#11 入学への実感④



討論会は、休み時間になった今もなお続いていた。

結人たちにとって人生初の授業が、まさかの内容の半分以上が自分たちのことだったのは驚いたが、それでも初めての学校生活への期待と興奮は高まるばかりであった・・・・・・


「どうだった?咲夜・・・初めての授業は・・・・・・」


「はい、とても楽しめました。想像以上に騒がしくて、それと少し恥ずかしかったですが・・・」


「ま、まぁそうだったね。僕も驚いたよ、やっぱりこの国の魔法師は国民に愛されてるね。」


日本では魔法師を一種のアイドルのように捉える風潮がある。毎年開催される全国魔法選手権にはなんと100万人以上の観客が足を運ぶほどの人気を誇る。

特にS級魔法師である結人や咲夜にはそこら辺のアイドルよりも多くファンがいる。

1度街に現れたとなるだけで大賑わいになるほどだ。



「よぉ、おふたりさん、相変わらずお熱いことで。すまんな咲夜、もうちょっと続けたいとは思うけど2人で話したいことがあるからちょっと結人借りるぜ。ごめんな。」


「わかった・・・ちょっと行ってくるよ、咲夜。」


「は、はい。では私はあちらの話し合いに参加してきますね。2人で楽しんで下さい。」



咲夜と別れた結人は樹に連れられていった。とはいっても教室の隅にだが・・・


「ねぇどこに行くの?樹、そっちは窓しかないけど。」


「まぁついてくればわかるさ、それより何人だった?」


「う~んと僕の見立てだと大和を除いて6人かな。」


「まじか、5人しかわからなかったぜ。」


「樹が見つけられないのも無理はないかな。その子は特殊だし、意図的に上手に隠しているからね。多分僕と咲夜は気づかれていないけど樹の存在はきづかれているかもね。」


この学校には隠れた逸材や特殊な人材がたくさんいる、この学校のレベルを把握し目立たないようにするため、2人は自己紹介の時にクラスメイトたちの魔力量などをはかっていたのだ。


「まじかよ。そいつは期待できるな、正直この学校で俺の相手ができるのは先生ぐらいなもんだと思ってたわ。」


「僕もいるじゃん。忘れないでよ。」


「お前には咲夜がいるだろ。だから邪魔しちゃ悪いと思ってな・・・」


「確かに。」


咲夜はちょっと、いやだいぶ結人への独占欲が強い。結人の知らない裏で何人の女の子を切ったのか・・・まぁ実際に剣で切った訳ではないが・・・



「それより向こうを見てみろ!!!これがお前を連れ出した理由さ・・・」


樹に言われた方向を見ると咲夜が楽しそうにクラスメイトと会話していた。思わず目を釘付けにされる。


結人や咲夜の存在を知っている人は家族を除くと、この世界でたったの30人ほどしかいない。

樹ならば、結人たちより多いがそれでも50人ほどしかいない・・・

それは国家機密という理由で3人の情報は二つ名と実績しか公開されていないからだ・・・そのため3人は、普通の会話というものを全くしないのだ・・・


「咲夜、楽しそうだな・・・」


「うん、咲夜が今までにあんなに楽しそうに会話したことがある同年代の女子ってアメリカの序列3位の子とイギリスの序列10位の子ぐらいだと思う・・・ありがとう、樹。」


「な、俺の行動は正解だろ?あいつこのままだと完全に話せる相手、俺らだけになっちまう。だから普通の女の子ってのも経験させないと本当にダメになっちまいそうだ。たった4年間だけど楽しませてあげたいからな。」


「まぁ仕方ないか、僕なんて樹をいれても同年代の友人は10人しかいないし・・・しかもそのうちの5人は外国人だし・・・」


「ハハハ、気にするな!俺もお前の倍ぐらいしかいないしな・・・」


「僕たちは不幸なのかな・・・当たり前の日常を得られず、毎日UCと戦ってさ・・・」


「結人、お前は俺や咲夜と出会って不幸だったか?夜明けの光のみんなと出会って不幸だったか?ーー普通じゃなくてもさ、他の人と違ってもさ、その中に楽しみを見つけることが幸せってやつじゃないか?ーーそれに見てみろあの咲夜の楽しそうな笑顔をーーあの笑顔が偽物かどうかなんてお前が一番よく知っているだろ・・・」


「そうだね・・・ありがと樹。」


「さて、結人、大和も誘って3人で屋上で昼飯でも食べるか。やっぱり学校生活といったら屋上で飯だろ!」


「うん、いいよ。咲夜には同学年の友達との時間を大切にしてあげよう。」


大和から快諾を貰った3人は楽しそうに会話している咲夜をその場に残して屋上に向かう。


屋上の扉の取っ手に手をかけたとき急にいつもの声が聞こえてきた。


【結人さん?どうして屋上に用があるんですか?】


その場が凍り付くような声が脳内に響く。声だけでわかる、お怒りのご様子だ。


【昼ご飯だよ樹と大和と食べようと思ってね。】


【昼ご飯なら私を誘ってくれてもいいのに。】


【咲夜には同級生との時間を大切にして欲しいと思ったからだよ。今夜、甘えさせてあげるから今は同級生との食事を楽しんできな。】


【わかりました。お言葉に甘えさせていただきます、それと約束を絶対に忘れないでくださいね?絶対ですからね?】


【うん、わかってるよ。ところで、どうして屋上にいるってわかったの?】


【・・・】

ーーーいっ言えない、この前こっそり結人さん探知魔法を作っただなんて・・・結人さんに知られたら嫌われてしまうかも知れません・・・はっ!もしやこれが世にいうストーカーってやつですか?!ですがあれは一方的な好意を抱いた者が行う行為だったはずです・・・私と結人さんは両想いだしそれに婚約者ですのでセーフですね、セーフ。だいたい結人さんが悪いんです、どうしてこういう時だけ・・・・・・



【そうか、じゃ楽しんできてね、咲夜】


【は、はい。】


その後3人は昼ご飯を食べ始めた。


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読んでいただき、ありがとうございます。


誤字脱字があったらコメントで教えていただけると嬉しいです。

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