#18 ツクヨミ①
”夜明けの光”所属 第四新型空中戦闘艦”
日本で四つ目の空中戦闘艦ツクヨミー全長150mの巨大な戦艦だ。
機動力が非常に高く世界を見てもトップクラスの性能を誇る。
中でも特筆すべき一番の特徴は”空間物体移動システム”つまりワープシステムだ。
移動直後に無防備になる点や魔力の消耗が激しいため連続で使えないなどの欠点がある。
それを差し引いても世界で唯一、ワープ機能を搭載している”ツクヨミ”は世界最高の戦艦と言えるだろう。
「お、おい、本当にあのツクヨミなのか⁈」
「当たり前じゃん空、それよりさっさと乗ろう。」
「あ、あぁ」
空は今のこの状況を吞み込めていない様子だった。
そうこうしている余裕はないので急いで乗り込む事にする。
側面部にあるハッチから中に入りメインコントロールルームへと向かう。
迷路のような通路を抜け出したどり着くと、予定通りの人物が艦長席に座っていた。
今は仮面は外しかわりに通信用のイヤホンマイクを付けている。そして左手にはいつものコーヒーカップを握っていた。
何というか、いつもの光景だ。お世話係である結人と咲夜が抜けたためダメ人間になって居るのではないかと心配だったが、どうやら大丈夫なようだ。
その少女は結人達に気が付くと、席を立ち両手を広げて突っ込んでくる。
「結君〜ってあれ?どうして避けるの〜」
「お姉様、今は遊んでいる時間はありませんので・・・早く皆さんに指示を出してあげて下さい。」
「ごめんごめん、とりあえずまぁそこの眠っている2人を奥の部屋にお願いね〜。じゃあ咲夜ちゃんはここでこの艦の指揮、結君は私と一緒に付いてきて〜、それと空君だったっけ。」
「・・・そうですけど。」
流石の空も日本最強の部隊の戦艦の艦長席に座っている人に対しては敬語を使って喋る。
「君はここでとりあえず待機ね。じゃ、あとお願いね〜。」
「「「了解!」」」「分かった。」
「さっ行こ!結君!」
「わかった。」
結人は茜に連れられてメインコントロールルームをあとにした。
空席となった艦長席に咲夜はゆっくりと座ると指示を飛ばした。
「魔力制御システム、オートバトルモードへ移行、通常モードから戦闘モードへ移行、魔力障壁展開、メインエンジン1番から4番回転開始。」
「反重力魔法正常!」
「魔力供給及び魔力回路、共に正常!」
「全制御システムグリーン」
「メインシステムグリーン、咲夜様全項目グリーンです。」
「空中戦闘艦ツクヨミ、発進!」
「発進了解!」
*
「水篠はいるか?」
部屋に到着してやれやれと落ち着こうした途端、外から立川先生の声がした。
何事かと思い、部屋を出る。
「どうしました?先生。」
「お前に軍から正式な依頼が来た。突如発生した魔法陣から出現するUCの討伐を討伐せよ、との事だ急いで準備しろ!2分後に甲板に来い!」
「はっ!」
大和はその知らせを聞いて胸が踊っていた。
父さんにいい所を見せられる。認めて貰えるいいチャンスだ。
敬礼をすると、急いで準備を始めた。とは言っても準備する事なんて武器のチャックぐらいだ。そのため一瞬で完了した。
「行ってくる、樹。」
「あぁ、お前の活躍を楽しみにしているのよ。」
大和は意気揚々と走り去っていった。
1人取り残された樹は小さな紙を広げる。
その紙は先程立川先生からこっそりと渡されたものだ。
『UCの駆逐を命ずる。装備は例の所においてあるので活用したまえ、健闘を祈る。 紅』
それを読んで全てを理解した。
何故C級とはいえ学生である水篠大和が招集されたかが。
上層部は樹が戦闘を行う際に足枷となる存在を排除したかったのだろう。
*
「さて、そろそろ頃合か・・・」
「そうみたいだね、久しぶりの共闘、頑張ろうか樹君いや、青。」
生徒達を避難させる為、その場に残り殿をつとめる事となった樹と水篠正樹は目の前の巨大な魔法陣を見ながらそう呟いた。
先生からいつもの装備を受け取った樹は自分の二丁の愛銃”
しばらく経つと樹が感じた通りに上空の魔法陣の魔力の収縮が終わり、中から大量のUCが出現する。
