる様子はない。
「ねえ空、あんた級位持っているんじゃないの?」
「あ、あぁ、俺もC級だな。」
彼女さんに急かされて、空と呼ばれた彼氏さんは慌てながら答えた。
私には、その言葉がどこか嘘っぽく聞こえた。
「いや〜本当に助かったよ・・・うちのスタッフのミスで実演の人が急に来れなくなっちゃって・・・君たちにはこの新型のハンドガン『R8-ヘル・シャーク』の実演をしてもらうよ。」
「は、はぁ・・・」
スタッフのお兄さんから、青色のラインの入った黒いハンドガンを受け取る。
側面には『ライデン社』のマークが入っており、近未来感の溢れるデザインになっている。重量は思ったよりも軽く、腰に付けておいても違和感のあまり感じないものだ。
使い方の説明を聞き、目の前に置いてある威力値測定器に銃口を向ける。
セーフティを外し、私は魔力を少し込めながら軽く引き金を引いた。魔法式は既にこのハンドガン本体に刻まれており、私たちに求められるのはその魔法陣を制御して放つだけ。簡単に聞こえるが、結構難しい。
放たれた光の弾丸はものすごい速さで的の中心にぶつかると静かに消えた。
撃った感覚は良好、非常に撃ちやすくブレも少ない。
「お、綺麗に撃つね。さすが育成学校の生徒さんだね、大した魔力操作技術だ!」
隣では、千恵と彼氏さんが自分で展開した魔力障壁に向かって連射していた。
千恵の技量の高さは元々知っていたが、彼の技量も凄まじいものだった。魔力の制御が尋常じゃない。もしかしたら名の通った魔法師なのかも知れない・・・
ちなみに彼女さんの方は、あまり得意では無いらしく、後ろで見ているだけだった。
話し合いの結果、4人の中から空さんと千恵が実際に観客の前で新型のハンドガンを実演する事になった。
数分の練習の後、私たちは舞台となる会場に移動した。多くのブースに訪れた人々の前で千恵と空さんが立つ。
『ようこそ!ライデン社のブースにお越しいただき、ありがとうございます!本日は新型ハンドガンである『R8-ヘル・シャーク』の実演を育成学校の生徒さんにしてもらいます!』
学生による実演という事で、会場は大いに盛り上がる。私はというと、舞台裏で彼女さんと一緒に2人の様子を見ていた。
まず最初に前に出たのは千恵、ハンドガンを片手で正面に構えると引き金を引いた。
「光魔法<ライトショット>!」
千恵はハンドガンに刻まれた光魔法を放つ。
太さ約0.5mの青色のレザー光線が観客の頭上を通過し、的を撃ち抜いた。
『5058』という威力値が隣に表示される。
学生の中でも、トップクラスの実力を持つ千恵の魔法は凄く綺麗だった。
観客の多くも驚きの声をあげていた。盛大な拍手が送られる。
そして次に前に立ったのは空さん。
彼も同じように正面にハンドガンを構える。
彼が選択した魔法はこのハンドガンに組み込まれていない魔法だった。
とんでもない量の魔力が彼の持つハンドガンに込められる。会場にいた誰もがこのとてつもない量の魔力量に注目した。
私は、先程のC級だという発言が嘘である事を確信する。
彼は会場の至る所に魔法陣を作りだした。
その効果は全て屈折、魔法陣がバラバラに配置されていく。やがて、数百もの魔法陣を設置し終わると、彼はゆっくりと引き金を引いた。
「光学魔法<ライト・レイ>」
彼のつぶやきと同時に放たれた光線は彼の目の前の魔法陣で屈折し、真横へと進む。
そして、その先にある魔法陣でさらに屈折し、方向を変える。それを数百回繰り返すと、彼の放った光線は彼自身の元へ戻ってくる。
「魔力障壁・・・」
左手を伸ばした先にちょうど光線がやってくると、彼は自身の魔力障壁でその光を止めた。
バラバラに配置された魔法陣は一見ランダムに見えるが、全て計算されていた。
彼の放った光線を辿るとある文字が見えてくる。
空中にくっきりと『RIDEN』の文字が浮かび上がった。
それは、一種の芸術だった。ここにいる全員の心を奪い、思わず美しいと思ってしまうような魔法。
数日前に世界最強と謳われる黒白様がやった事を真似したのだろう。
観客は拍手をするのを忘れてそれを眺めた。
やがて、ゆっくりと消えると会場は拍手に包まれた。
________________________________________
第3章完結まで一応書き終えました!
なので毎日投稿を約束できると思います!
読んでいただき、ありがとうございます!
良かったら星を下さい!
結人と咲夜が喜びます!
新作『落ちこぼれと呼ばれた俺は真の実力を隠すどころか知らない』
も、よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます