第14話:巨大化
チビちゃんは巨大な属性竜にも全く動じていなかった。
それどころか小山のように巨大な地竜を食欲の対象としか見ていなかった。
だが他の者達は恐怖に打ち震えていた。
いくら何でも属性竜、それもこれほど巨大な属性竜に勝てるとは思えない。
元勇者候補のグレアム以外は全員死を覚悟していた。
「本当に大丈夫なのか、チビちゃん。
少しでも危険があるのなら、ソフィアを連れて逃げなきゃいけない。
いや、居城に戻ってシンシア様も連れて逃げないといけない」
グレアムは真剣だった。
王子の位も勇者の夢も、全て捨ててソフィアを選んだのだ。
ソフィアを護る事が何よりも大切なグレアムだ。
ソフィアを危険に晒す事など絶対に許容できなかった。
シンシアの領主としての責任感や矜持を踏み躙っても、ソフィアを下劣な王侯貴族から護る盾としてシンシアも助ける気でいた。
「だいじょうぶ、大丈夫、あれくらいなら一飲みにできる」
とても信じられない言葉だった。
とても小さな、手や肩に乗れるくらいのトカゲでしかないチビちゃんだ。
小山のような地竜を一飲みになどできるはずがない。
グレアムがチビちゃんの言葉を無視して撤退命令を下そうとした時。
チビちゃんが言葉を続けた。
「あれくらいの大きさなら巨大化すれば大丈夫。
これだけたくさんの魔力を喰った後なら、巨大化できるからな」
グレアムは言いかけていた撤退命令を口にせずに飲み込んだ。
本当に巨大化して一飲みできれば最高だ。
確かに龍伝説に残っている事象では龍は竜を一飲みにしてた。
だがチビちゃんが大言壮語している可能性もある。
だから急いで確かめようとした。
「じゃあすぐにやってみせてくれ。
はっきり言って信じきれない。
チビちゃんの言葉を鵜呑みにしてソフィア嬢を危険に晒す事はできない」
一方ソフィアは何も言わなかった。
ソフィアは無条件でチビちゃんの言葉を信じていた。
なぜそこまで信じられるのか、ソフィア本人にもその理由は分からなった。
だが何故か安心してその場でゆったりと構えることができていた。
「へん、じゃあ証拠を見せてやるよ。
その眼でしっかりと確認しな」
チビちゃんのはそう言うと巨大化した。
だが最初はそれほど大きくはなかった。
大きくはなかったと言っても一気に普通のワイバーンサイズになった。
その大きさで一飲みにできるモンスターを手あたり次第喰い始めた。
ガツガツバリバリと信じられない速さで喰い始めた。
ワイバーンサイズだととても納めきれないくらいのモンスターも喰いだした。
なぜならモンスターを一頭食べるたびに大きさを増していったからだ。
遠目に見えていた小山大の地竜が近づいてくる頃には、地竜を一飲みにできる大きさにまで巨大化していた。
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