#19 親善試合は楽しむもの②
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午前中の現代魔法学の授業、午後の基礎魔術学の授業が終わり、徒歩5分の寮の自室に戻る。
結人と咲夜は夕食をとり、お風呂を済ませ、ベッドに入った。
目を閉じて、意識を遠ざけていく。
そしてこのまま夢の世界に飛び込む、はずだった。
「結人さん?どうして一人で勝手に寝てしまおうとしているんですか?約束を忘れてしまったんですか?」
甘くて優しい声が耳元で囁かれる。
優しい雰囲気だが少し怒っているようにも感じる。ここでの抵抗は不可能だ、素直に従うに限る。
「忘れていないよ、咲夜。ちょっと意地悪したくなっただけだよ。」
「もお~結人さんったら・・・ぎゅーってしてくれたら許してあげまーー」
結人は咲夜が言い終わる前、抱き締める。
咲夜も顔を真っ赤にしながらそれに応え、だきしめ返した。
「暖かいです・・・幸せです・・・」
「僕も・・・このまま僕寝ちゃいそ~だよ。あ~~」
結人は眠たくなり大きくあくびをする。すると、咲夜は焦りながらそれを止めた。
「だっだめですよ結人さん、まだ・・・それに今日伝えなければならないことがあるんです。」
「どうしたの?なにかあったのまた仕事の話を?」
ふたりの声のトーンが下がる。咲夜が大事なことを伝える時の声だった。結人と二人っきりの時は甘えん坊になる咲夜だが、普段は完璧超人の一言につきる。
他にも仕事の時なども完璧超人モードになる。
「実はですね・・・」
ゴクリ・・・
十中八九仕事のことだな。新たな破滅級かな・・・だとしたら準備をしなきゃか・・・
最悪の場合を想定し覚悟を決める。
「実はですね、結人さんに思いを告げようとしている泥棒猫・・・じゃなかった女の子がいるという情報をつかみまして・・・」
そっちかよ、心配して損した・・・
破滅級の出現となるといくら結人でも死を覚悟しなければならなくなる。それほどの力を破滅級は持っている。
過去の領土奪還作戦の失敗の原因もこれだった。
「ちょっと聞いてます?結人さん。今とってもとっても大事な話をしているのですが・・・こうしてはいられません。対策を早急に考えなければ・・・」
「そこは大丈夫だよ咲夜。僕が咲夜以外の人に振り向くはずはないよ。安心して・・・」
甘い言葉をかけて咲夜を安心させる。
「・・・メイして・・・証明して下さい結人さん。」
「わかったよ・・・」
結人はしばらく考えたあと黙ってゆっくりと顔を近づけると咲夜の唇に蓋をした。
顔を見合わせてニコッと笑うとそのまま2人は少しずつ意識を遠ざけていった。
それにしても入学たった2日でとは・・・恐ろしい・・・
*
次の日、樹の部屋で親善試合に参加するメンバーによる顔合わせをが行われた。
「まあもうみんな知っていると思うけど仙洞田樹だ。得意な魔法は光属性、固有魔法は未発現、よろしく。」
もちろん樹も固有魔法を発現している。ただし、茜からあまり公にするなと言われているので一応秘密しておく。
「自分は水篠大和。得意な魔法は水魔法、固有魔法は第1段階<水破>、具体的な能力は精神安定と突進技が使える感じかな」
「私は桐山雷華だ。雷帝の二つ名からわかると思うが雷系統の魔法が得意だ。固有魔法は第1段階<エレクトロ・ヒューズ>、雷の操作と身体強化だ。」
2人の自己紹介が終わる。雷華は咲夜が普段親しくしていると聞いていたが実際にこうして話したのは初めてだった。
「私は嘉神咲夜と申します。得意魔法は氷魔法、固有魔法は未発現ですよろしくお願いいたします。」
容姿端麗モードの僕の婚約者はそう言って深々と頭を下げる。
「私は和良楢 桃華です。私は補欠ですがよろしくお願いします。得意な魔法は精神の魔術です。あえっとー固有魔法は未発現です。」
この人とのちゃんとした挨拶はこれが初めてだが、彼女の存在はよく知っていた。咲夜が普段仲良くしていることも理由のひとつだが結人たちが普段お世話になっている『夜明けの光』のメンバーの娘さんでよく話を聞かされているからだ・・・
「最後に僕だね、もう知っていると思うけど僕は藁科 結人。得意な魔法は熱操作系の魔法、固有魔法は未発現です。よろしく!」
結人と咲夜も同様に固有魔法については秘密にしておく。彼らの固有魔法がどのようなものかを知っている人は限りなく少ないが一応のためだ。
「じゃあ、質問があるやつはいる?ーーーじゃあ和良楢さん。」
樹は手を挙げた桃華を指す。
「はいはいはーーい、藁科君と咲夜ちゃんって付き合っているんですか?」
?!!!!
思わず飲んでいたお茶を吐き出しそうになる。見ると僕の婚約者の顔が真っ赤になっていた。
バ、バレてるだと?!
ここはなんとしても誤魔化さなきゃ・・・
「そ、そんなことないよねぇ、咲夜」
【頼む咲夜!ここは合わせてくれ!】
結人の平穏な学校生活は咲夜の次の発言によって決まってしまう。まさに天国か地獄かの大勝負。各々の視線が咲夜に集まり、沈黙の時間が流れる。時間がゆっくりになる魔法をかけられたかのような感覚に襲われる。
そしてついに審判の時がやってくる。
「へへへ、実はそうなんですよ・・・///」
・・・・・・終わったー僕の学校生活が・・・ここに来れば変われると思ったのに・・・
「バレちゃったみたいだな結人・・・どんまい。」
さらに追い討ちをかける樹、どんまいじゃないよ・・・今あなたが唯一の回避ルートを潰したんだよ・・・
咲夜は相変わらず顔を真っ赤にさせながらもじもじしている。
可愛い・・・・・・見ているだけで天国に行けそうだ・・・・・・って可愛さに惑わされるな僕!よし今日の夜はいたずらしてあげよう。いつもの100倍だ!
「やっぱりね、私の思った通り!」
「自分もそうにらんでいました。」
「私もそう思っていたんだよ。もしかして気付いていないと思っていたのですか?」
この3人は結人と咲夜の行動から最低でも相思相愛の関係であることを察していた。むしろこれで気づかない人などいないというレベルで2人は校内でイチャついていた。
「この前なんて屋上で膝枕していましたよね、もしかしてバレていないと思っていたのですか?あの
「あっそれ私も見ました。仲良さそうでしたよね・・・」
彼女たちの言葉に結人と咲夜はどんどん顔が赤くなっていく・・・
「あの、そろそろ勘弁してくれませんかね・・・認めるので・・・」
「や、やめてくださいよ、二人とも~」
結人と咲夜の希望は通るはずがなく、この後2人は更なる追い打ちを食らう事にななるのだった・・・
*
「咲夜・・・どうしてこうなった・・・何故だ。」
「あの・・・私も悪いとは思っているんですよ?でも私はこれでよかったとも思っています。今まではこっそりイチャイチャしていましたがこれからは公の場でできるのですよ?私結構憧れていたんですよ・・・」
「まぁもうみんなにバレているっぽいけどね・・・ほどほどにね。」
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