EX 復讐心の覚醒ーヴィクトー(後編)

 次の瞬間、激闘が始まった。

 

 ぶつかり合うリヴァスとプレィシンク。

「あなたは罪の一線を越えた!私もこれに関しては許さない!」

 プレィシンクの光の刃がリヴァスの胸を突き刺す。

 鮮血が舞い、崩れ落ちる。

「私には祝福が無いと‥‥そうか、ならいいだろう。」

 リヴァスが右手を天にかざす。

「闇の大司祭、アングルボザ様よ!私に永劫の力を!」

 突如、空から舞い降りる紫の塊。

 それは、リヴァスではなく、ヴィクトに吸収されたのだ。

「な…何故⁉」

 そんなことをしている内に、魁星が復活する。

「お前たちだけで何を話している!」

 遂に魁星までもがキレた。

 最悪の状態だ。

「俺はヴィクトとやらに負けた、ならば従おう。」

 強いものにつく。

 魁星は、その道を選んだのだ。

「俺こそがヴィクト!」

 完全に闇に支配されて行く。

「プレィシンク…貴様はどっちにつく‥」

 リヴァスが流血を抑えながら言う。

「私は‥世界の平和の願う…だからー。」

 プレィシンクは、懐から白い石を取り出した。

 精霊石と類似する白い石。

 打製石器のように鋭く尖っている。

「——。」

 それをあろうことか自分の精霊石に突き刺したのだ。

「お前!」

 魁星が止めようとするが、白い石は精霊石に完全に吸収された。

「—!———!」

 声にもならない奇声を出したプレィシンクが襲い狂う。

「精霊石を覚醒させたか…お前のような精霊に何ができる。」

 嘲笑ったリヴァスを白い石が貫き、粉々に砕き殺した。

「嘘だろ…」

 魁星もあまりの強さに動揺する。

「おい貴様…まともに戦えるんだろうなぁ…」

 ヴィクトを見た魁星が言う。

「——。プレィシンク!」

 全身が紫の煙に包まれたヴィクトが狂うプレィシンクを睨む。

「覚醒体なのは同じだろう、なら、どちらが強いのか、試してみようじゃないか!」

 ヴィクトが自分の周りにあった煙を一掃する。

「お前にはまだ自我があったのか⁉」

 あれ程の悪を受けもなお生き続ける。

「お前の生命力は相当に強いな…あとでフィルギャに伝えないとな…」

 魁星が呟きヴィクトを見る。

「悪と適合した…最強の『悪意』か…」

 一人で納得し、魁星も交戦する。

 闇の魔弾と光の魔弾がぶつかる。

「お前が何の目的でここに来たかは知らんが、今すぐに蹴散らす!」

 光と闇がぶつかり合う歴史的な大事件。

「しつこいヤツだ…」

 ヴィクトが魔法陣を展開する。

「その精霊石、貫いた!」

 ヴィクトの放った魔砲がプレィシンクの結晶を貫く。

 精霊石は粉々になり、プレィシンクが精霊の姿を保てなくなる。

「精霊石が精霊の心臓であり、それが割れればお前は消える。」

 魁星が呟く。

 その後、プレィシンクは風に溶けるように消えた。


 背後から拍手。

「誰‥‥お前!」

 ヴィクトが振り向いて驚愕する。

 ヴィクトの目に映るもの。

 先程、木端微塵に砕け散ったリヴァス・テラーその人だ。

「なぜ生きている⁉」

 魁星が魔法杖を向ける。

「簡単な話だ。私は再生された…物理的にな。」

 リヴァスは精霊石の破片を拾い集める。

「さて、私の目的はここまでだ。どう動くかはお前ら次第、この精霊は歴史から消える。」

 リヴァスが精霊石を袋に入れて口を縛る。

「お前の目的は…」

 魁星が魔弾を放つも、回避される。

「——セカンド・ユグドラシル。中間決戦か…それが終わればヤツが動き出す。」

 ヴィクトが剣、ツイン・B・ローズを取り出し、リヴァスの首に当てる。

「無駄話は終わりだ。今すぐ去れ。さもなくば——。」

「斬られたくはない。再生はできるが痛くない訳ではない。痛覚はあるからな。」

 リヴァスは紫の煙に包まれ姿を消した。


 その二年後、アニマスが創設され、総指揮官の座にヴィクトが座ったのだ。


——2年後 ヘルヘイムー


「アングルボザ様…アニマスは無事完成したと連絡が。」

 リヴァスは跪き、椅子に座る黒いドレスの女性に連絡する。

「そのようね…左目。」

「はい?」

 リヴァスが聞き取れなかった訳ではない。

「左目を捧げなさい。」

「一体…誰に?」

 アングルボザの指示は絶対。

 それは従い始めた『あの時』から同じだ。

「従者なのなら、ミーミルの泉へ向かいなさい。」

「——。判りました。」

 アングルボザに一礼し、部屋を出る。

 ——振り返るその目には、憎悪と殺意しかなかった。

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