4 若人の正体
倒れる若人は、起き上がり、剣をしまう。
「さぁ、話を聞かせてもらおう。」
ヘクセレイは岩に腰掛け、事情聴取を始める。
「ここは今、激戦区だ。俺に勝てなければここから際には進めさせないつもりだった。」
若人は歯車印の剣を大地に突き刺す。
「この剣…」
やはり、ヘクセレイには見覚えがある。
「終焉の戦『ラグナロク』で使用された、『レーヴァテイン』。
「それがなんだ…」
若人は血と泥でまみれた顔を拭う。
「——。」
「なんだ…」
「その剣は、ラグナロクで消滅したはずだ。」
ラグナロク、つまり750年前に消滅した剣。
「その剣が目覚めるときは魔獣の復活が来る時だ。」
つまり、こいつがこの剣を持つ意味。
それは魔獣の復活を意味する。
「あぁ、恐れていることが起きるさ…『セカンド・ラグナロク』。」
ラグナロクとは魔獣の名称でもある。
この世界に二体はいない。
「どういう意味だ。」
セカンド・ラグナロク。
ラグナロクがまた再来するということだろうか。
「人災だけどな。」
「なんだと?」
人によって作られるラグナロク。
それこそが、セカンド・ラグナロク。
「詳細は…」
「ロキという予言師によれば、魔力保持者とヴァイオレアの最後の戦いだと。」
若人が述べる。
「お前の…正体は⁉」
ヘクセレイはついに思い出す。
この顔、剣、そのすべてに当てはまるもの。
「あぁ、バルドル。それが俺の名だ。」
だろうと思った。
「人災によるセカンド・ラグナロク。」
人々が招くことなら止められるのでは?
「世の中、そう簡単にはいかない。」
バルドルが悲しく言い放つ。
「だから、今から備えるんだ。セカンド・ラグナロクを乗り切るために。」
ヴァイオレアの数を減らすとでも言いたいのだろうか。
「全てのヴァイオレアを封じ込めることは出来ない。」
それは当たり前だ。
ヴァイオレアがいるのはこの大陸だけではない。
「限りなく、ヴァイオレアを少なくすることは出来る。」
パルドルが何を言いたいのか理解できない。
「セカンド・ラグナロク…」
1500年前の人々は考えもしなかっただろう。
「ここは、記憶の深淵に行くしかないな…」
相談しよう…
記憶の深淵。
かつて、
「——。バルドル、戻ってきたら共闘する。俺はちょっと用があってな。」
「分かった。早く戻って来いよ。」
行くべき場所。
記憶の深淵。
試練だ。
バルドルと別れ、記憶の深淵に向かう。
このアルカナスト領にあるかどうかは分からんが。
いろんな場所に点在するが、正確な場所は気象によって変わる。
「ッ⁉まさかこんなところにあるとはな…」
一瞬だった。
金色の泉が出現した。
この泉が記憶の深淵。
亡くなった者と会話することが出来る空間。
ヴァルハラに転移するとも言われている。
「——。」
記憶の中に入る。
愚策だと思う人もいる。
「なんにせよ。入る以外道はない。」
すぐに入ってバルドルの元へ戻る必要がある。
「——1500年前のエインヘリアルの元へ!」
宣言して、泉の中に飛び込む。
先代エインヘリアル。
ライナの元へ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます