第28話 将来の付き合う人を決めたい

現在の問題を考えてみた。

キスの事は一応置いて、だ。

千佳は相当に苦しんでいるのだが生活保護とかは嫌だという。

その為の俺は.....翌日の事だ。

千佳の住んでいるアパートに再びやって来ていた。


今日は千佳は大学などを休んでいる。

完全に安静だ。

病院にも行ったらしいが安静大事、だそうだった。

此処に来た目的は千佳に会いに来た.....のもあるが本当の目的は違う。

それも目的なんだけど、だ。


「.....」


俺は訝しげな顔でアパートの管理室をノックした。

そして顔を見せたのは.....お姉さんだ。

30代ぐらいの、である。


やけに色気が有る。

口紅とか塗っていてその。

香水まで。


そしてYシャツに胸元が開いている。

何だこのお姉さんは!?

こんなエッチなお姉さんとは思わなかったぞ!


思いつつ見ていると.....管理人さん。

つまりこの人。

長妻優子(ながつまゆうこ)さんがその。

艶めかしい感じで手を差し出して笑みを浮かべながら俺に、いらっしゃい、と声を掛けた。

髪をかき上げる仕草がまた.....。


「今日は宜しくお願いします」


「待っていたわ。貴方が白馬の王子様ね」


「はく.....え!?.....な!?」


「だって千佳ちゃんの白馬の王子様でしょ?君。そんな感じだったから」


「い、いや。まあ.....うん。はい.....」


俺はドギマギしながら答える。

今日この人に会う理由。

事前に連絡していたのだが、家賃の事とかの相談だ。


頼み込みとも言えるかもだが。

そしてこの後にはコンビニの店長さんにも会う予定だ。

今は休んでいるから千佳に感付かれる可能性は低いだろう。


そんなチャンスを利用したのだ。

そのまま俺は一礼して管理人室にお邪魔する。

畳が目立つちょっとだけ広い部屋だった。


それから俺は.....促されてちゃぶ台の前の座布団に座る。

管理人さんが早速と興味深そうに俺に、ようこそ、と言いつつニコニコして話し掛けてきた。

それから真剣な顔になる。


「.....千佳ちゃん大変ね。.....全部の事情は聴いたわ」


「.....そうですね。.....だから俺としても救ってやりたいんです。何でかって言えば.....俺の昔からの知り合いなので.....」


「.....そうなのね。貴方はやっぱり白馬の王子様ね」


「その言い方はちょっと.....」


「あら?私見ていたのよ?貴方が一生懸命に千佳ちゃんを運ぶ様子。この人すっごいと思いながら、ね」


直で見ていたのかよ。

と思いつつ俺は少しだけ赤くなる。

困ったもんだな。

あんな必死な汗かいている姿を見られたとは.....。

考えているとお茶とお茶菓子を淹れて出しながら俺の元に戻って来た。


「それで白馬の王子様はどの様なご用件?」


「.....」


胸が大きくて胸元が開いていて刺激が強いんですが。

と思いつつも俺は、いけない、と思いそのまま咳払いをした。

それから真剣な顔をしてから長妻さんに向く。

そしてこう言った。


「.....その、家賃を引き下げてくれませんか。千佳の。.....暫くの間」


「成程ね。予想通りね。そうね.....。.....でも.....それには理解は出来るけど今直ぐには出来ないわ。住民に知られたら厄介な点もあるし格差も生まれるかもしれないし。.....こちらも色々あるしね」


「.....駄目ですか.....」


「.....ええ。.....でもね。千佳ちゃんの正直言って今の状態はマズいと思っている。だから.....千佳ちゃんを暫く私が、管理人室が一心で見守る事にしたわ。食料とかあげるつもり。家賃はずっと滞納しても構わないって事にしてあるから。何時か返してくれれば良いってね。あの子は.....本当に頑張っているの。大学の事とかも奨学金をなるだけ借りない様にしながらね」


