#20 親善試合は楽しむもの③
親善試合のメンバーが決まった2日後の放課後、6人は先生に呼ばれ運動場に集合していた。
「今日からお前たち6人には私が直接特別訓練を付ける。親善試合まであと2週間、全員気を抜かないように!!!」
「「「はい!」」」
「今日は初日ということでチームメイトとお互いの事を知るために模擬戦をやって貰おう。対戦相手は 和良栖桃 対 仙洞田樹、嘉神咲夜 対 桐山雷華、そして藁科結人 対 水篠大和だ。すぐに準備しろ!!!」
「「「はい!」」」
先生の授業のモットーは大きな声でハッキリとだ。
応えていいのは「はい」か、「yes」か、「OK!」の3つだけだ。
軍隊ですらそれほど厳しくないのになと思ったが、それは心の中に留めておく。
よく知らないけど・・・
そんな事を考えていると樹と桃の試合が始まった。
しかし、桃は火力特化である樹の攻撃を防ぐ事が出来ず、一瞬で勝敗が決まってしまう。
まぁ支援系の人が1番苦手な相手なので仕方がない。
それに樹は一応A級魔法師、負けるはずがない。負けず嫌いな樹ならなおさらだ。
次は咲夜と雷華の試合だった。
雷華は『雷帝』の2つ名にふさわしい、雷魔法と炎魔法を組み合わせた火力重視の攻撃的な戦法を選択した。
一方の咲夜は氷魔法と炎魔法を組み合わせたスピード重視の攻撃を展開する。
「今日初めて手合わせしたけど、なかなかやるわね。さすが藁科君の相棒だ。隙が全くない。」
「雷華さんも凄く強いです。こう見えて結構ピンチなんですよ、私」
「発言と動きがあっていないな!!!」
藁科君とのコンビネーションを見た時も感じたけど、やっぱり咲夜ちゃん凄く強い!
恐らく、スピードも保有魔力量も魔力操作技術も全部負けてる。確か彼女は固有魔法が未発現って言っていたはず・・・ならば私は火力で押し勝つ!
咲夜は氷の塊を雨のように降らし、雷華を狙う。
最初の内は爆発魔法を使って吹き飛ばしていたが、氷柱が永遠に襲ってくるため作戦を『避ける』に切り替える。
氷柱自体の速度はそれ程早いわけでわなく弾幕も薄い。ならば氷柱を全て避けきり、魔力切れを狙う。
「チェックです。<
地面から突然生えた無数の氷の柱が雷華を襲う。上からの攻撃を多く使い、意識が上を向いた瞬間に放たれた強力な魔法。
雷華は間一髪のところでそれらをかわす。手足に切り傷を作ったが辛うじて判定負けは免れた。
「危なっ!・・・やるわね、こちらも全力でいかせて貰うよ、
「受けてたちましょう。<感覚強化><反射神経強力><魔力障壁>」
「はーーー!!!」
魔法の詠唱とともに雷華は距離を詰め、自信の最強の一撃を己の剣に纏わせ繰り出す。
恐らく、彼女は魔力障壁で防ぐ事は選択しないだろう。だったら・・・
咲夜がとった行動はこの場にいる誰もが予想出来ない事だった。
今にも固有魔法を繰り出そうしている雷華に対して、同じように突っ込んだ。
(え?なんで?彼女は固有魔法を持っていないはず、だとしたら空間魔法か?でも学生にそんな高度な魔法が使えるはずがない、ギリギリで交してカウンターを狙う作戦だろう。今残っている魔力を全部注ぎ込んで2回連続で放とう。)
剣と剣がぶつかる瞬間、咲夜は体を反らして斬撃の下を潜り抜ける。
それを見逃さなかった雷華は剣を強引に曲げ、追い討ちの一撃を放つ。
「これで決める!
咲夜が攻撃をかわした事を悟った瞬間にその斬撃を反転させ、咲夜の胴体を狙う。
この場にいる全員はその攻撃をで決まった
そして、これで決まったと思ったと思った・・・
ただ一人、結人を除いて・・・
しかし、決まったのではなく決められてしまった。
雷華のとった行動はほぼ正解だった。
敗因をあげるとしたら相手が悪かった、この一言に尽きるだろう。
「阻害魔法<
阻害魔法<全反射>ーー相手の魔法を跳ね返す。
多くの制限かあるが単純にして究極の魔法。
魔力消費量は少ないがためるのに時間がかかる上、主導権を握るわけではないので誘導魔法などが掛けられている場合はあまり意味がない。また、触れた魔法にしか効果がないため毒系の魔法や精神系の魔法には効果がない。他にも構築の難度など多くの制限があるが、カウンターにもってこいの魔法。
隠蔽魔法で、<全反射>をためていることを隠し、雷華の中で最強の一撃に対して放った、この魔法は雷華の全身に激しいダメージを与えた。それと同時に雷華の敗北を告げる先生が張った魔力障壁が破裂する音が鳴り響いた。
「対戦ありがとうございました。なんとか勝てて良かったです。また機会がございましたら、是非もう一度お願いします。」
そう言いながら雷華に手を差し出す。
「こちらこそありがとう。とてもいい勉強になったよ。是非もう一度手合わせを願いたい。」
差し出された手を握り返しながら起き上がると、2人は小さく笑った。
*
「お疲れ様、咲夜、雷華」
「お疲れ様てす、咲夜さん、雷華さん」
「ありがとう結人君、大和君。次頑張ってね。」
「ありがとうございます、結人さん、大和さん。次の試合2人とも頑張って下さい。」
「うん、頑張って来るよ。よろしく、大和」
「あぁよろしく、結人」
2人は前に出る。そして、お互いに剣を構える。
現代魔法師にとって、剣などの魔法具はとても重要だ。術式を刻めば、無詠唱でその魔法を放つ事ができる上、魔力を帯びれば強力な攻撃ができる。そのため、今では魔法具は魔法師にとってなくてはならない存在になっている。
結人が使うのは前回同様、校長先生に貰った学生らしさを追求した剣。
そして、大和が使うのは刃渡り120cmぐらいのちょっと長めの剣だ。当然、大和のオリジナルの魔法が組み込まれており、結人のやつとは比べ物にならないほど強いものだ。
「やっと君と戦えるよ、結人。前々から君と戦いたいと思ってたいたけどなかなか時間が無くてずっとうずうずしていた。」
「奇遇だね、僕も1度戦ってみたいと思っていたんだよ、お手柔らかに頼むね。」
「こちらこそお手柔らかに頼むよ。」
先生の合図とともに2人は身体強化魔法を一通りかけると、一気に距離を詰めた。
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変更点
過去に公開したやつの見直しをしました。おおまかな変更はありませんが、ちょこちょこ変わってます。
「章」を設定しました。
サブの「藁科結人のss」にSSを移動しました!まだ読んでいない人は是非読んで見て下さい!
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