第4話:グレアム第13王子
「やあ、取り込み中に悪いね。
でもソフィアが病気療養のために領地に引っ込むと聞いてしまってね。
居ても立っても居られなくなって押しかけてしまったよ」
突然母上様とリバコーン公爵の争いの現場に闖入者が現れました。
まあ相手は13番目とはいえ王子様です。
使用人は止める事などできません。
それにしても礼儀知らずなのは確かです。
建前はともかく13番目の王子よりはリバコーン公爵の方が力は上です。
国王陛下の支援があれば別ですが。
「まあ、これはこれはグレアム王子。
元婚約者のグレアム王子が今更我が家にどのような御用なのですか」
母上様はグレアム王子にまでケンカ腰です。
私は全然分かっていなかったようです。
母上様は王家にケンカを売るくらい私を愛してくださっていたようです。
「いや、俺には婚約を解消する気など全くないんだよ。
でもリバコーン公爵が内々で婚約者の変更を打診してきてね。
国王陛下が勝手に承諾してしまったんだよ。
だけど俺はソフィアが大好きなんで断ったんだよ。
まあ、そのせいで王子の地位を剥奪されちゃったけどね。
無位無官の平民になっちゃったけど、それでも婚約者のままにしてくれるかな」
えええええ、国王陛下とケンカして王子じゃなくなったって。
それって、まさか、私を愛しているからとかですか。
私は単なる政略結婚相手としか思っていなかったんですけど。
王子の地位を捨てるような愛情は重すぎるんですけど。
できれば直ぐに国王陛下に謝って来て欲しいですね。
「まあ、まあ、まあ、まあ、なんて素敵なんでしょう。
ええ、ええ、ええ、ええ、いいですとも。
王子の地位を捨てた純愛、なんて素敵なんでしょう。
喜んでソフィアの婿に迎えさせていただきますよ」
あああああ、とても反対できない。
重すぎる愛情でも、私を心から想ってくれているのですから。
母上様の母性愛も重すぎるし、グレアム王子の愛情も重すぎます。
「では俺は身の回りの品を纏めてきます。
ああ、そんなに時間はかかりません。
王宮にある物を持ち出して、兄弟達に難癖をつけられるのは嫌ですから。
勇者学園にある私物だけ纏めてきますから」
グレアム王子が体裁を繕わずに正直な事情を話してくれます。
魔獣被害を防ぐため、王家の血統を残すため、王家も沢山の子供が必要です。
王女は神から従魔を授かり聖女に選ばれる道を強要されます。
王子は神から勇者に選ばれる道を強要されます。
そうしなければ王位は一代ごとに勇者か聖女が交代することになってしまいます。
勇者か聖女と、勇者候補や聖女候補の王族を結婚させることで王家は生き残っているので、できるだけ多くの候補者を生み出す必要があるのです。
それが王家や貴族の方針なのですが、子沢山で王侯貴族の台所は厳しいのです。
兄弟姉妹で実家の財産を奪い合うことになっています。
グレアム王子が王子の地位を捨て勇者学園を去るのなら、財産は兄弟姉妹に奪われてしまうでしょうね。
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