「.....ですよね」


まあそれはそうと.....。

私、白馬の王子様と千佳ちゃんはお似合いだと思っているけど。

とニコッとする長妻さん。

俺は赤面しながら俯く。

でも俺と千佳は似合わないっすよ、と話した。


「あら?それはどうして?」


「.....俺は.....過去の経験から.....です。女子にイジメられて.....」


「.....そうなのね」


「.....はい。人を好きになる。それが怖いんです」


「.....」


そうね.....それは確かに厄介かもね。

貴方がどんな経験をしてどんな事で今この場所に居るのかそれは分からない。

だけど1つだけ言えるとするなら.....私もハブられていたわ。

と答える長妻さん。

俺は驚きながら長妻さんを見る。


「.....私、顔立ちが整っているじゃない?無駄に胸も大きいじゃない?.....これは全部望んだ訳じゃ無いのに女子にかなり妬まれてね。ずっと中学も高校も1人だったのよ。最悪な気分だった。でも君と私とでは天と地の差があるけどね。君よりも軽いから。でも知っておいてほしいのは女性がみな怖い存在じゃ無いわ」


「.....!」


「君はとても優しいわね。本当に.....私が守れないものも守っていけそうだわ」


「.....俺はそんなに守れるような人間じゃないっすよ。優しくもない」


「いや。絶対に守ってくれる。千佳ちゃんの.....白馬の王子様だからね」


俺は真っ赤になりながら.....その言葉を聞く。

そして.....苦笑した。

でも本当に優しいな、この人。

見た目に寄らず、だなって思う。

やっぱり人は見るだけじゃ駄目なんだな。


「でも絶対に守ってみせるわ。.....千佳ちゃんを」


「.....ですね。俺もそうです。.....悲惨な過去を知っているから」


「そうね。互いにね。.....貴方と手を取ったら絶対にやっていけるわ。千佳ちゃんを守る事を」


「.....はい」


それから俺は.....長妻さんから色々聞きながら俺は長妻さんの管理人室を長妻さんと一緒に後にした。

そして.....上の階に上がってから千佳の元へ向かった。


インターフォンを押すと直ぐに千佳が出て来る。

驚いた目をしながら、だ。

だけどまだ.....顔が青いな、って思う。

ウェーブの髪はストレートになっていて素顔だ。

化粧が無い。


「ど、どうしたの?長妻さんも」


「白馬の王子様と一緒に様子を見に来たのよ。アハハ」


「.....えっと.....」


「そういう事だ。.....お前が心配だったから」


「.....え、っと.....」


かあっと真っ赤になる千佳。

俺を見ながらモジモジしている。

その姿を見て俺も思い出す。


それはあのキスの事を。

それから俺も真っ赤になった。

するとその隙に対して長妻さんが直ぐに侵入してくる。


「あらあら~?何が有ったのかしら?」


ニヤニヤする長妻さん。

それから俺達を見てくる。

俺と千佳は.....顔を見ながらまた赤くなる。


意識が混濁していたのにそれでもキスをしたのを知っているのかコイツは?

思いつつ俺は.....恥ずかしくなる。

そして顔の赤さを隠しながら千佳と一緒に答えた。


「な、何でも無いです。長妻さん」


「.....だな。うん」


「.....」


「.....」


困ったもんだな。

どうしたものか、と思う。

互いに恥じらいながら見て居ると長妻さんが、それはそうと、と笑顔を見せた。

そして俺達の背中を押しながら、こんな場所でずっと話していても仕方が無いからね、と長妻さんはウインクした。


それからそのまま千佳の家の中に3人で入る。

いや.....良いのかこれ!?

