第2話 義妹の襲撃(更に編集)

草薙雪さんという俺の教え子の高校2年生の現役の女子高生。

俺が勤め始めた家庭教師のアルバイトでの初めての生徒。

女子高生という事でかなり内心ドギマギしていたがそれなりに慣れてきた。

しかしやはりな。

雪さんは良い生徒だ。


見込んだ通りかなり理解度が早く。

本当に頭の回転が良くて勉強の伸び方が良い。

雪さんは本当に天才だと思う。

基本的にやり方が、脳の使い方が上手くいっておらず詰まっていたのだ。

だから俺はそれを解きほぐす役割だ。


その全てをまるで積み木を組み立てる様に考えながらこの先などを見据えながら俺は雪さんに勉強を教えた後、帰宅の為に玄関で靴を座って履いていた。

すると.....雪さんがゆっくり頭を下げてくる。

そして透子さんも、だ。


「山寺先生。本当に有難う御座いました。本当に良い先生で良かったです」


俺はその言葉に笑みを浮かべてゆっくりと、良かったです、と回答した。

雪さんと透子さんは俺をにこやかに見ている。

俺はその姿をそれぞれ見つつ頭を下げた。

それから草薙さんに改めて向く。

そして頭を下げて意を決して顔を上げた。


「透子さん。.....雪さんは必ず成長します。私が雪さんを導きます。良い成績が取れる様に、です。その為に私めの会社を選んでくれて感謝致します」


「そんなにかしこまらなくて構いません。.....本当に有難う御座います。.....雪も心から喜びます。.....ね?雪」


「はい。山寺先生。とても嬉しいです。その様に仰って頂きまして。.....山寺先生に出会えて良かったです」


たった1日でそこまで言ってくれる。

良かったな.....雪さんに俺を選んでもらって、と思いつつ俺は頬を掻く。

少しだけ恥ずかしくなった。

でも何でそんなに言ってくれるのか、と思っていると雪さんがいきなり俺をジッと見てきた。


それから、うーん。やっぱり先生何処かでお会いしましたかね?、と聞いてくる。

俺は?を浮かべてから顎に手を添えて考える。

成程な。その影響でそれだけ言ってくれるんだな、と思いつつ、だ。

言われて考え込む。


実の所。俺も見た事がある気がしたが、と思ったがそれは多分無い。

こんな美少女を見た事はないから、だ。

だってそうだろ。


もし会っていたら覚える筈だ。

そして、会って無いと思います、と回答すると雪さんは、そうですかね.....、と、うーん、と顎に手を添える。

それから首を捻った。

すると雪さんの後ろから、コラコラ、と声がする。


「雪。先生が困っているわよ」


「.....あ、先生!すいません。.....脱線話で引き留めてしまって」


「いや。大丈夫ですよ。雪さん」


それから靴をゆっくり履いてから雪さんに向く。

そして草薙さんをゆっくり見る。

ではまた今度で.....本日は.....失礼します、と俺はにこやかに2人に話した。


それから手を振って見送られながら草薙さん家を後にする。

俺はキーで車の鍵を開けて乗りながら、もう一度考えてみる。

でもやっぱ会った事は無いな。

と言う結論に達し。

ドライブにしてから鼻歌交じりでそのまま発進した。



「.....ふむ.....」


取り敢えずは今のバイトはそれなりに上手くやっていけそうな気がする。

一応の初日を終えてから俺はその様に思う。

上手くいったから、だ。

馴染んでいるという事だろう。

簡単じゃ無いけど.....それなりに頑張ろう。


思いつつ俺はゆっくり雪さんの為に課題を作ったりする。

雪さんの今後の勉学の計画などを立てていかなければいけないのだ。

じゃないと雪さんの為にならないしな。


それに俺が.....やると言ったのだからやらないといけない。

そして定森先生は言った。

こういうのは計画が大事だ、と。


懐かしい定森先生の顔を浮かべつつ俺は少しだけ柔和になりパソコンで予定表、計画表などを創っていく。

顎に手を添える。


「.....あの子の.....得意分野、そして不得意分野は.....と」


顎を撫でる様な仕草をしながら色々と抜かりが無いか見る。

その時だ。

俺の部屋のドアがコンコンとノックされた。

目の前に置かれてあるパソコンを弄ったまま俺は母さんに返事をする。

この時間だと母さんだろう、と思いながら、だ。


「母さん。後にしてほしいんだけど。今ちょっと忙しいんだ」


が。

何故か知らないが返事が無い。

それどころかその言葉にドアのノック音がさらに激しくなり、ドンドン!!!!!、に変わった。

な、何だ!?、と思いながら俺は慌てて駆け出して行きそのままドアを開ける。

そして信じられない光景を見る事になった。


何があったかと言えば夜空が居る。

かなり不愉快そうな目をしながら、である.....が。

え?ちょっと待て、どうなっている。

嘘だろう!?


「.....お、お前。どうなっているんだ夜空!」


「何が?.....ノックぐらい珍しくないでしょうに」


「珍しいって!お前が俺の部屋に来る事なんて天地がひっくり返っても無かっただろ。それにノックをする事もだ!部屋に入る時は.....」


「.....確かにね。今まで勝手に入ってたし」


そんな感じで特に表情を変えないまま呟きつつ夜空は俺を見上げる。

眉をそれなりに顰めた。

でもそんな事は良い。

何だ?本当にどうなっているのだ。


先ず先に説明したが有り得ない状態だ。

一体何の用事だ、と思いつつ俺は動揺しながら夜空を見ていると、貴方.....家庭教師のアルバイトし始めたんだってね、と夜空は言い出した。


俺は目を丸くしながらその言葉に素直に答える。

頷きながら、だ。

そして答え.....あれ?

それ話したか?俺。


「.....それは確かに。俺の大学費用が払えなくなりそうだからな.....何でそれを知っているんだお前」


「.....まあそれだったら仕方が無いのかも.....その。出来れば今の子から今の担当している子から外れてくれない?.....女子高生だよね」


「え!?確かにその通りだが.....というか、え?何でそこまで知っているんだ!」


「.....草薙雪だよね。.....担当の女子生徒の名前」


「ちょ、ちょっと待て。何でそんなに知っているんだ!?意味が分からないんだが!

?」


いや。本気で意味が分からないんだが.....!?

俺は考えながら青ざめる。

情報が洩れている!?


何処かで.....俺の散々気を付けていた情報が?

でもちょっと待てよ。

それは無い気がするんだが。


幾ら天才のコイツでもそれは無いだろ。

ハッカーでもあるまいし。

だとしたらどうなっている本当に。


それとも心を読めるのかコイツは?

割とマジに、だ。

思いつつ顔を引き攣らせつつ夜空を見る。

すると夜空はこう回答した。


「えっと。雪は.....私の友人だから。.....雪から新しい家庭教師が来たってメッセージが来たんだけど.....何だか言っている容姿とかが全部イスカにそっくりだから。.....その。かなり良い人だからって来たけどね」


「.....え.....!?」


「.....雪の事が心配だから本当に離れてもらえる?」


「.....いやお前.....それって.....本当に?」


何だよその運命って!

ジト目で俺を見据える夜空。

俺は一気にまた青ざめながら.....夜空を見る。

何か嫌な感じを見せながら.....俺を見てくる夜空。


俺は額に手を添えて本格的にどうするべきかを考える。

神様。割とマジにアンタという奴は何なんだ、と思ってしまった。

でもそれがどうであれ。

俺の意見やら反論はキチンとしないとな。

思いつつ俺は青ざめているのを落ち着かせながら盛大に溜息を吐いた。


「夜空。本当に嫌なのは分かるが.....仕方が無いだろう。これも仕事なんだから」


「.....何で。担当を外れる事は可能でしょ。それぐらい簡単でしょ?おかしいんだけど」


「そんなに簡単な訳が無いだろう。会社側の事もあるし会社は俺の事を信頼しているんだぞ。色々な人達が。だからそんなに簡単に離れる訳にはいかないんだよ。無理なものは無理だ」


「.....」


ジッとかなり不愉快そうに俺を見てくる夜空。

そこまでコイツには信頼されてないんだな.....、と少しだけ落ち込む様に考えた。

でもまあそれなりに仕方が無いか、と思う。

何故かというと仲悪いしな。


だって自身の友人の事でもある。

だからまあ本当に心配なんだろうな、と思える。

しかしそれはそうと驚愕だな.....雪さんも俺もどっちもどっかで見た事があるとは思ったが.....まさかだった。

本当に何だこの巡り合わせは?

まるで.....箱庭での人形劇の様だな。


しかしどっちにせよ。

それはそれ。これはこれ、だな。

取り敢えずは.....落ち着かせる他無い。

思いつつ俺は夜空を見据える。


「取り敢えずは安心してほしい。俺は変な真似とか嫌な真似はしないから。そう言っても安心は出来ないかも知れないが」


「.....」


「そもそも家庭教師ってのは神聖な職業で真面目な存在だ。.....だから生徒に手出しなんかする訳無いだろう。家庭教師の中にも変人は居るかもしれないが俺は違う。お前がそれで安心するかどうかは知らないけど」


「.....まあそれだったら一応、信頼するけど」


でも。だけど、と言葉を発する夜空。

だけど直ぐに首を振ってからそのままさっさという感じで出て行く。

何か安心させる事とかが出来なかったな。残念だ。

信頼とかも、だ。


しかし本当に親友想いなんだなって思える。

まあその。

ドアを閉めて行ってほしかったけど.....贅沢だよなそれは。

アイツだし仕方が無い。


でも一応。

仮にも1パーセントでも分かってもらえた様で良かった。

思いながら俺はまた踵を返して課題を作るのに取り組んだ。

よし、明日.....雪さんに色々渡そう、課題を。

テストもしないとな。



「今日も是非共に宜しくお願いします。山寺先生」


「宜しくお願いします。雪さん」


翌日の事だ。

草薙さんの家に向かった時の事。

深々と頭を下げる雪さん。

草薙さんは奥に行ってからの事だ。


笑み合ってから俺達は無言になった。

うーん.....。

マジに困ったもんだな、と思う。

本格的に、だ。


「.....」


「.....」


雪さんの口数が少ない気がする、と思ってしまった。

階段を上りながら俺は雪さんを見る。

まさか、と考えながら、だ。

雪さんはその目線に気付いた様に俺を見てから少しだけ赤くなりながらゴニョゴニョして、その、と言葉を発し始める。

俺を見据えながら、だ。


「まさか.....その、山寺先生が夜空ちゃんのお義兄さんだとは思わなかったです。衝撃です。何処かでお会いしたとは思いましたが」


「.....!.....そ、そうですね。俺も驚きです」


「こんなに模型の庭の様に狭いんですね。この世の中。驚きです」


「ですね。アハハ.....」


そしてまたそれなりに無言になる俺達。

やはりその事かと思ってしまう。

困った。


俺は首を振ってそれを打ち消す。

それから胸に手を添えて気持ちを落ち着かせながらそのまま鞄からゆっくり課題を取り出そして.....俺はその課題を雪さんに手渡す。

雪さんは?を浮かべて見る。


「雪さん。今日はこの課題を解いてみて下さい」


「.....え!?これ一晩で作られたんですか?!」


「そうですね。.....こういう変な頭脳だけは優秀なので.....hahaha.....」


「そんな笑い方しないで下さい。頭良いじゃ無いですか」


雪さんは言いながら笑顔になる。

そうだな.....でもイマイチだ。

雪さんの様に全てで頭が良かったら良かったのにな。


見ると雪さんは何だか少しだけ親密感を覚えた様に俺に笑みを浮かべる。

クスクスと笑っている。

山寺先生は面白い方ですね、と、だ。


その姿に俺も少しだけ緊張が解けた様に改めて笑みを浮かべた。

それから、じゃあこれらの課題を解いていきましょう、とそれなりに穏やかになる。

雪さんは強く頷いて、はい、と。


苦手意識を持っている様な問題にも必死に取り組んでくれた。

すると雪さんがシャーペンを、はた、と止める。

そして見上げてきた。

それからまた笑みを浮かべる。


「.....でもこれって親密感が湧きます。夜空ちゃんの義兄さんだって事が分かって。嬉しいですとっても」


「.....そうですね。.....俺もです。何だか親近感が湧いて.....安心します」


「えっと。改めてのお言葉ですけどもし良かったら本当に敬語をやめませんか。.....私は年下なので。お願い出来ればと思います。山寺先生」


「.....そうですね。そこまで言うなら止めましょうかね。.....雪さん」


「.....はい。お願いします」


与えられた仕事は全てやり遂げる。

それが定森先生の考えだった。

俺は君を優秀にしてみせる。

思いつつ柔和に課題の間違いを指摘する。


すると雪さんは笑顔を見せて照れ臭そうに頷く。

何だか.....良い雰囲気だな。

この雰囲気が続けば良いが、と思える。


そしてこのままの調子で雪さんが勉強も出来る優秀な子に出来れば、と思う。

どんなテストでも100点を取れる様に、だ。

そして次ぐ事になるが思いやりの持つ子に育てれば幸せだ。

思いつつ俺は雪さんにニコッとする。


するとその時だった。

スマホの電源を切り忘れたのかスマホがピコンと鳴る。

雪さんが首を傾げて顔を上げる。

俺は慌てる。


「あ、ご、ごめん。雪さん。スマホ切り忘れてた」


「アハハ。良いですよ。私の集中力はこれでは切れませんからね。大丈夫です」


雪さんはまた問題に戻る。

全く申し訳無い。

家庭教師としてのミスだと思ってしまった。

スマホは後で確認、と思い電源を落とそうとスマホの画面をチラ見する。


そこには.....大学の友人の健介の名前があった。

俺は溜息を吐きながらそのままスマホの電源を落とす。

そして勉強を教えるのを再開した。

健介.....何の用事だ?、と思いつつ、だ。

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