第42話:聖女対決5
ソフィアが眠っている間に多くの事が終わっていた。
チビちゃんは前回と同じくらい巨大な塩結晶が作り領地に運んだ。
それだけの量の塩結晶があれば、貧民の移住で領民が増えた領地であろうと、消費する塩を二十年はまかなえる。
「君達に選んでもらいたいことがある。
ここにいる聖獣は堕聖女が従える魔獣を怯えさせるだけの臭いを残す事ができる。
だがそれは人間にとっても凄く臭いのだ。
その強烈な臭気を我慢して堕聖女と魔獣の侵入を防ぐか、それとも臭いを嫌って何時でも堕聖女と魔獣が侵入できる状態にしておくかだ。
もちろん真聖女ソフィア様は何かあれば直ぐに駆けつけてくださる。
だが魔境で狩りをしている時には直ぐに助けに来れない場合がある。
元聖女のメアリー王妃と堕聖女のモイラはワイバーンを従えている。
真聖女ソフィア様が助けに来られるまでに多くの民が喰い殺されるだろう。
さあ、君達が望む方を選んでくれ」
グレアムは民に自分達の行く道を選ばせた。
実はグレアムは民を全く信じていない。
グレアムは民が何事にも不平不満を持つ事を知っていた。
為政者が民の命を大切に考えてチビちゃんにマーキングさせても、その強烈な悪臭に不平不満を口にすると思っていた。
民が悪臭に苦しまないようにマーキングさせなかったら、為政者が民の命を軽視したと不平不満を口にするとも思っていた。
「悪臭が漂っても構いません。
どうか一人の民も死なずに済むようにしてください」
塩田村の長が民の意見を纏めて願い出てきた。
民達は王家が寄越した二度の堕聖女と魔獣に怯えていたのだ。
ソフィア真聖女が戻ってくるまでの半日が恐ろしくてたまらなかったのだ。
グレアムはそうなる事を予測してソフィアを眠らせてもいた、
ソフィアが起きていたら、村長が民を護るために残ってくれと願い出てきた場合、ソフィアは断ることができなかったかもしれない。
「よし、よくぞ自分達で自分達の行く道を決めた。
お前達はもう王家に支配される民ではないのだ。
ある程度は自分達で村の生末を決める事が許された真聖女様の民なのだ。
これからも自分達の命と生活は自分達で決めるようにするのだ。
ではマーキングをさせる」
チビちゃんのマーキングは耐え難い強烈な臭気を放っている。
だが塩田村の民はその強烈な臭気を我慢して暮らす事を選んだ。
気を失うくらい強烈な臭気を我慢してでも誰も死なさない。
塩田村はそういう選択をしたのだ。
反対する民がいなかった訳ではない。
ソフィアに身勝手な願いをしようとする民もいた。
だが全体として塩田村の民は正し選択をした。
もし正しい選択をしなかった時、この村はどのような運命を迎えたのだろう。
グレアムとチビちゃんはどのような決断をしたのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます