第7話:スパルタ教育

「さあ、楽しい旅の時間はこれで終わりですわよ。

 これからは領主に相応しい知識を覚えることになります。

 まずはこの領地の事からお勉強しましょうね」


 母上様は本当に私の事を愛してくれていたようです。

 旅の間はハミルトン王国の現実を私に理解させようとしていたのです。

 正直前世の知識がある私には衝撃的でした。

 女一人の力では何もできないと諦めていたのですが、母上様は違います。

 女の身で私を救ってくださいました。

 でもその分愛する私には厳しさもあります。


 前世のスパルタ教育というの言葉が思い浮かびます。

 真面目に受験勉強していた人には普通の事かもしれません。

 でも前世のんびりと生きてきた私にはとても大変でした。

 聖女学園の勉強が大変だと思っていた自分が恥ずかしいです。

 母上様の能力を考えれば、母上の実家がとても厳しい教育をすると分かります。


「よくお聞きなさい、ソフィア。

 この領地はとても農地が豊かで、収穫量が多いのです。

 ハミルトン王国に比べれば、同じ広さで四倍の民を養えます。

 その余力で職人を食べさせることができます。

 更に魔境に接しているので、魔獣や魔蟲、魔樹や魔草の恵みがあります。

 魔獣を狩る猟師、魔草を集める薬師が集まります。

 彼らが集め作り出す産物を交易する商人も数多く集まります」


 母上様の話を聞いていると、この領地の豊かさがよく分かります。

 ハミルトン王国全体の事は分かりませんが、リバコーン公爵領の事は分かります。

 比較にならないほど豊かなのがよく分かります。

 豊かな分、戦闘力もあるのでしょう。


「ではここで質問です、ソフィア。

 この領地のために一番必要なモノは何ですか」


 母上様が真剣な顔で私の顔をみておられます。

 母上様から見て最低限必要な知識なのでしょう。

 こんな事も分からにようなら領主一族の資格がないという事でしょう。

 確かにその通りなのかもしれません。


「軍事力だと思います。

 軍事力がなければ、豊かな領地を狙う近隣の領主から領民を護れません。

 隙を狙って襲ってくる盗賊団からも領民を護れません。

 魔境から出てくる魔獣や魔蟲から領民を護る事もできません。

 母上様がグレアム様の願いを認められた事、老若男女問わず民を受け入れられた理由がよく分かりました。

 ただ傭兵団として費用を払うのはどうでしょうか。

 それよりは領民軍と召し抱えられる方がいいかもしれません。

 給与を支払われる分、定期的に軍事訓練を兼ねた狩りをさせるのです。

 給料を払っているのですから、獲物は領主のモノにできるのではありませんか」

 

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