第十三話(1)

 夏休みも半分が過ぎ、とうとう夏のイベントの日がやって来た。

 他のチームがどんな活動をしているのかは知らない。

 ただ、単独ライブはポイントが高い。お金に余裕のあるチームはやっているのだろうという確信はあった。


「曲の完成も、ギリギリだけど出来たし」

「服もメイクも完璧に出来る」

「あー、やっとみんなに明希を見せられるのねぇ」

「僕らを披露したら、みんなどんな顔するんだろうね」

 そう話しながら、智の叔母さんが経営する宿に向かっていた。

 ちなみに楽器を運ぶ為に車だ。運転手は俺である。


「いらっしゃい」

 俺達が宿に着くと、叔母さんが待っていた。

「お久しぶりですー!」

「智くん。大きくなったわね!明希くんも!」

 叔母さんは俺の事を覚えていた様だ。

「お久しぶりです。引き受けて下さりありがとうございます。」

「あらそんな固い挨拶は要らないわ。それよりあなた達4人でWing Knightsなのね」

「はい」

「さぁ入って、説明する事がたくさんあるわ」

 叔母さんは、快く俺達を受け入れてくれた。


 ここでは3日間、従業員として働き、最終日にライブをする。

 俺達は仕事に慣れるために、1週間前から来ていた。

 まず、着物に着替えさせられた。

 俺と尋は紺の着物。

 優と何故か智は女性の着物を…

「なんで僕だけ女装なの!?」

「あら、似合うじゃない?」

 正直、優と並んでも分からないくらい、ちゃんと女の子だった。

「なんか私より可愛くない?」

「そんな事はないよ!」

 智は全力で否定していたが、俺と尋、というかここに居合わせた全員が同じ事を思ったと思う。とね。


 仕事は大まかに分けて2つ。

 1つは食事の準備。もう1つは、お客様の接客だ。

 食事の準備は、ただ運ぶだけ。

 お客様の接客は、布団の準備から、部屋の掃除、お風呂での背中を流す仕事、食事中の話し相手などなど…

 昔ながらの接客だ。

 智はみんなの夢を壊さないために、お風呂での接客は無しになった。まぁ賢明な判断だと思う。


 そんな事を4日ほど教わりながら、イベント初日がやって来た。

 1番乗りは、やはり花音だ。

「明希ー!きゃーカッコいい!」

 花音は来るなり俺を見てそう言った。髪で顔は隠しているが、着物を着ている為だろう。

「よぉ…今回は本気出してくれるんだよな?」

 あの時の男も来ていた。

「あぁ…安心しろよ」

 今は普段の姿だが、ライブの時は見せてやる。

 男の名は静流しずると言った。その名の通り、なんだか物静かだが、隠れた熱血がありそうなやつだ。何度かそれが垣間見えているしな。


 客は女7人と男3人だった。

 10人を4人で分けると、俺が花音と静流。智が3人で来たと言う、男2人と女1人。優は女3人を担当し、余った女2人は尋に任せた。


 それから2日間。客とたくさんのことを話し、好きになってもらった。

 俺の担当は最初から知ってるやつだし、あまり自分の事を話さなかったが、その代わり、花音の事をたくさん聞いてやった。

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