第24話:聖女学園の惨劇
「逃げるわ、四人が逃げていくわ」
「「「「「なんですって」」」」」
「王城よ王城に向けて逃げていくわ。
あいつら、私達を見捨てたわ」
「「「「「ちくしょう」」」」」
王立聖女学園では四強の戦いぶりを見ていた。
特に遠目の能力を持った従魔を使役する聖女候補が見張っていた。
全ての聖女候補や元聖女候補が四人を全く信用していなかったからだ。
取り巻きをしている連中こそ、四人の本性を誰よりも知っていた。
どれほど阿諛追従を重ねてご機嫌を取っていても、不要になれば塵屑のように捨てられると理解していたのだ。
「逃げるのよ、私達もできるだけ早く逃げるのよ。
このままじゃ魔獣の群れに飲み込まれるわよ」
走れる魔獣を従魔にしている聖女候補がそう言うなり逃げ出した。
まだ声をかけるだけ良心があるのだろう。
聖女候補の中には何も言わずにもう逃げ出している者もいた。
だが足の遅い魔獣を従魔にしている者は逃げるに逃げられない。
まして従魔を得られなかった聖女候補に逃げる術などない。
いや、機転の利く令嬢は厩で飼われていた馬を奪って逃げようとしていた。
それに気がついた聖女候補や元聖女候補と馬の奪い合いになった。
逃げるため生き残るために学園生同士の殺し合いが始まった。
強力ではないと言っても従魔を得た聖女候補に、従魔を得られなかった者が勝てるわけがなく、多くの元聖女候補が厩周辺で従魔に殺されてしまった。
今では従魔を使役する聖女候補同士が血で血を洗う殺し合いをしている。
「逃げるのよ、地下壕に逃げ込むの」
「私が従魔で防ぐわ、急いで逃げて」
わずかだが良心のある学園生もいたのだろう。
どこからか創立当時に造られた地下壕に逃げるように叫ぶ声が聞こえた。
聖女学園には非常時に備えた地下壕がある。
王都が魔境の近くにある事もあわせて考えれば、建国王やその重臣は民を想う者達だったのだろう。
逃げ出す事を諦めた学園生が一斉に地下壕に向かった。
馬を手に入れようとして殺された者もいれば、馬を手に入れられずに走って逃げる者もいたので、残っている学園生は半数くらいになっていた。
彼らは地下壕に入り厳重に扉を閉め、外に従魔を配して魔獣に備えた。
建築からずっと手入れを続けていれば彼らは生き延びることができただろう。
だが地下壕の補修費は歴代の学園長が着服していたので老朽化が激しかった。
小さな亀裂から魔蟲が入り込んでしまった。
その後の事はあまりに残虐な光景なので記すのを止めよう。
繁殖力の強い茶色の魔蟲に徐々に身体を喰われて死んでいくなど悲惨過ぎる。
穴という穴から魔蟲が入り込み、内側から喰い殺されるなど最悪の死に方だ。
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