第29話:驚愕

「なに言っているんだ、ソフィア。

 短い間じゃないぞ、三連星活動期は一年以上続くぞ。

 今回は異世界との関係で長引くぞ」


 あまりの事にソフィアは返事もできずに固まってしまった。

 いや、ソフィアだけでなくグレアムも固まってしまった。

 しかしこれだけ衝撃的な内容を聞かせられたら仕方がない。

 チビちゃんは二人の事などお構いなしに魔獣を喰らい続けている。

 チビちゃんにとっては美味しくもなければ食べ応えもないが、それでも空腹になるよりはましだし、何よりソフィアのお願いだったから。


「なあ、チビちゃん、疑うわけではないが、今の話は本当なのか」


 ソフィアよりも早く正気を取り戻したグレアムが恐々チビちゃんに聞いた。


「はあぁ、今の話とは、三連星活動期が一年以上続く事か。

 本当だぞ、そんな事嘘言っても意味がないだろ。

 異世界、多分魔界の誰かが異世界間転移魔術を使ったのだな。

 圧倒的な魔力の影響で魔界とこの世界の門が繋がった。

 それも一年以上維持できるほどの魔力でだ。

 俺様としたら美味しい上級魔族や魔将軍が喰えるかもしれないからうれしいな」


 また新たな情報が飛び出してきた。

 自分では豪胆な性格だと思っていたグレアムが、あまりの事にまた固まった。

 後で大きく落ち込むのだが、仕方がない。

 聞かされた内容が信じられないくらい大きすぎる。

 予備知識の全くない状況で上級魔族だ魔将軍だと聞かされても、心も頭も処理しきれなくなって当然だ。


「ねえ、チビちゃん、その上級魔族とか魔将軍とかは強いの。

 いえ、それ以前に人間を襲うの」


 ようやく正気を取り戻したソフィアがグレアムに成り代わって質問した。

 固まっていたが意識を失っていたわけではない。

 チビちゃんとグレアムの会話はちゃんと聞いていたし理解もしている。

 そのソフィアが一番気になったのは魔族が人間を襲うか襲わないかだった。


「襲うぞ、特に下級魔族は人間が大好物だぞ。

 下級魔族は見境なしに人間を喰らうが、上級魔族は美味しい人間を選んで喰うぞ」


 チビちゃんの話は身も蓋もない内容だった。

 

「それで、その魔族は強いのか。

 魔獣や魔蟲に比べてどれくらい強いんだ。

 人間が太刀打ちできる相手なのか」


「無理だな、人間が戦えるような相手じゃないぞ。

 下級の魔族が相手なら勇者候補だったグレアムなら勝てるだろう。

 上級魔族が相手でも一対一なら勝てるかもしれないな。

 だが二対一では厳しいし、三対一なら確実に負けるな。

 魔将軍には片手で捻られるだろうな。

 まあ、上級魔族も個々の強さが違うから、一対一でも負ける相手もいるな」


 グレアムの心に絶望感が広がっていた。

 だがソフィアは違っていた。

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