#12 それぞれの戦い②


初日の夜、結人と咲夜の2人はこっそりと部屋を出ると隠蔽魔法をかけたまま水篠正樹の部屋を訪れた。軽くノックをすると直ぐに「どうぞ。」っと返事が返ってきた。

彼の部屋は特別製の広い部屋だった。

中に入ると予想通りの人物が2、優雅にコーヒーを飲んでいた。

結人と咲夜が目に入るとこちらに手を振る。


「あ~きたきた。遅いよ~結君、妹ちゃん!」


「姉さんどうしてこんな所に?」

「やはりこのオーラお姉様でしたか・・・ですがどうしてここに?」


今日、姉さんが参加する予定はなかったはずだ。いったいどうしたのだろう。

今までの行動からある程度の予測ができるきっと重要な事件か何かが起こったのだろう。


「いや~結君も知っているでしょ?私達”夜明けの光”は万が一が起こらない限り暇だからね~だからこうして会いに来ちゃった。テヘペロ」


ただの暇つぶしでした・・・


「テヘペロじゃないよ姉さん。だとしてもやることがあるでしょ?報告書とかさ、嫌がらせのように来るじゃん。」


我が姉のことながら予測が全くできない。本当に血が繋がっているのか不安になる。いつも言って振り回されるこっちの身にもなってほしいものだ。


「大丈夫、大丈夫。全部山本君に任せたからね~」


「いやいや全然大丈夫じゃないでしょ。」

(・・・山本さん頑張れ。)


頭の中で山本さんの無事を願う。姉さんも昔はしっかりと真面目に働いているはずなのに・・・最近の行動は自由きまますぎる。


「で?姉さんはこの後どうするの?」


「ん~ど~しよっかな~私も引率としてついて行こっかな~」


「なっ何を言っているんだよ、姉さん。部隊のみんなは姉さんがいないと困るでしょ?」



「ところで水篠さん先ほどはどうしてあのような事を・・・」


先程の行動に疑問を覚えた咲夜が水篠さんに聞いてみる。先程の大和への対応は普段のそれとはかけ離れたものだった。

すると水篠さんはニヤリと笑いながらこう答えた。


「父親っていうのは息子にかっこつけたいものですよ。咲夜様もお子さんができればそう思うと思いますよ。」


「お子さん!!!どうしましょう結人さん!!!男の子かな~女の子かな~子供が生まれたら何をしましょう。一緒に遊んで一緒に寝て、一緒にお風呂に入って。あ、旅行とかもいいですね!!!結人さん、私、子供が欲しくなりました!!!血の掟なんて私達の愛の前には無力です、破ってしまいましょう!!!」


「いや、結構大事らしいんだよ妹ちゃん。でももういっか、あれ結構めんどくさいしさ~やっちゃう?妹ちゃん。何ならこの後ホテルの予約でもとっておく?今なら全額うちの部隊から出すよ。」


「いいですね!是非お願いします!フフフ♪」




「水篠さん、咲夜にそのワードは禁句だといつも言っているのですが・・・」


「申し訳ございません、結人様。暴走させちゃった見たいです。」


「・・・これは、このまま少し放っておいた方が良さそうだね。」


「そうみたいですね・・・」


"夜明けの光"には咲夜に言ってはいけないワードがいくつかある。その内の1つが結人と咲夜の子供に関するワードだ。このように暴走してしまう。その為、隊員達は暗黙の了解で禁句を言わないようにしていた。









この暴走が止まった時には既に深夜0時を回っていた。水篠さんの部屋に着いたのは10時過ぎぐらいだったと思うので、かれこれ1時間程暴走を続けていたことになる。

咲夜が「私、もう歩けませ〜ん」っと眠そうな声で言って来るので、仕方なくおんぶをする。すると、部屋に着く前に背中で寝てしまった。

道中誰にも見つからないようにするために隠蔽魔法を使い、こっそりと自分達の部屋に戻った。

2段ベットの下側に咲夜を寝かす。

そして、空いている上側に行き、自分も寝ようとすると、咲夜の可愛い唸り声が聞こえる。

顔を覗き込むと、とても寝苦しそうな様子だった。


「・・・こういう時って脱がしてあげた方がいいのかな。」


そう呟くと何故か咲夜は急によりいっそう寝苦しそうな仕草をする。少し、わざとらしさがあったが気の所為だろう。


「仕方ないか・・・」


いくら婚約者とは言え、寝ている女の子の服を脱がすのは抵抗があったためこのまま寝ようと思ったが、観念して下の段に降り、寝ている咲夜にと近づく。

そして、手を伸ばして首元を緩める。


「これで良し。」


我ながら完璧だ。


「ブレザーも脱がして欲しいです〜」


「仕方ないな・・・」


東京校の制服である赤いブレザーのボタンを一つずつ外していく。

その時、ある違和感に気付く。

あれ?僕今、誰と話した?


「ちょっと待って!咲夜起きてるじゃん。なら自分でやりなよ。」


「私、結人さんエネルギー不足で動けそうにありません・・・///」


「うっ!」


こう言われると結人は咲夜を拒む事ができない。拒むと後で何を要求されるか分からないからだ。この前は膝枕+頭を撫でる事を2時間要求されたのを覚えている。

まぁ咲夜が可愛かったので罰ゲームでは無く、ご褒美だったが・・・


結人は、咲夜のシャツのボタンをとる。


「これでいい?」


「ありがとうございます、結人さん。最後に・・・私が寝るまで私の手を握っていただけませんか?」


「まぁ別にいいけど・・・」


言われた通りに咲夜の手をギュッと握る。今日はいつもの一緒のベットではなく別々のベットなので今日は一緒に寝ることができない。

咲夜なりに甘えたいのだろう。

咲夜のベットの端に座ってあげる事にする。


だが、結人は咲夜の本当の目的を読み切れなかった。

彼女の策略を・・・


「<ウィンド>」


「おわっと!!!」


いきなり咲夜の風魔法によって押され、思わずベットに倒れ込む。

そして、いつものように抱きつかれる。


「へへへ~、さぁ一緒に寝ましょう!」


「いやいや、結構こっちは狭いんだけど・・・」


「大丈夫ですよ。それに、狭い方がこうしてくっつけるじゃないですか。それにギュッとしながら寝れば落ちませんよ。」


締め付けが強くなった気がする。


「ありがとうございます、結人さん。これでゆっくりと眠られます・・・」


「実は僕も少し緊張していたんだ・・・こちらこそありがとう、咲夜。」


咲夜の耳もとで囁く。


「う~~。」


咲夜は耳が弱い、こうすれば咲夜は一発で落ちる。


「じゃ、じゃあそういうことで、おやすみ〜」


「う、うん。おやすみさい。」


(どうしましょう、部屋が狭いせいか。いつもよりも結人さんエネルギーを感じます・・・)


次の日の朝少し気まずかったのは言うまでもない。



_______________________________


読者「魔力測定システムってあるじゃん?」


㋚「ありますね。」


読者「魔力測定システムがあるのにどうして結人は反応しないの?」


㋚「・・・・・・」


と、いうわけでそこは目をつぶって欲しいです。

何か面白い理由言い訳があったら採用します。

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