だが俺の心配は千佳には特に気になっていない様だ。

諦めモードである。

千佳ちゃん大丈夫?、と長妻さんが千佳に聞いて答えているからでもあるか。


「すいません。長妻さん」


「良いのよ。でも貴方達の事は後で聞かせてね。何があったか」


「い、いや.....」


「ウフフ。こういう恋の関係は私好物なの。アハハ」


「.....えっと.....えっと.....」


俺は苦笑い。

それに反して舌なめずりをする長妻さん。

まさか意識が混濁していて千佳が俺にキスをしたって事は言えないと思う。

思いつつ俺は互いに赤面で困惑した。

それからそのまま互いに苦笑いを浮かべる。


「まあそれはさておき。まだ休んでいるの?千佳ちゃん」


「はい」


「そうなのね」


「本当に良い信頼関係なんだな。お前と長妻さんって」


「そうだね。.....うん。アハハ」


千佳は控えめに笑う。

俺はその姿に柔和になりながら、千佳、と話す。

それに、な。何?、と返事した千佳。

そして俺は.....顎に手を添えながら伝える。


「何かあったら言えよ。すぐ飛んで来るから」


「.....う、うん」


「あらあら。良いわねぇ。アハハ」


長妻さんの冗談はさておきだ。

本当に俺に出来る事なら何でもしたいもんだが.....そうだな。

今出来る事、か。

思いつつ千佳を見る。


「千佳。.....デートしよう」


「.....へ?」


「.....デートだ。良いか?」


「い、いきなり何を言い出すのッ!!!!!」


千佳は逆上して真っ赤に染まる。

俺はその姿に長妻さんを見る。

長妻さんは先程の考えの事を思い出した様で、頷く。

実は長妻さんにはこう言ったのだが。


『長妻さん。俺の貯めたお金で千佳に少しだけでも電化製品とか1台ぐらいしか買えないですけど買ってやりたいんです』


『でも余裕は無いんでしょ?君にも』


『余裕は無いです。でも千佳を見捨てては置けないですから』


『君は.....本当に白馬の王子様だね』


と、だ。

そう俺には余裕はない。

だけど.....大学の学費を稼ぐのは十分に出来た。


少しぐらい電化製品を買ってやりたいのだ。

暖かくなる様な、だ。

だからデートに誘ったのである。

長妻さんからもお金を少しだけ預かった。


「デートしたいんだ。俺はお前と」


「.....い、いや.....でも.....私は.....」


「千佳ちゃん。羽を伸ばすのも大切よ。.....貴方は特にね」


「.....分かりました。.....本当に行って良いの?いー君」


「.....ああ」


分かった、とニコッとする千佳。

そしてデートの約束が決まると同時に。

取り敢えずの作戦がスタートした。

俺は.....千佳に何か大きなプレゼントを、と思う。

よし、やる気が出てきたな。


「.....でも何で突然.....デート?」


「.....それはな。色々あってな」


「.....?」


千佳が首を傾げながら俺を赤い顔で見てくる。

俺は、秘密だ、と答える。

そして長妻さんとは見合ってから笑みを浮かべる。

それから.....俺は決意を新たにした。



家に帰ってくると学校から帰って来たばかりだろう。

夜空が居た。

そんな夜空は俺に対してニコッとする。


そして.....次に俺に真剣な顔で向いて来た。

俺は目をパチクリしながら.....夜空を見つめる。

どうしたんだコイツは。


「どうしたんだ?夜空」


「実はね。お兄ちゃん。.....お話があるの。今まで隠していた話なんだけど」


「.....え?何の話だ」


「.....そろそろこの事を決めようと思ってね。時が来たと思ってる」


「.....?.....何をだ?」


意味が分からない、と思っていると。

夜空はこう答えた。

お兄ちゃんの好きな人の千佳さん、と夜空は笑顔を見せる。

俺は、え?、と声を発した。


それから俺は愕然として、は?、と聞き返す。

今なんて言ったのだ。

思いつつ見つめる。

そうしていると夜空は、少しづつソファから歩き出した。

そしてこっちに寄って来る。


「.....実はねこの事はみんな計画していたの。私、田辺さん、明日香、雪。これは勝てない勝負だってね」


「.....ちょ、ちょっと待て。俺が一体どう千佳が好きと.....判断したんだ」


「.....見ていれば分かるよ。千佳さんにはここ最近、他の人と接し方が違うからね。それにお兄ちゃん。昔からの知り合いだったら勝てないと思うよ。普通に考えたら昔から一緒のずっとお兄ちゃんが愛している人に勝てると思う?」


俺は見開く。

そして俺に向いて来る夜空。

少しだけ悲しげな顔をしているが.....決意をした様な顔だ。


お兄ちゃん、気付いて。

貴方は.....千佳さんが好きなんだって事を、と。

そんな馬鹿な?俺が.....?


「いやいや。俺はだって.....恋をしないつもり.....」


だが直ぐに千佳の顔が浮かんだ。

俺は.....赤面になる。

そんな馬鹿な事が!?


思いつつ.....俺は頬に手を添える。

あり得ない。

こんな事は有り得ない。


「女子は色々な面で勘が良いんだよ?そこら辺は舐めないで。ここまでやれて来れたのはお兄ちゃんが居たから。まあだから貴方を応援する方向に動き出したの」


「.....!」


「.....お兄ちゃんと千佳さんが結ばれるのは残念。私が勝ちたかったけど.....是非とも幸せを祈らせて」


「.....お前.....」


ただただ何も言えなくなった。

そして俺は俯く。

そうなのか.....と思いながら。

俺は.....幸せ者だな本当に、だ。

思いつつ.....俺は涙を浮かべながら夜空を見る。


こうして俺はデートもするが。

俺は.....千佳に告白する事になってしまった。

これで良いのだろうか.....?、と思ってしまう。

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