入学式

「もしもし、母さん大学が春休みに入るから明日か明後日ぐらいの飛行機取って帰るよ」

「あ、そうなんやね~じゃあ久しぶりに帰ってくるし楽しみに待ってるね」

「まだ切らんで!」

「どうしたと?なんかえらい威勢がいいね」

「俺の部屋掃除とかしてないよね?」

「してないしてない。向こうに行く前と全く変わらんよ」

 よかった。

「うん、わかった。じゃあ帰った時ね」

「なんね、エッチな本をどっかに隠しとると?(笑)」

「違うよ!じゃあね」

「はいはい(笑)」

じゃあ帰る準備でもするか。あの手帳どこに置いたっけ。






                ❀







 僕の名前は宗像修むなかたおさむ 西筑さいちく高校に通う1年生だ。といってもまだ2回しか行ったことがない。

1回目はもちろん試験を受けに2回目は合格発表と制服の採寸の時、

んで今が3回目。もちろん試験を受けて合格した先にあるものは入学式!入学式があって高校のスタートだ。

ちなみに中学からの友達は1人もいない。

地元から遠くの高校を選んだしそもそも僕の中学校は全体的に頭が悪いから受けられる高校も限られる。

まぁかと言ってこの僕が通う高校が頭いいというわけではない。

いわゆる自称進学校ってやつだな。

じゃあなんでわざわざここを選ぶ必要があったのか。それは校則が緩いっていう話をたくさん聞いてたし、なんなら僕の父さん、母さんもここに通っていたらしい。

ここが下駄箱か。

さすが高校は下駄箱が広いなぁ。

しかもこの西筑高校は公立のくせに改装されてきれいになったのだ。

そしてこの新品の上靴この3年間でどれだけ汚くなるのか見ものだな(笑)。

えーと僕のクラスは............1-3 一年三組か。

あ、掲示板に教室の場所が書いてあるっぽいけど、人の群れでいっぱいだ。これは最後に行くか.....


ん、なんか今急に背中を触られたような


「ヤッホー覚えてる?」

え、誰だこのちっこくて可愛らしい女子。なにか見覚えのある顔つきだなぁ。いや中学時代にいたっけ、でもここの高校僕しか受かってない、いや僕以外誰も受けてないはず。

そんなことを考えていると

「えぇ~忘れちゃったの!!小学校から一緒でさ」

「あっ、千夏!?」

そうだ。小学校までは一緒だった。中学校のたしか1年生の半ばで転校して...

「それにしても千夏痩せた?」

「しーーー。それ以上なんかいったら....。」

あんなに殺気だった目を見たのは初めてだ。

「修さぁ~相変わらず気をつかわないというか、デリカシーがないというか...」

「え、いやでも痩せたって褒めっ」

「だから.......」

「すみませんでした」

「私が小・中太ってたみたいになるからやめてほしいんだけど」

いやそれ事実だよね。

「そ、そうだね(笑)」

「んで、修何組なの?」

「3組だね。千夏は?」

「そっかー(笑)私は1組」

「なんでそんなに嬉しそうなの」

「え、そりゃあ修がいたら、高校デビュー失敗するかもしれんやん」

「あーなるほどねー」

「あ、ほら掲示板見に行くよ」

「4階かぁ~遠いなぁ」

「1年生だしそこはしょうがないよね」


「じゃあここで」

「じゃあ」

千夏が1組の教室に入っていた。

やっぱりみんな変わるもんだなぁ。

彼女は、岡垣千夏おかがきちなつただし僕が知っているのは丸顔で男子にも劣らずデカい体格だ。でも今はヒョロヒョロで覚えてるなんて言われても誰だかわからない。しかもかわいいような気もしなくはなくはないと思う。

高校デビューか。

何も考えてなかったな。まぁ考えなくてもいいか。

だって

中学時代はハーフの子と付き合ってたし、その前も付き合ってたし、何も問題はないな。イケメンってやつだ。

でも身長がちっさいしおまけに童顔。いや童顔はイケメンなのか?これが悩みどころなんだよなぁ。

そんなこと考えているともう自分の教室の前だ。

よしっ!

