第9話:強いの弱いの
豪胆な母上様が、トカゲのような私の従魔が話しかけた事に固まっています。
普段は飄々としているグレアム王子も固まっています。
その気持ちは私にもよくわかります。
私自身あまりの驚きに固まってしまっているのです。
今まで一度も言葉を発しなかった、小さく弱い魔獣だと思っていた子。
その子が雄々しく流麗な言葉で話しかけてきたのですから。
「おい、おい、おい、なに固まっているんだよ。
俺様が助けてやると言っているんだ、固まってないで礼くらい言えよ」
私の従魔が更に追い討ちをかけます。
母上様もグレアムも返事ができないでいます。
ここは主人である私が何とかしなければいけません。
「チビちゃん、助けてくれると言うのはとてもうれしいわ。
でも相手はとても大きくて強い魔獣なのよ。
それも三連星活動期の凶暴な魔獣達なの。
チビちゃんが傷ついたりしないか心配だわ」
「へん、余計な心配するんじゃねえよ。
私が、いや、俺様が助けてやると言っているんだから任せておけや。
それにそのチビという名前はなんだよ。
もっと雄々しくてカッコいい名前で呼べや」
物凄い違和感があります。
小さくて弱弱しくて、とても可愛いチビちゃんが横柄な言葉遣いです。
全く姿形に見合っていません。
それに私と言ったり俺と言ったり、無理して乱暴な言葉を使っている気がします。
「そう言われても主人としたら可愛いチビちゃんの事が心配なんだよ。
チビちゃんという名前は、可愛いチビちゃんに相応しい名前だよ」
「チビ、チビ、チビと呼ぶな、ソフィア。
俺様はまだ生まれたばかりだから小さいだけで、成長したら大きいんだ。
魔力を喰ったら大きくなれるし、戦ったら進化できるんだ。
学園にいた頃は喰える魔力がなかったら成長できず話せなかったんだ。
魔境に近いここなら喰う魔力に不足はない。
魔力さえ喰えれば人間の言葉くらいいくらでも話せるぞ」
チビちゃんは本当にちゃんと話せています。
可愛い姿に似合わない横柄な言葉遣いは嫌ですが、話せてうれしいです。
でも、本当にチビちゃんが強大な魔獣と戦えるのか心配です。
さっきはチビちゃんと一緒に戦う覚悟をしましたが、それは自分達でも戦える弱い魔獣を想定していたのです。
「名前が決まるまではチビちゃんと呼ぶのを許してくれ、従魔殿。
チビちゃんの今の話が本当だとして、どのくらいの魔獣と戦えるんだ。
それが分からないと一緒に戦えない」
「ふん、勇者候補だったグレアムか。
魔獣の事は分からないが、聖女学園で一緒だった従魔なら全部勝てるぞ。
ただ、まあ、なんだ、もっと魔力を喰えればだがな。
魔境とやらに入って思う存分魔力が喰えれば、スフィンクスだろうがワイバーンだろうが負ける事などないぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます