第一話(3)
その後の説明は、活動についてだった。
在学中に出来る仕事には大きく分けて三つある。
一つ目は、校内やのバトルや、校外の演奏、仕事で得たポイントで先生方から貰える仕事
二つ目は、仕事をしていくうちに、依頼がかかることもあるとかいう事
そして三つ目は、校内の生徒ホールにある掲示板に、仕事内容の書かれた紙が貼られていて、自分のやりたい仕事をやる事が出来るという事だ。つまり、仕事が無ければ自分で掴み取れスタイル。まぁ当たり前だな。
最後に校内のバトルについて説明があった。
校内でのバトルはいつでも可能。場所も校内であればどこでも良いとの事。勝てば、相手からポイントをもらう事や、メンバーを一人引き抜く事は出来る。
校外の演奏に着いては自由だからこそ、自分達で出演の許可を貰いに行ったり、校内でのバトルでの様子を動画でアップして、オファーを貰ったりいろいろ。
ただ、楽器は個人の物で、この学校では演奏の事は先生に予約を取らなければ教えてもらえない。
だがらほとんどの人が自分達で上達しなければならない。それから、今までのグループ全てを見てきた人達は、当然目が肥えている為、常に新しい物を生み出さなければ、人気は上がる事なく、失敗に終わると言うのだ。
なんとも恐ろしい仕組み…
聞きながら身震いしてしまった。
「これで分かったかな?何か質問のある人は?」
先生の質問に手を挙げた者がいた。
「バンド、自分が選んだ専攻科目。どちらかに偏ってしまったら、どうなりますか?」
すると、先生は眼鏡を光らせてこう答えた。
「そんな事で偏るようでは、この先やって行けませんよ?そりゃ、自分に自信がないからと言って、前に立たない子も毎年見かけます。ですが、ならば何故この学校に入ったのですか?アイドルになりたいだけなら他にも学校はあります。他を当たってはどうでしょうか?」
先生の言葉は、あまりにも現実味を帯びた物だったから、その場の全員、心が沈むような感覚に至った。
先生の言う事は正しい。
まぁ要するに上手いことやれ!って話なんだが…
「他に質問は?」
誰も手をあげなかった。先生の先程の言葉で言うことも無くなったようだ
「無いならこれで終わります。では解散」
その後生徒達は、各教室に散って、自分の専攻する学科の説明を聞いた。
今日は説明ばかりだが、仕方ない。これからニ年間の生活を良くする物なのだから
「ではまず、カメラマンを専攻した君達に、ニ年間の課題を出します」
説明より先に課題が出て来るとは思わなかったが、説明というものがあまり無いようだ。
先生曰く「習うより慣れろ」らしい
「君達には卒業アルバム用の写真を撮ってもらう。チームでアルバムを作り上げるのだ。撮る写真は、仕事などの活動から、普段の生活までなんでも良し!このアルバムの出来で、君達の今後に関わる事もあるから、心して取り組むように」
卒業アルバムと聞けば、そんなの誰がみるんだ?と思うかもしれない。けどきっと先生は見るだろうから、普段どれだけ撮れるのかを見たいのだと、俺はそう解釈した。
あとは、カメラマンが綺麗に写真を撮れなければ、モデルが良くても、良い風には見えないからだ。
「あの、質問いいですか?」
ここでも一人手を挙げた。
「どうぞ」
「もし、バトルで誰かを引き抜かれたり、引き入れたりした場合、その人達はどうなるのですか?」
確かにと思った。その考えには至らなかったな
「そうですね、良い質問です。その場合、居た人も入ってきた人も全部をアルバムに入れて下さい。君達の活動の一貫として、起きた事ですから。それと、アルバムの大きさはどれだけ分厚くなっても構いません。なので、普段どれだけ写真が撮れるのかを君達で競ってくれても構わない。とにかく撮る!それだけだ」
説明が終わり、今日はこれで帰宅。
帰ろうとした時
「ねぇ佐倉くん。もうチーム決まってる?」
と、声をかけられた。俺はトップになった時点で、これは覚悟していたが…まさかこんなに多くなるとは…ざっと20人くらいか?
「いや、ごめんね。もう決まってるんだ」
と、断るのは少し辛い。
「そうだよね。」と、帰ってしまった。
告白してきた女の子を降る時みたいに苦しくなるのは何故だ!?いやまず、最近はあまり告白された事も無いけど…
「明希いるー?」
聞き慣れた声が聞こえた。優だ
「いるよ。今行く」
「先生にメンバー表出しに行こ!二人はもう向こうに居るよ」
「分かった」
チームは仲間内で決まっても、先生にメンバー表を見せて許可を貰わないと成立しない。
許可と言っても、了解と言われるだけだが。
「明希、遅かったね」
尋と智が職員室の前で待っていた。尋が手に持っているのはメンバー表だ
「先生、メンバー表です」
「あら、あなた達が一番乗りよ」
この人は、さっきのオリエンテーションで説明をしていた人。
「ふーん。良い組み合わせね。何より、ドラムが鈴村君なのが意外。やってたの?」
「あ、はい。吹奏楽部で少し」
「なるほどね。他の人は?」
「私達三人は高校で、同じ軽音部でした。」
「あら、鈴村君だけ違う学校なのに、どうしてチームになったの?」
先生は、意外と鋭かった。確かに、同じ学校なら智も軽音部に入っていただろう。だがそれよりも気になったのは、智が吹奏楽部で“少しやっていた”と言った所だ。
智は『絶対音感』の持ち主だから、音楽は少しの練習で、ある程度の事はできるし、俺よりリズム感が良いから、ドラムなんてすぐに出来ただろうと思った。
「僕と明希は幼馴染みなので、二人の事を紹介して貰ったんです。」
「そうなのね、うんうん。バランス良し!良いわ。許可します」
やったーと騒ぐ三人を置いておいて、先生は俺に聞いた
「佐倉くん。さっきの特典の話ね。」
「ありがとうございます」
俺は先生から封筒を渡された。なにが入っているのかは見ないとわからないが、恐らく紙だ。
「それから…」
先生は俺達四人の顔を見て言った。
「あなた達はチームを作るのが早かったからほっとしているのだけど…宣材写真が無いと、活動を始められないから、早めに取っておいてね。カメラマンに自信がなければ、プロにお願いしても構わないわ。でもこれ以降は自分達で撮ること」
「…分かりました」
そう言って、俺達は学校を後にした。
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