第17話:現状
「なんだと、聖女候補達が逃げ出したというのか。
現役や予備役が全滅したというのか。
ここにいるチビちゃんにそんな事が分かるというのか」
立て続けに分かる衝撃の事実にグレアムが思わず確認した。
「どこにいようと魔力を感知する事くらい簡単だ。
以前は空腹のあまり力が入らずできない事が多かった。
だが今なら大抵のことができる。
糞生意気で身の程知らずな馬鹿者共の魔力は絶対に忘れん。
俺様ほどの龍なら、会った事がなくても聖女や従魔の気配くらい分かる」
小さい姿に戻ってもチビちゃんは偉そうだ。
先程の巨大な姿に比べれば全然威厳などないのだが、それは人間視点での話だ。
魔力が見れる魔獣や従魔なら、魔力を漏らしている時のチビちゃんは恐ろしいくらい存在感があり、威圧され恐れを感じ近寄る事もできなくなる。
もっとも今のチビちゃんは、魔力を浪費しないように全く魔力を漏らしていないので、以前のように弱々しく見られてしまう。
「チビちゃん、もう誰も助けられないの。
本当に現役も予備役も全滅してしまったの。
候補の子達まで逃げてしまったというのなら、民はどうなってしまったの。
私やチビちゃんでは助けられないの」
ずっと黙って聞いていたソフィアが意を決してチビちゃんに話しかけた。
衝撃のあまりしばらく固まっていたが、話を聞いているうちに徐々に平静を取り戻し、民の事が心配になったのだ。
この領地に来てから母親の領主としての姿に触れ、聖女として教え込まれてきた理想を思い出していた。
聖女は弱き民を護るために存在する。
力ある従魔を得た聖女は他の聖女の手本になるべし。
その教えに従い、今こそ民を護る時だという想いが湧き起っていた。
だが、その為にはチビちゃんの協力が不可欠だった。
「さあな、民の生死までは俺様には分からない。
まあ、現役も予備役も多少は生き残っているようだ。
聖女候補も学園の地下退避濠に逃げ込んでいるようだから、まだ少しは生き延びられるんじゃないかな」
チビちゃんは何の感情もなく答えた。
グレアムではないが、ソフィアを馬鹿にし貶めていた候補や生徒たちなど、死んでしまえばいいとチビちゃんは考えていた。
だが理想に燃えるソフィアは違っていた。
「だったら助けに行くわよチビちゃん。
チビちゃんは私の従魔だよね。
私が助けに行くと言ったら、手伝ってくれるわよね。
まさか手伝わないなんて言わないよね」
あまりにも真剣なソフィアに、チビちゃんも圧倒されてしまった。
内心では拒否したかったのだが、従魔の縛りが拒否する事を許さない。
渋々手伝うと言いそうになった時、グレアムが口出しをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます