第20話 壁は乗り越えなくてはならない
「来たね!」
「そうですね。先輩」
「やはりこの辺りの街の海は良い!」
そんなこんなをしている間にあっという間に5月に入った。
丁度5月といえばゴールデンウィークが有る。
そのゴールデンウィークだが、俺と雪代先輩、そして長谷川先輩、俺、千佳、そして遠山と、丁度そのサークルメンバー5人で漫画研究を深める目的で6つぐらい駅が離れた俺の街から離れた街に向かい。
そして煌びやかな海が見える海辺丘駅に来る。
千佳もバイトが入ってない為に来れた。
何というか明日香とか夜空とかがかなり反対していたが。
部活だから仕方が無いだろ、とそれを押し切ってやって来た。
俺はさんさんと降り注ぐ日差しを見ながら笑みを浮かべる。
そうしていると雪代先輩がふふーんと胸を張った。
「漫画研究の目的ではこの街は絶対に外せないんだよね」
「?.....どうしてですか?雪代先輩」
「この街には丁度、漫画ミュージアムが有るの。だから.....外せないんだよ」
「そうでしたっけ?.....俺、まだまだ勉強不足です」
「もー。まだまだだね。山寺君は」
俺は後頭部に手を添える。
そうだな、まだまだ勉強不足だ。
俺は.....サークルのメンバーなんだから勉強しないとな。
と思っていると横からツッコミが有った。
「イスカ君。あまり深く思わなくて良いよ。イスカ君の場合、真面目にやり過ぎて頭が沸騰すると思うから」
「そうは言ってもな。千佳」
「アハハ。もし分からなくても私が教えてあげるから」
笑顔を浮かべる千佳。
そんな千佳の服装になんだか目がいく。
千佳の服装は可愛らしい服装になっている。
どんな可愛い服装かと言えば.....そうだな。
千佳らしからぬスカートを履いている。
ユカシユルニットってやつだっけかこれ。
それにスカートに少し羽織っている。
「可愛いな。千佳。お前の服装」
「え!?.....あ、有難う.....可愛い?」
「ああ。髪形もその。.....前髪を留めているヘアピンも可愛い」
「.....も、もう。馬鹿.....」
千佳は真っ赤になる。
すると君達は本気で恋人の様だね、と苦笑いの声が聞こえた。
遠山が発狂している。
長谷川先輩もニヤニヤしていた。
それから.....付き合えばいいのにな、山寺、と言う。
「俺はお前と速水はお似合いだと思うぞ。下の名前で呼び始めたしな」
「.....アハハ。有難う御座います」
「.....ねえ。イスカ君」
「な、何だ。千佳」
私、この旅行で落としてみせるよ。
君を、とニコッとした。
俺は真っ赤に染まりながら、いやいや!みんなの前で!、と慌てる。
すると千佳と.....雪代先輩が顔を見合わせてニヤッとする。
それはどうも何か計画がある事を.....匂わせていた。
俺は顔を引き攣らせる。
「ぼ、僕だって頑張ります」
「遠山.....お前は無理だと思うぞ」
「酷いですよ!長谷川先輩!」
「いや、だって.....既に速水は山寺に恋をしているんだから。完璧に無理だと思う」
「酷い!」
長谷川先輩の苦笑に遠山は俺を見てからジト目になった。
俺は.....遠山に苦笑いを浮かべる。
本当に好きって事は分かるんだが、と思いながら、だ。
だけど叶わない恋だろうな、とも。
「さて。それは良いけど早速、漫画ミュージアムに行こうじゃないか」
「ですね。雪代先輩」
「そうですね」
俺達は歩き出す。
その中で遠山からこんな呟きが聞こえた。
僕だって無理ってのは知っています、と、だ。
俺は.....その言葉に遭えて返事はしなかった。
☆
「漫画を取り揃えてあるな」
「ですね。歴史とか文化とか成り立ちとか」
「良いですねこれ」
「だな。千佳」
そんな会話をしながらショーケースが沢山有る室内を巡る。
遠山も目を輝かせてショーケースの中を見ていた。
俺はその姿を見つつ.....千佳を見る。
千佳も興味深げに見ていた。
それから俺もショーケースを見る。
貴重な有名な漫画家の生原稿とか置かれている。
価値は相当なもんだろうな。
俺は考えながら.....複製原画とかも見る。
「.....綺麗だね。山寺君」
「.....そうですね。雪代先輩」
そうしていると。
じゃあ此処からは班行動をしてみるか、と雪代先輩が提案した。
それから、千佳と山寺君。
そして私と長谷川君と遠山君で。
と分別した。
え!?、と俺と遠山が声を発する。
何でそうなる。
「遠山君。私に付き合ってくれるよね?専門知識が要るから」
「で、でも.....僕は.....速水さんと.....」
「まあまあ。後で何とかしてあげるから」
今は、ね?と説得しながら。
遠山の背中を押しながら去って行く雪代先輩。
俺達にウインクしながら、だ。
そうしてから俺と千佳が残された。
俺は千佳を見る。
千佳は俺の手を握った。
そして赤面で俺を見上げて潤んだ目で見てくる。
「え、エヘヘ。デートだね」
「.....これはお前。計画したな?」
「それはどうかな。計画じゃ無いかもよ?」
「.....」
そして千佳は俺の腕に腕を回した。
それから.....歩き出す。
俺は赤面をせざるを得ず。
されるがままになっていた。
そして俺の横で恋人の様に、これ綺麗だね、とか言う千佳。
「そうだな。確かにな。これ俺も知っている漫画だ」
「私も好きな漫画だよ」
「面白いよな。この漫画」
「だね」
そして千佳は手を下ろしてきて俺と恋人繋ぎをした。
俺は、!?、と思いながら千佳を見る。
それから千佳は手を握る。
しっかり、だ。
夢が叶った様に嬉しそうな解ける顔をする千佳。
「.....えへ、エヘヘ。だから言ったよね。私、積極的に攻めるって」
「.....お、オウ.....」
「えっとね、私ね。決めたの」
「.....な、何をだ」
君に改めて告白する、と、だ。
俺はボッと火が点いた様に真っ赤になる。
そ。それは、と慌てる。
千佳は俺を見上げながら、エヘヘ大好き、と呟く。
「.....イチャイチャだから」
「他の人が見てるってお前.....」
「構わないよ。私、君が好きだから」
「.....何でお前そんなに俺が好きなんだよ.....!?」
「私?.....私は君に助けられた。だから好きになった」
何を?、と俺は見上げてくる千佳を見る。
そんな千佳は、覚えてないの?、と目を丸くする。
そしてこの様に話してきた。
私が初めての大学で迷っていた時に.....君が道案内をしてくれて不安な心を解してくれたの。だから好き、と、だ。
それ以外にもまああるけどね。例えば.....助けられてばかりだから、と。
俺はそんな事あったか?、と思いながらも口には出さず。
手の感触を感じていた。
暖かい。
俺は更にもう茹でだこレベルで赤くなる。
「.....と言うかこれ、わ、私だって本気で恥ずかしいんだからね。君だけじゃ無いから」
「じゃあするなよ.....お前」
「嫌。せっかくのチャンスなんだから」
「.....」
そして歩き出す千佳。
そうしてから.....俺に笑みを浮かべた。
俺はその姿に心臓が高鳴る。
困ったもんだな、と思いながら.....目の前を見る。
そして.....俺は青ざめた。
「.....どうしたの?イスカ君」
「.....いや.....」
目の前の.....休憩場所。
そこに女性が居る。
だが.....その女性の顔は見た事がある。
俺は唇を舐めてそのまま立ち去ろうとする。
だが声がした。
「久しぶり」
「.....!.....須崎.....」
「.....彼女?その女の子」
須崎.....智子(すざきともこ)。
成長しているが整っている顔立ちは同じだ。
そして長い髪も。
超えなくてはいけない壁が.....いきなり前に出現した。
須崎は俺を見るなりハッと鼻で笑う。
「貴方は恋する事は出来ない。貴方みたいな弱い奴にね」
「.....」
「何?この人。イスカ君」
不愉快そうに眉を顰めてその女を睨む千佳。
俺は.....悲しげに真実を告げる。
この場所に何故居るのか知らないけど、だ。
「.....元イジメっ子だ。.....俺の」
「.....え?.....何でこの場所に」
更に警戒心を持ってから千佳は須崎を睨む。
須崎は、貴方も大変ねこんな奴に付き合うなんて、と言葉を発した。
この言葉に千佳は、そんな事無いです。私は幸せです。この人と一緒で、と言葉を発する。
貴方の様な人には何も分からないでしょうけど、とも、だ。
すると須崎は、さぞ貴方は不幸な人生を送ってきたのでしょう、と下げずんだ。
「.....須崎。何故この場所に居るんだ」
「.....ああ私?私は.....暇潰しって感じかな。漫画とか下らないと思いながら」
「漫画が下らないとか失礼ですね。.....じゃあ何でこの場所に居るんですか。暇つぶしならまだあるでしょう」
「食いつくな。千佳。駄目だ。これ以上この女と話しても無駄だ」
俺に罰ゲームと称して嘘告白を行い俺に水を掛けた女。
何というか.....俺の尊厳も踏み躙った。
俺は.....そんな女を見ながら盛大に溜息を吐く。
そして.....須崎を見た。
取り敢えず.....どうするか、と思いながら。
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