#30 見慣れた日常③/エピローグ

普通の人間にとって見ただけで魔法の種類や効果を当てるのは非常に難しい。教科書に載っているような軍が公表している魔法ーー通称基本魔法であればある程度なら可能かもしれない。

しかし、アレンジが加えられていたり、新しく作られた魔法の効果を予測するのは非常に難しい、ましてやその魔法を簡単に行使することが可能なのはS級魔法師レベルの魔力操作技術が必要だ。

例えば、A地点から100m離れたB地点まで魔法を使って移動したいとする。

ある者は得意な風魔法で自分を移動させ、ある者は爆発による推進力で自分を前身する。また、ある者は空間魔法で瞬間移動する方法を選択する。

このように得意な魔法や動かす対象、使うタイミングによって使う魔法は変わる。そのため僕は1番大切なのは魔力操作技術だと思う。魔力操作技術が高ければ相手の繰り出す魔法が事前に分かったり相手の位置を特定出来るからだ。そのため僕は小さい頃からずっと魔力操作の練習に力を入れていた。

中でも僕と咲夜の魔力操作技術は他の魔法師の中でも群を抜いている。これが僕達2人がS級魔法師に認定される大きな理由の1つだ。








魔法の実力試しが終わり、空間魔法の研究に移った。この研究会の活動記録を読んでみると面白い意見などが多く見つかった。

結人は既に空間魔法の限界というものを熟知している。この時間魔法研究会に入った最大の理由は学生たちの斬新な意見を取り入れためだった。


【結構面白い意見も多いですね、結人さん】


【そうだよね、けっこうすごいよ。ここなんて『空間魔法術式構築における相互型採用の利点』について書いてあるよ】


【とても学生とは思えないですね】


2人は研究の進み具合に素直に驚いていた。よくある弱小研究所よりも高いレベルの事が議論されていたからだ。


楽しい事をしていると時間が早く進むように感じるもので、楽しい部活動は瞬く間に終わってしまった。とは言っても今日は研究らしいことはせず、お菓子を食べたり雑談をしたりしていただけだが・・・

家に着いた頃にはすっかり日も落ちていた。




「あーただいまー」


「おかえりなさい、結人さん。」


「あー疲れたー今日は普段よりも濃い1日だったねー。」


「入学から2ヶ月、すっかり馴染んでますね、結人さん。ほんの数ヶ月前まで戦地を駆け回っていたとは考えられないですよね。」


入学以前の結人の仕事は本土防衛隊の遊撃隊だった。隊といっても隊員は1人しかおらず、茜の指示に従って縦横無尽に戦地を駆け巡っていた。破滅級UCは数年に1度しか出現しないが、特級UCはここ最近毎日のように出現していた。それを討伐するのが結人の仕事だった。無論拒否権はなく、休日などない。数ヶ月に1度会う友人たちとの共同任務が結人にとって唯一の楽しみだった。


「あの頃よりはとても楽な生活をさせてもらっていてとても嬉しくてありがたいんだけどね、どうしてとも罪悪感があるんだよね・・・

姉さんは気にするなって言ってたけど、今月の行方不明者数がいつもより10人も多かったたんだって・・・」


「私は結人さんに幸せになって欲しいと思っております。2人で軍に入隊してから6年、少しぐらい羽を伸ばしても私はいいと思ってますよ。それに、これ以上働く事は私が許しません。」


紅茶を入れて、リビングにやってくる。いつも帰ってくると結人に紅茶を入れてくれるのだ。ちなみに味は文句無しの1級品。昔、咲夜の母である紅葉さんに教えてもらったらしい。


「いつもありがとう、咲夜。ちょっと元気が出たよ。」


「大丈夫ですよ、結人さん。弱音を吐きたいときはいつでも頼って下さい。私はあなたの婚約者ですから。」


「ありがとう、咲夜」


「さぁご飯にしましょう、結人さん。今日は特製オムライスです!」


「うん」









咲夜の作る料理はとても美味しい。比較するのはどうかと思うが、高いレストランで食べるより全然美味しいと思うほどだ。

しかも、リクエストすればその通りの料理が出てくるし、栄養バランスも保たれていて料理に関しては非の打ち所がないほど完璧だ。

しかし、食べる過程は違う。


「あの〜咲夜さん?なんですか?これは?」


目の前に大きなオムライスが1つ置かれている。小さな湯気がたっていて凄く美味しそうだ。

違う、突っ込むべき所はそこじゃない。

書かれている文字と咲夜が座っている位置だ。

オムライスにはこう書かれていた。

『だ〜いすき♡』と・・・


「あの〜膝の上に乗られるととても食べにくいんですが・・・」


「最近甘やかしてくれない結人さんが悪いんですよ!私、1週間もキスしてもらってません・・・女の子は甘やかしてくれないと溶けちゃうんですよ!」


「ごめんって咲夜。」


「わかりました。今日から毎日行ってきますのキスをしてもらうで手を打ちましょう。」


・・・確かに最近咲夜を甘やかしてあげられなかったかもしれない。

でも流石に毎日は恥ずかしい・・・

なんとか言い訳をー


「言い訳は通用しませんからね。」


・・・詰みだ。僕に残された道は初めから一本だったのかもしれない。


「わかった、いいよ咲夜。でもその代わりこのことは学校でいい回らないでね。流石にその恥ずかしいから・・・」


「わかりました、ではご飯を食べましょうか。」










「え?本気ですか?司令。」


結人たちが楽しく夕食をとっていた時、東京校の校長室では、軍から新たな命令を受けていた。


「いくらAクラスといっても1.2年生にはまだ実戦は早すぎます。」


『場合によっては東京校に現在通学中のA,B,C級の魔法師の固有魔法使用を許可する。これでなんとかなるだろう。』


「しかし、司令。それだと万が一の時に・・・」


『これは軍からの正式な通達だ。今更変更は出来ん。よろしく頼むぞ。』


「了解しました。司令。」




結人達が国立日本魔法師育成学園東京校に入学してから早2ヶ月。

生徒たちにとって最初の試練が幕を開ける。


__________________________________




この次の話で第1章を終わろうと思っていたのですが、思ったよりも長くなりそうだったので、第2章にしようと思います。


急遽変更したので、少し繋げる為の時間を下さい(´×ω×`)

5日後に次のやつを投稿すると思います。



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