扉を開けた。そこには真冬と言えるような空気が漂っていた。

僕は静かに扉を閉め、自分の席を探して座った。

なんだこの空気感まるで葬式じゃないか.....。

重すぎる。少しの音を立てるのも嫌になるくらい静かだ。中学時代はそのまま小学校から中学校に移るから入学式はこんな感じじゃなかったけど、高校はばらばらだからみんな話さないのか。それを考えれば納得できるな。

「おはようございます!」

『.................。』

突如として先生が教室に入ってきた。女の先生で元気がいいことは瞬時に理解した。

「みなさん、入学おめでとうございます。緊張するとは思いますが挨拶はちゃんと返しましょう!おはようございます!」

『おはようございます』

「んーまぁいいでしょう。入学式まで時間がないのでパパ―っと自己紹介を済ませたいと思います。」

そういってチョークを手に取り名前を書き始めた。

チョークの音を聞いたのは久しぶりだと思ったが1ヵ月前に聞いたこと思い出した。

「私の名前は柳川やながわさゆり といいます。みなさん一年間よろしくお願いします。担当教科は英語コミュニケーションです。Nice to meet you 」

そういうとみんなで拍手をした。

「じゃあ、そろそろなんで廊下に机の席順にならんでください。出席番号の順番です。」

じゃあ僕はここらへんか。

「え!?」思わず声が出た。周りは動いているからこの声はかき消されたようだ。

僕が驚いたのは、後ろの人だ。いかにもヤンキー。どう見てもヤンキー。

この学校にヤンキーいるとか聞いてない。自称進学校と言えども県内で10番以内に入る程。まじかよ~テンションが駄々下がりだ。そもそも高くはないんだけどね。



「着席」

体育館はとても広いなぁ。高校ってやっぱすごいなぁ。

てか隣の人脚広げすぎだろ、誰だよ.....。

あーヤンキー君かぁ.............なんもいえない☆

「次は校長先生の話です」

「起立 気を付け れい 着席 」

「皆さん・・・」

校長の長い話は毎年毎年あるのにちっとも慣れない。いつ終わ....

「諸君‼君たちには誇りを持てるような高校生活を送ってほしい以上です」

初めて諸君なんて言う校長が来た。

しかも校長話が短いなんていい校長先生なんだ。いや、高校はこれが普通なのか。

とりあえず最高だ。隣のヤンキー君以外は。



「じゃあ今日の学校はこれで終わりです。」

「あ、課題は明日提出なのでやっていない人帰って頑張れ」

ふん。やっているから問題ない。

あの程度の問題.........ネットで調べれば一発だ。

いや~便利な世の中だな(笑)

「ねぇねぇ」

「ん」

「この課題、宗像君の写させて」

「えーと、誰ですか」

「隣の席で古賀翔太こがしょうたっていうんやけど、課題全く終わってなくて......。」

「そっか、まぁちゃんと明日持って来いよ。てかなんで僕の名前知ってんの」

「え、名札」

「あーそういうことね。じゃあよろしく古賀君。」

「ちょっと待って、Lkin交換しようよ」

僕は携帯を手に入れたのは高校受験後で友達を追加するのは初めてだ。

お、おれのはじめてはこいつでいいのか。いやいいはず。

「え、まって誰も友達いないの(笑)じゃあ俺が友達第一号でよろしく~じゃあね」

まぁ彼はとても優しそうな顔つきだし、良いやつ感がにじみでてるし大丈夫か。

髪も真っ黒でいかにも優等......いや古賀君課題してなかったな。

バイブがなった。古賀君からだ。返信するか。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

古賀翔太

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『宗像君よろしく~あと課題もありがとう』


『もしかして、これ初Lkin説あるw?』


                『そうだねw初めてだね。これからよろしく!』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こうして僕の高校生活のスタートを切った。























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