#10 入学への実感③

結人の人生初めての授業は現代基礎魔法学の授業だった。

現代基礎魔法学というのは文字通り、最先端の魔法式の基礎を学ぶものだ。

魔法師育成学校で最初に学ぶ科目でもある。



「じゃあまずは基本から・・・1999年11月9日<悪魔の日>に世界で初めてUCが南極大陸で発見され、そして次の日に魔法の使える魔力回路を持った我々『ネクスト』が誕生した。この2つの出来事の繋がりは分かっていないが、おそらく何かあるだろうというのが現状だ。そして2003年の6月1日に核ミサイルによる攻撃がUCに無効されることによって魔法師への期待が高まる。2004年8月27日に対UC人類防衛軍<ジルトレア>が組織される。2012年7月7日に初代序列1位、キリア=メスタニアによって世界で初めて魔法師がUCを討伐された。そして今現在では、南半球のほとんどがUCに支配されている、ってこれは誰でも知っているか・・・じゃあ桐山雷華、4種類の魔法とその違いについて述べてみろ。」


先生の問いかけに答え、雷華は立ち上がり説明を始める。


「は、はい。現代魔術学における魔法は大きく分けて属性魔法、魔術、特殊魔法、固有魔法の4種類があります。属性魔法は火、水、風、土、光、闇の6種類の系統の魔法が存在しています。次に魔術です。魔術を使用する利点として詠唱が不要な点、魔力効率が良い点、そして威力が高い点が挙げられます。そして特殊魔法です。特殊魔法は属性魔法に含まれない魔法をさします。有名なものは空間魔法や時間魔法が挙げられます。最後に固有魔法です。固有魔法はその人にしか使えない特別な魔法のことで固有魔法が発現して初めて一人前の魔法師として認められます。そのため固有魔法は一種の実力を図るための基準となっております。」


雷華は説明を終えるとゆっくりと席に座った。


周りを見ると多くの生徒がうなずいている。でもそれだけだとーーー


「よく勉強しているが、それだと残念90点だ。続きは~そうだな、水篠大和!頼めるか?」


名前を呼ばれ、大和が立ち上がる。


「はい。固有魔法の説明の補足をすると、固有魔法は心の形と言われております。当然、厳しい鍛錬も必要ですがそれ以上にどうなりたいか、また、どうしたいかを強く思うことが発現への道しるべと言われております。また固有魔法にはそれぞれの系統に適した詠唱と4つの段階があり、段階を突破するごとに保有魔力量や操作できる魔力の量が倍増します。また、第一段階を突破すると世界ランキングに載りC級魔法師として扱われています。そしてーー」

「もう十分だ、ありがとう席につけ・・・さて、お前たちに1つ伝えておかなければならないことがある。」


クラス中が息を飲む。そして立川先生は厳しい口調でを話し始めた。


「私は理想や妄想が嫌いだ。だからここでお前たちに断言しよう。お前たちは序列10位以上には絶対に。これから先の人生を全て魔法に捧げたとしてもだ。唯一可能性があるとしたら水篠と・・・いや水篠ぐらいだろう。」


「「「え?」」」


突然の先生による宣言によって、生徒全員が困惑した。そして先生は思い出話をするかのように語り始めた。


「私は昔、同年代で一番強かった。一番最後には世界大会準優勝という成績にまで上り詰めた。多くの人に期待されて人類防衛軍に入隊した。同年代最強の自分はすぐにS級魔法師になれると思っていた。でも初めての仕事で私は現実を知ったよ、仲間と一緒に苦労して上級UCを討伐している隣で、A級魔法師の先輩がまるでゴミを払うかのように上級UCを蹴散らしていった・・・それを見て、私は慢心していた自分が恥ずかしくなって、より一層努力した・・・そして今ぐらい強くなった。S級魔法師になるためには鍛錬しなきゃって思ったからな・・・

そしてあれは・・・・・・特級UCを単独討伐してA級魔法師になってすぐのことだった・・・水篠、お前は”黒白様”や”紅焔の姫”を見たことはあるか?」


「い、いえ自分は映像でしか・・・」


「他にはいないか?」


みんなは首を振った。

一般の生徒は知らなくて当然の事だろう。太平洋を飛び回っている結人達が家に帰れるのは1週間に1度あるかないか、休日なんてものは1年で数回しか用意されない。そのため、国内での活動などゼロに等しい。


「そっか、まっ普通はないだろうな・・・これは中国大陸の南の方で起きた話なんだがな、A級になって浮かれていた私は運悪く2体の災害級UCと対峙してしまったんだ。今思い出しただけでも恐ろしい龍だったよ。命の危機まで感じたその時、4色の剣とともに現れた最強と炎を纏った姫がやってきて2匹の龍を一瞬で討伐してしまった・・・当時はまだ7位と8位だったけど同じ人間とは思えない強さだったよ・・・ホントに・・・彼らがいる限り人類の絶滅は有り得ないなと思ったほどだ。でも、それと同時に私はこの2人には一生勝てないと思ったよ・・・そして私は彼らを超えるのでは無く、支えられたらなって思うようになった・・・」


【そんな風に思われていたんですね私たち・・・それにさっきの話、確かに6年ぐらい前そんなこともありましたね。覚えてますか?結人さんも・・・】


【懐かしいなぁ、それにしてもあの頃は若かったなぁ。】


【今もまだ15歳ですよ、結人さん】


「それから何度か一緒に仕事をしたんだが・・・恐ろしかったよ、同じに人間とは思えなかったよ。そしてそれ以上に・・・・・・・・・・・・かっこよかった、やっぱりあの2人はお似合いだよなぁ、みんなもそうおもうだろ?」


ーーーあれ?なんか話がおかしい方向に・・・


「ですよね先生私もそう思います。」

「世界最強の男女のカップル、憧れます!」

「俺の姫様が~」

「いやお前のじゃないだろ・・・」


女子生徒一同は目を輝かせ、男子一同は嫉妬の目を向けた。


ーーーホントここの国の人たち魔法師大好きかよ・・・


その後も討論会は続いた。いや続いてしまった。


____________________________________


読んで下さいありがとうございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る