#13 それぞれの戦い③
「いやーそれにしてもすごいね、こんなに遠くまで来たのは初めてだよ!見渡す限りどこも海!まぁちょっと暇だけど・・・」
「本当にきれいですね・・・暇ですけど・・・」
「暇だ・・・やる事がない・・・結人なんとかしてー」
東京湾に浮か東京校を出て既に3日、安全のために緊急時以外は魔法の使用が禁止されており多くの生徒が暇で死にそうな状態だった。
が、結人と咲夜は全然そんな様子はない。
(あ〜なんの危険にも晒されない平和な一時、最高だ。数カ月前の僕には考えもしないかっただろうな。過去の僕、僕は今スクールライフを満喫しています!学校入って良かったー)
(あ〜最高です!こうして結人さんと一緒にいるだけでも幸せなのに、
2人は今回の訓練を楽しもうとしていた。
というのも、出発前に茜に樹の固有魔法使用許可が出た事を聞いたからだ。
もちもん、最低限の警戒はしているが、大抵の事なら樹に任せと置けば問題ないだろう。
「おーい、結人ー咲夜ーそんな所で寝っ転がってないでこっち来いよー暇だしトランプでもしよーぜー。」
「あ、うん。わかった、今行くよ。」
周りを見渡すと半数以上の生徒は結人たちのように気が緩んでいるように見える。というのもAクラスに所属している生徒のほとんどは親や兄弟に強い魔法師がいるか、師匠のような存在がいる。何故なら中学校では、魔法に関する歴史は学ぶが、魔法については基本的に教わらない。また、魔法を見たり魔法に関する本を読んだだけで使えるようになるほど魔法というのは甘くはない。そのため必然的にAクラスに通う生徒は親や兄弟に強い魔法師がいるか、師匠的な存在がいる生徒がほとんどなため、UCを討伐した事のある生徒も多い。
「自分は"Jと3のツーペア"です・・・」
「僕は"Qのワンペア"・・・咲夜は?」
「私は"Aのスリー・オブ・ア・カインド"です。」
「いやーいつもながら咲夜は反則的な強さだなー。本当に覚えて2ヶ月なのか?」
「そーだよねー咲夜ちゃんもしかして未来でも見えるの?」
「き、気のせいですよ!私はいつでも真剣ですよ!それに、未来が見えるなんてシュリカ様みたいな末来視魔法は使えないですよ。」
結人と咲夜はトランプというものをこの学校に来て初めて遊んだ。噂には聞いたことがあったが、実際に見たり遊んだりした事が無かった。
結人は樹と大和に、咲夜は桃と雷華に遊び方を教えて貰った。それからというものちょくちょく樹と大和の部屋に集まって遊んでいた。
結果を簡単に言うと咲夜の圧勝、結人は2位、この2人以外は毎回とんでもない差をつけて完膚なきまでに叩き潰されている。本当に未来が見えるのかもしれないと疑いたくなるぐらいの結果だった。
「それにしてもまだ着かないのかよ・・・」
「まだ、時間がかかりそうですね・・・あと100kmほどでしょうか。」
「そうだねー、明日には目的地に着くって先生が行っていたから今日は早めに寝るかー」
空が暗くなって来たためその日は早いうちにそれぞれの部屋に戻り眠りに着いた。
結人達が乗る高速戦闘艦”ハチクマ”が5隻と中型戦闘機艦”サザナミ”が1隻からなる艦隊が目的地に向けて進んでいた。
6隻とも軍から派遣された護衛艦である。もちもん戦闘には参加せず、あくまで生徒達を運ぶことを目的として日本防衛軍が用意したものだ。
*
「全員、決められた班ごとに集合し戦闘用意!」
「「「はい!」」」
現在の時刻は昼の1時、予定通り生徒たちは今から60時間、それぞれの判断で移動し、UCの討伐を行う。班はそれぞれの戦闘スタイルに合わせて先生が組んだもので、基本的に平等になっていた。各班は事前に班ごと連携の練習をしていたため準備は万全だった。
「じゃあね、みんなまた後で・・・」
「うん、また後でねー」
「お互い気をつけて下さいね。」
結人は友人たちに別れを告げ、班長の元へと走って行った。そして、その他のメンバーもそれぞれの場所に走っていくり
「しかしいいよなー結人と咲夜は同じ班で・・・俺も誰か知ってる人と同じ班になりたかったな〜。」
「詳しくは知らないけど裏で先生と取引してそうだよね、咲夜ちゃん」
「あるかもーやりそうだよね〜あの子は」
「流石にそれはないと思いますよ?」
*
「よぉお前ら、今日はよろしくな。」
「1年Aクラスの桜木 瀬奈です。よ、よろしくお願いします。」
「いや、自己紹介はこの前しただろ。何やってんだよ。」
「ご、ごめんなさいです〜」
「こらこら空、後輩ちゃんを虐めないであげて。」
この3人は結人達と同じ班になった人達で、結人よりも少し背が低い少女、桜木瀬奈。
班長で2年生の中で最強と名高い少年、黒崎空。見た目はとても怖いヤクザのような少年で、結人達も最初はびびったが中身はとても優しい人だった。そして彼には日本防衛軍所属B級魔法師という資格を持っていた。
そして、空を突っ込んだ少女は熊谷遥香。空の幼馴染らしく空の暴走を止める事ができる貴重な存在だった。
試験開始から30分後ようやく1体目のUCに遭遇した。
「黒崎さん、前方1km先に下級UC発見、数は4です。」
「相手は下級の雑魚だ、訓練通りやるぞ。」
「「「はい!」」」
リーダーである、空の指示でそれぞれ位置につく、空と結人が前衛、遥香と瀬奈が中衛、咲夜が後衛を担当した。
結人はその気になれば魔力の圧だけで倒せるだか、ここは学校の訓練、目立たない程度に戦闘を繰り広げる。
それぞれは水上移動補助装置<MOS4>を装着する。
「セオリー通り核を狙うぞ!鎖魔法<
空は8本の鎖を異空間から取り出すとそれをUCに巻き付け、動きを封じると手に持った剣でとどめを刺す。結人との訓練で操れる鎖の本数が4本から8本になった。
そのおかげで汎用性と攻撃力が上昇していた。
「<
遥香も炎による攻撃で敵UCを攻撃する。海の上での戦闘で炎魔法はあまり効果を発揮しないが、彼女の腕前がそれをカバーしていた。
あっという間に先行して来た2体を葬る。
「な?結構簡単だろ?じゃあ1年生3人で残りの2体を倒して見ろ。」
「「「はい!」」」
3人は前に出てボードを近づける。
そして、2人は簡単な魔法でかく乱し、遊んでいた。
【出会った頃を思い出しますね、結人さん】
【そうだねー、あの時は連携も下手だったよね。】
【そうですね。でも結人さん、出会った頃でも本当は特級ぐらいなら余裕で倒せるだけの実力を持っていましたよね。私には上級がギリギリって言ってましたけど・・・】
昔の事を思い出した咲夜は当時の不満を口にする。
すると、急に咲夜の魔法が強くなった気がする。気のせいだろう。
【ま、まぁあの時はアレのすぐ後だったからさ。アハハ】
「結人さん〜咲夜さん〜助けて下さい〜ピ、ピンチです〜」
【私、あの時結人さんに追いつくためにとても練習したんですよ。とても悔しい思いをしたのを覚えています。さて、助けてを呼ばれたので終わりにしますか・・・】
【結構遊んだし、そろそろ終わるか。】
テキトーな魔法でとどめを刺す。隣を見ると瀬奈さんが苦戦をしていたのでカバーに入る。
「あ、ありがとうございます、2人とも」
「は!」
氷で周りの海を凍らして最後の1体の動きを封じる。下級UC程度であればそれで数秒はこれで稼ぐ事ができる。
「瀬奈さん、今だ!」
「は、はい!精霊召喚、下級精霊・土!そして、精霊土魔法<石弾>」
咲夜による指導によって瀬奈は精霊と一時的な契約を結び、魔法を行使できるようになった。
彼女の作った50cmぐらいの石の塊が敵UCの核を貫く。
「や、やりましたー私これが初討伐です!」
どうやらこれが初めての討伐だったらしくとても喜んでいた。
「良かったな、瀬奈。俺も初めての時は緊張したものだ。俺たちがいる限り絶対に安全だから、落ち着いこれからも頼むぜ。」
「は、はい!」
「おめでとう」と、結人たちも労いの言葉をかける。
空はガラが悪く、怖い見た目だが、非常に良い先輩だ。
彼も未来を引っ張っていく良い魔法師になるだろうと思った。
その後も彼らは討伐を続けた。
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どうしよう、桜木瀬奈の使い道が・・・
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