第16話:代謝
「なんだ、城に帰るのか、帰るのなら元に戻るから待ってろ」
チビちゃんはそう言うと強大化した時と逆に、みるみる小さくなった。
どんどん小さくなって、以前のように肩に乗れるくらいの大きさになった。
グレアムも傭兵団員達も馬鹿みたいに口を開けていた。
ただ一人ソフィアだけが、可愛い姿に持ったチビちゃんにホッとしていた。
ソフィアがほんの少しだけ心の中で残念に思っていたのは、チビちゃんに騎乗できなかった事だけだ。
「なんで、なんで元に戻っちまうんだよ。
さっきの姿なら無敵じゃないか。
無敵の状態で聖女学園に戻って、ソフィアを馬鹿にした連中に思い知らせてやりたかったのに、何故元の姿に戻ったんだチビちゃん」
グレアムが思わず本音を口にした。
だがそんなグレアムの言葉をチビちゃんは意に介さない。
「はぁあ、なんでそんな腹の減る事をしなきゃならない。
あんなでかい姿のままでいてみろ、それこそ常に何か食ってないと体がもたない。
ソフィアと一緒に魔境の外にいるのなら、このくらいの体が一番いいんだよ」
グレアムはチビちゃんの話を聞いてようやく納得できた。
確かに巨大な地竜を一飲みにできるくらいとんでもない大きさの龍なら、その体を維持するための食欲も半端な量じゃない。
ソフィアと一緒に人間の世界にいるのなら、小さくならざるを得ない。
腐れ聖女候補達の魔獣もとんでもない量の食事をしていた。
現役の聖女達が魔境近くに駐屯するのも、餌を自分達で狩るためだった。
魔獣を得た聖女候補達に魔境での実習が多いのも、学園が負担しなければいけない餌代を少しでも減らすためだった。
だがそう考えると、三連星活動期に魔獣達が魔境から出てくる理由も色々と推測できる事がある。
「そうか、だが最初に言っていた強く大きくなるために魔境の魔力が必要という話はどうなっているんだ、もう大丈夫なのか」
グレアムは色々と推測しながら確認してみた。
「ああ、そっちはもう大丈夫だ。
思いがけず大物を喰えたから、この姿にもどれば一年や二年は魔力を喰わなくても、何時でも強く大きくなって暴れられるぞ。
学園の腐れ聖女候補共の魔獣など、何時でも一飲みしてやれる。
まあ、もっとも、三連星活動期の魔獣を恐れて学園から逃げ出した連中など、もう聖女候補でも従魔でもないだろうがな。
現役の連中も、従魔の餌を確保するために魔境近くにいた予備役の連中も、ほとんど全員魔獣に喰われちまったようだから、何もしなくてもソフィアの大聖女就任は確定じゃないか」
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