目的不明、出現理由不明、生態不明。一体一体が中級以上のUCで、それぞれが強力なオーラをまとっていた。
「災害級が1、超級が12、上級が100、そんで中級が1000ってとこか・・・どうする?水篠さん。流石に俺たち2人だけじゃあ災害級はギリギリだぜ?」
「もうじきツクヨミが来るだろう。あの船、というよりあの夫婦が来て下されば全然問題ない。それに、私達に求められているのは超級だ。何も気負う必要はない。」
「わかった。そんじゃ行きますか。」
身体強化をかけると、二手に分かれ攻撃を開始する。
樹のメイン武器は銀色の二丁拳銃。
中央に突っ込むと周囲目掛けていっせいに放つ。
「
<絶対射程領域>
威力は少し落ちるものの、目視できる距離であればどんな小さなものでもその標的に攻撃を誘導する魔法。
捕らえた敵を逃がさない。
固有魔法によって誘導された青い光の弾丸は次々とUCの核を貫いていく。
それはまるで悪魔のように。
反応する暇さえ与えずただ命を奪っていく。
樹の愛銃は弾丸のない光学銃、故に弾数は樹の魔力が尽きるまで無限だ。
「ぎゃああああ」
「びしゃぁぁぁあ」
「ぐぎゃあああ」
聞こえるのは悲鳴だけ、音のない攻撃かUCを襲う。それはただただ一方的な虐殺だった。
一方の水篠正樹の方も自身の固有魔法を発動する。
「
海の水を大量に取り込むとその水を使い巨大な壁を作る。高さ50mにも及ぶその巨大な壁は次々とUCを飲み込んでいく。
その壁が通り過ぎた後に残るのはUCの死骸だけだった。
上空に逃げると樹の銃のいい的になり、下の方に逃げたら巨大な壁に飲み込まれ、海の藻屑となる。
1000以上いたUCは次々と命を落としていった。その攻撃を受けきり残ったのはわずか数体しかいなかった。
すると上空で静観していた特級UCがゆっくりと下に降りてくる。
「どっからどう見ても巨大なタコにしか見えないな。ほんとどうなってんだよ、この世界は。」
「タコだったら普通は空を飛びませんよ、水篠さん。それにいよいよ本命のご登場みたいだな。」
「戦力差は4対22ってとこか、いいね血が滾ってきた。」
「ははは、しくじったら笑えませんよ。」
「私がミスをするとでも?有り得ませんね。さぁ第2ラウンドと行きましょう。味方も到着したみたいですし。」
*
「それで?いい加減俺にも説明して欲しいんだが、それと結人はどこにいったんだ?」
空の問いはもっともだろう。
なんせ突然自分の後輩があの世界最強の戦艦ツクヨミの指揮をとっているのだから。
「それについてはこの私が説明しましょう。」
「誰だお前は。」
「私はこの夜明けの光の副隊長補佐をさせて頂いています山本と申します。現在、藁科様と嘉神様は手が話せないご様子なので私が説明します。」
「まあいい、わかった。頼む。」
「現在、この船は前方に出現した謎の巨大な魔法陣の対処に向かっております。あの魔法陣は恐らく転移魔法です。どこの誰が使ったものか分かりませんが、恐らく最低でも超級UCが複数体出現すると思われます。そのためそれを対処するためにただ今この船は向かっております。」
「そこはわかった、だがな俺が知りたいのはそっちじゃねー藁科結人と嘉神咲夜が何者なのかって話だ。それを聞かないと信用できない。」
山本は確認のために咲夜の顔を伺うと咲夜が目を合わせて小さく頷いたので本当の事を話すことにした。
「簡単に説明させていただきますと2人は我々夜明けの光のメンバーであります。あなた様もご存知の通り、我々の隊長は黒白様、そして副隊長は紅焔様と紅様になっていますが、黒白様と紅焔様はこの船に居ない事が多いので実質的な隊長は紅様です。そして紅様というのが、藁科結人様のお姉様である藁科茜様なんです。」
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ちょっと長めになってしまいました。
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