#19 ツクヨミ②

「結人様はこの艦の艦長である茜様の実の弟なんですよ。」


「!!!まじかよ・・・」


「二つ目の質問ですが、お二方現在特別魔力制御室にいらっしゃいます。」


「特別魔力制御室・・・」


「はい、常人とはかけ離れた魔力演算能力と魔力制御能力を幼い頃に買われ、この艦の制御担当に任命、いや指名されたんです。それ以降、お二人は日本防衛軍に尽力されていらっしゃいます。」





転移魔法によるUCの強襲からわずか5分後。そこには数多くのUCの死体や残骸が転がっていた、残すは超級UC12体と災害級UC1体。

決戦の時はすぐそこまで来ていた。


「さぁ、空さん。出番ですよ。水篠さん達が弱いUCをあらかた片付けたようですが、まだ数体残っているのでそれらの討伐をお願いします。」


「わかった。」


「山本さん、案内をお願いします。他のメンバーはここから超級UCを何体か狩りましょう。」


「「「了解!」」」


【聞こえましたか?結人さん。】


【うん、ばっちり!】


【それでは結人さんは後方にいる災害級の対処をお願いします。】


【了解、咲夜。】



      *



「中級UCが2体か・・・どうするか」


大和は今まで中級UC複数体と戦ったことがなかった。普段なら真っ先に撤退を始めるがその日は父親の前ということもあり気が高まっていた。。


「ぎゃあああああああ」

「うーーーーーーーーーーーう」


大和の存在に気付いた2体のUCがこの世のものとは思えない雄たけびを発する。

一体目は巨大なイカのような格好だった。もう片方はサメのような格好だった。

UCは現実の動物や植物が巨大化したような見た目をしている事が多い、とは言っても色はどす黒い緑色でこの世のものとは思えない色をしている。

目は赤く光っており、真夜中での戦闘では恐ろしく不気味な様子だった。


「核の位置は両方とも頭部か・・・」


一般的に核は身体の中央部にあるが稀に頭部にある場合がある。それらは変異種と呼ばれ、並みのUCよりも強い個体だった。


大和は自身の剣を構える。身体強化魔法と魔力障壁で自身の身体を強化し、詠唱を始める。格上を相手にするならヒットアンドアウェイが1番。そう判断した大和は自身の剣を振るう。


「水よ、この世に流れ漂う水よ、我に力を!<水流舞>!」


全身に水をまとい、真っ直ぐ突っこんでいく。

水は正面からの防御にはとても弱い、だが攻撃を受け流す事に関してはもの凄く適している。

8本の足を左右に受け流し本体に近づこうとする。

が、ぎりぎりの所でもう一体のUCに阻まれてしまう。


後退して、一度体制を立て直すと水の衣をまとったまま別の魔法を組み合わせる。


「<滝撃>!」


4本の水柱を生み出すとすぐさま敵UCを攻撃する。

しかし、またしてもその全てを防がれてしまう。


第一段階ファースト・ステージ水破ウォーター・ブレイク


必殺の一撃を放つがサメのようなUCの牙によって見事に防がれてしまう。


「まだ届かないのか・・・」


数分の時がたったが、敵UCに未だ弱った様子は見られなかった。

対してこちらは魔力がもう半分ぐらいしか残っていない。

その上、左手の甲からはドバドバと赤い血が流れ出ていた。先程不覚ながらダメージを受けてしまったのだ。

水魔法で止血し、敵UCを睨みつける。


「ぎゃーぎゃぎゃ」


UCがまるで大和を嘲笑うかのように雄叫びをする。

はっきり言って勝ち筋が全く見えなかった。

どうしよもない生物としての差。UCの防御を突破するすべを持っていなかった。


一旦距離を取り、次の手を考える。

すると突然、8本の鎖がUCを襲った。

鎖が飛んできた方向を見ると1人の男がこちらを見ていた。


「この鎖!黒崎先輩?!」


「邪魔だ。お前はさっさと船に戻れ。」


「い、嫌です。自分は何としても手柄をたてなければならないんです!」


「今のお前に何ができる。中級すら葬れない奴はいらない。この程度に苦戦するとは、同年代最強の名が泣くな。」


「あなたに何が分かる!」


「何も分からない、そして興味もない。ただ俺は日本の未来が心配になっただけだ。それよりさっさと失せろ。レベルが違う。」


「ぐっ!」


「まぁいい、どうしてもというならそこで見ていろ。格の違いをな。物理運動魔法<誘導>、雷魔術<黒雷>」


8本の鎖で動きを封じると、その鎖に電流を流し、感電させる。

結人との特訓で新たに作った魔法具、電気を通しやすい素材で作った特別製の鎖で、空の魔法との相性は最高だった。

その一瞬の怯みを見逃さずに手に持った剣で切りつけた。

斬撃は核に命中し、パリンという音をたてて割れた。


一瞬の出来事だった。自分があんなにも苦戦した相手に対して空が用いた時間はわずか数秒、さらに自分の使った魔法よりも威力が低かったように思える。

B級とC級の大きな差を実感した。


同じような魔法で2体目の方も倒すと、空は別のUCを討伐しにいってしまった。


後に残ったのは2体のUCの残骸と何も出来なかった少年だけが残った。







「さて、どうします?水篠さん。我々と立川さんだけでは災害級討伐は不可能だと思うのですが・・・」


「ここには結人様が居るんだろ?なら彼に出て来てもらえばいいじゃないか。」


「それが、向こう側にも別の災害級が発生したみたいで彼はそちら側の対処に向かっていると思います。」


「ならツクヨミだな。」


「分かりました。それで行きましょう。」


「まずは取り巻きの超級共を捻り潰すとしようか。」


「そうですね。」


水篠さんとの話し合いが終わった樹は超級UCのいる方向へと飛んだ。


降りかかる攻撃の雨。

基本統率を取らないため、単純な攻撃を避けるのは簡単だ。

敵UCの攻撃を潜り抜け、遮蔽物がない状態かつ至近距離で弾丸を撃ち込む。


「仙洞田流・裏 <影半月かげはんげつ>!」


超至近距離特化加速魔法 <三日月>の中距離版、<半月>。

弾丸に魔法式を上乗せし、さらに加速させる。

測ったことはないが威力値は軽く100万は超えるだろう。

超級UCならば核を捉えればこれぐらいで十分だ。


「がぁぁぁぁぁぁ!」


目に見えない速度で放たれた弾丸は敵UCの核を一瞬で貫いた。

核を失ったUCは叫び声を出しながら海の底に沈んでいった。


「まず1匹・・・次に行くか。」


少しずつ隙を作り、動きを撹乱していく。速度はこちらの方が上、ならば技量の低い化け物ごときに負けるはずがない。ただし、超級まではだ。

超級UCを水篠さん、立川先生の協力とツクヨミによる砲撃の援護によって1匹ずつ確実に葬っていく。

30分もすれば残った敵はあと一体になっていた。

残った一体つまり災害級。

UCに、協調性というものは一切ないがより上位のUCは個性を持っている。


今回の災害級は比較的穏やかな性格なようで今のところ敵対行動などはみられない。

だとしても日本防衛軍いやジルトレアには敵対行動をしないという理由だけで討伐対象から外れる事など無い。




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