第11話:起死回生

 王立聖女学園四強の一角になろうとしていた、リバコーン公爵家令嬢のナタリアは著しく立場を悪くしていた。

 従魔は以前同様変わらずに強力なスフィンクスだ。

 聖獣とまで言われるスフィンクスを従魔に持っているのに、父親であるリバコーン公爵ダグラスが仮病を使った事で、憶病公爵家と罵られてしまった。


 元々性格が悪くて個人的な人望などなかったナタリアだ。

 最初は学園長を務めるリバコーン公爵の権力を下位貴族令嬢は気にしていた。

 どんな従魔を得るか分からない恐れも下位貴族令嬢にはあった。

 従魔を得てからは、スフィンクスの強さと名声だけに下位貴族令嬢は従っていたので、公爵家に臆病者の評判が立った時点で取り巻きがいなくなってしまった。

 リバコーン公爵家が没落するのが誰の目にも明らかだったから。


 神々の寵愛を失うほどの性悪な聖女候補たち。

 そんな令嬢が何故ワイバーンやスフィンクスのような従魔を得られるのか。

 そんな事があるからこの国の王侯貴族は反省することなく堕落していった。

 それが神々の試練なのか、それとも単純な確率でしかないのか。

 誰にも分からない事だった。


「ふん、聖女候補生同士の言い争いになどに何の意味もないわ

 聖女に必要なのは魔獣を斃す力よ。

 貴方達は学園に隠れて言い争っていればいいわ。

 わたくしが全ての魔獣を斃して力の違いを見せてあげるわ」


 魔獣が学園に近づいてくる機会を伺っていたナタリアが、三人のライバルと自分を見限っていった元取り巻き達に言い放った。

 ナタリアは自分の力を見せつけて、臆病者の烙印を押されたリバコーン公爵家の名声を取り戻そうとしていた。

 だから魔獣が学園に近づくまで待っていた。


 本当の聖女や勇者なら、王都の民を護るために城壁の外で魔獣を迎え討つ。

 建国当初の王国には民を護ろうとする精神があったのだろう。

 だからこそ王都は魔境の近くにおかれたのだ。

 それなのに、在校生の聖女候補達は学園内の勢力争いを有利にしようと、学園内に留まって争っていたのだ。


「お待ちなさい、どうせ臆病者の貴女は戦ったふりだけするのでしょう。

 逃げ出さないようにわたくしが見張ってあげるわ」


 同格の公爵家の令嬢であるため、常にナタリアとソフィアをライバル視していたアレグザンドラが、リバコーン公爵の臆病を揶揄しながら追いかけた。


「スフィンクスごときの戦闘力で三連星活動期の魔獣を斃せるわけないでしょう

 そんな事ができるのは、最強従魔の竜種しかいませんのよ。

 いい機会ですわ、実力の違いを見せてあげましょう」


 ストラバーン男爵家のモイラがワイバーンの力を過信して後を追いかけた。

 三強が魔獣と戦おうとしているのに、自分だけが学園に残る事などできない。

 そう思ったアラン伯爵家のキャスリーンは直ぐにグリフォンを従えて追いかけた。

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